米スペースX、壮大な火星移住計画を発表

2020年代に有人飛行、2060年代には100万人移住も

2016.09.30
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火星への移住

 マスク氏によれば、まず2018年に予定している「レッド・ドラゴン」を皮切りに、貨物を積んだ無人宇宙船数機を火星に着陸させる。その後、人が移住する段階へ移るという。(参考記事:「米スペースX、2018年の火星探査計画を発表」

 薄い大気しかない惑星に重い宇宙船を着陸させるのは間違いなく困難が伴うだろう。NASAの火星探査車キュリオシティは重量約900キロと、マスク氏が提案している宇宙船よりずっと軽かったが、それでもゆっくりと地表に降下させるのは簡単ではなかった。今のところ、マスク氏は再利用可能な自社のブースター「ファルコン9」をモデルとして使いながら、超音速逆推進ロケットの開発を続ける計画だ。これにより、キュリオシティよりはるかに重量のある宇宙船を、火星の表面にゆっくりと安全に降ろすことを目指す。(参考記事:「キュリオシティ、火星の「動く砂丘」をパノラマ撮影」

 宇宙船に必要なのはこれだけではない。超音速で火星大気の中を進むのは、地球で最も耐熱性に優れた素材でも大きな試練となる。したがって、高熱の大気突入と逆噴射の着陸に耐えられる宇宙船を設計するのは、決してたやすい仕事ではない。しかも、宇宙船は燃料を補給して地球に戻り、繰り返し使用されるのだ。

 火星への最初の旅は、物資を届け、推進剤貯蔵施設を火星の表面に設置することが主な目的になるだろう。地球に帰還するときは、この貯蔵施設から燃料を取り出して使うことができる。貯蔵施設ができ、物資が到着すれば、楽しい時間の始まりとなる(はずだ)。初期段階の移住者たちは、火星の表面を掘り進めたり、埋まっている氷を探し出したりするのに長けている必要がある。氷からは貴重な水が得られるほか、移住事業を支える低温メタンの推進剤を作るのにも使える。

 最初期の惑星間宇宙船はおそらく火星に留まり、運ぶのは大半が貨物と燃料、そして少数のクルーになるだろう。すなわち「元気な探検家タイプ」で「建設や修理ができる人々」だ。マスク氏はハワード氏にこう言った。「死ぬ覚悟がありますか? もしあるなら、あなたは移住の候補者です」(参考記事:「1年間の模擬「火星」生活から帰還」

 火星行きミッションに参加する最初のメンバーの椅子をめぐって、激しい競争とお祭り騒ぎが繰り広げられるのは確実だ。一方でマスク氏は、「初めて刻まれる足跡」に過剰な注目が集まることを懸念する。

「より広い歴史的文脈の中で本当に大事なのは、多数の人々――数十万とはいかないまでも数万人を送り込み、最終的に数百万トンの貨物を届けられることです」とマスク氏は言う。「私は最初の数回よりも、むしろそちらをずっと気に掛けています」

 つまり、火星に居住地を建設するという彼の構想は持久走であって、短距離走ではないということだ。

「多惑星を住みかに」の夢

 しかし、マスク氏はそうした注目のされ方には慣れている。2001年、彼は「火星に人を送り込む」という目標を胸にスペースX社を設立した。当時のことを彼はこう回想する。「アポロの月面着陸ミッションが成功してから、なぜ人類は火星にまだ行っていないのか、あるいは月より遠くに全く行っていないのかと、考えている自分がいました」

「今ごろ火星に到達していてもいいはずなのにと、いつも感じていました。月に基地があってもいいのに、宇宙ホテルとか、その他いろんな物があってもいいのにと」。ハワード氏のインタビューに、マスク氏は続けた。「かつては、その意志がないからだろうと推測していました。が、そうではなかったのです」

 実際にはむしろ、宇宙探査に投入される予算や資源が乏しく、民間の事業なら負うことのできるリスクも、政府の宇宙飛行計画では引き受けられないのだった。マスク氏はペイパル社時代に積み上げた財産で、会社を設立。目的はロケット製造、そして惑星間輸送の基礎になる移動手段の大幅な向上に注力することだ。

 次いで民間のクライアントや米国政府と契約し、スペースXは現在、国際宇宙ステーション(ISS)に人を輸送できる宇宙船「ドラゴン」の最新版を開発している。

 この数年、スペースXは多くの成功例で注目を集めてきた。例えば完全には軌道に入らなかったが、再使用可能なロケットの一部を切り離し、洋上と地上で初めて回収した。一方、失敗もあった。ロケットが発射台の上や軌道に向かう途中で爆発したのだ。(参考記事:「ロケットの垂直着陸に成功、ファルコン9で2例目」

 こうした失敗は、大きな技術開発では驚くにはあたらない。だが、火星に人を送るのは、地球軌道に送るのとも、月に送るのとも全く異なる挑戦だ。目標が「ほんの数回行ければいい」という程度でないのなら、なおさらハードルは高い。(参考記事:「スペースXのロケット爆発、悲劇から学ぶ」

「我々が避けたいのは、アポロ計画の繰り返しです」とマスク氏は言う。「たった何人かを送るミッションを数回やって、あとは二度と行かないということは望んでいません。それでは、多惑星を人の住みかにするという目標の達成にはなりません」

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