絶滅危機のサイを緊急手術、ツイッターきっかけ

南アからの呼びかけに、多国籍救出チームがマレーシアへ急行

2017.04.28
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命がけの手術から2時間後には、エサを食べ始めたスマトラサイのプントゥン。(PHOTOGRAPH BY SAVING THE SURVIRVORS)
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 世界で何億ものユーザーが、ツイッターなどのソーシャルメディアを通して、分刻みで最新ニュースを受け取っている。しかし、1本のツイートがドミノ倒しのように人を動かし、ついには深刻な絶滅の危機にさらされているスマトラサイの救出に成功したという話は、毎日のように聞けるわけではない。

 数週間前、南アフリカ共和国の環境ジャーナリスト、アダム・ウェルツ氏は、マレーシアにいるメスのスマトラサイに関する記事へのリンクをクリックした。マレーシアには、スマトラサイのメスがわずか2頭しか生存していない。記事は、そのうちの1頭、プントゥンという名のスマトラサイの顔が大きく腫れあがり、命を脅かしていると伝えていた。

 自分は特に動物好きなわけではないというが、ウェルツ氏はプントゥンの命を救うことが動物保護にとって大きな意味を持つとわかっていた。「絶滅寸前の動物にとっては、残された1頭1頭が全て重要なのです」(参考記事:「絶滅寸前のサイ、保護のため捕獲後に死亡」

手術に備えるプントゥン。(PHOTOGRAPH BY SAVING THE SURVIVORS)
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 現在、世界に生存しているスマトラサイは、100頭に満たない。マレーシアには、わずか3頭が残るのみである。記事を読んだウェルツ氏は、すぐに行動を起こした。密猟や事故で負傷した動物を保護している南アフリカの非営利団体「セービング・ザ・サバイバーズ」の責任者ヨハン・マレ氏に連絡を取り、プントゥンが飼育されている「ボルネオサイ同盟」との橋渡しを行ったのである。

残り少ないスマトラサイの1頭が命の危険にさらされている。もっといい治療を受けさせることはできないだろうか?――プントゥンの記事を読んだ直後、アダム・ウェルツ氏が動物保護団体「セービング・ザ・サバイバーズ」にメンションしつつ、投稿したもの。

 その頃、ボルネオサイ同盟ではプントゥンの治療に懸命に取り組んでいたが、顔の腫れは収まらず、原因は歯が炎症を起こしたためだろうとの診断を下していた。

 そこで、セービング・ザ・サバイバーズのゾーイ・グリフィス氏の協力で、獣医歯科を専門とするタイのタム・チンカングサダム氏がマレーシアへ飛び、さらに処置中にプントゥンを死なせないように、シンガポール動物園の上級獣医師アブラハム・マシュー氏が麻酔担当医として加わった。スマトラサイの麻酔はとりわけ困難を極めると言われているため、十分な知識と能力を持つマシュー氏のような専門家が必要だった。

 医師らは、メッセージアプリのWhatsAppで連絡を取り合い、日程を調整した。

「すべて、10日以内に起こったことです。最初に連絡を取ったのが4月7日で、17日の朝には飛行機に乗っていました」と、グリフィス氏。「プントゥンは、マレーシアに残されたスマトラサイの最後の3頭のうちの1頭です。種は深刻な絶滅の危機にさらされており、必要な支援を与えるのが私たちの責任です。彼らは、それを受けるべき立場にありますから」(参考記事:「フォトギャラリー:絶滅の危機に瀕するサイの写真14点」

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