【動画】100頭未満、ロシアのユキヒョウ

高山にすむ絶滅危惧種、DNA調査とカメラで初の全域調査へ

2017.04.14
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【動画】珍しい野生のユキヒョウの生態がカメラトラップで明らかに(解説は英語です)。

 モンゴル、中国、カザフスタンと国境を接するロシア、シベリア南部のアルタイ山脈。標高3000メートルを超える山岳地帯の稜線で、ユキヒョウは、風の中からヤギの仲間、アイベックスのにおいを嗅ぎつけた。灰色の毛に黒い斑点が散らばるユキヒョウの体は、不毛の岩山の背景に溶け込んでいる。幅広で防寒に優れた足で深い雪をかき分け、凍った川が走る谷を注意深く下り、獲物の後を追う。

 青く透き通った川面の氷のすぐ上で、ユキヒョウは足を止めた。ここがお気に入りのスポットだ。暑い季節にはここから泉が湧き出て渓流へ注ぎこみ、獲物を呼び寄せる。しかし今、ユキヒョウのターゲットは、食べ物を探して谷の反対側の山道をゆっくり登っていく。

 ユキヒョウは斜面を駆け降り、凍りついた水場のそばに突き出た赤い岩までやってくると、周囲を嗅ぎまわり、他のユキヒョウのにおいがついていないかを確認してから、爪で4本の白い線をつけた。その後、再びアイベックスの方へ向き直った。

ロシア初の全域調査

「ほら、ここにユキヒョウの小さな爪痕があるでしょう」。世界自然保護基金(WWF)ロシア支部の生物学者でユキヒョウの専門家でもあるアレクサンダー・カルナウコフ氏は、サイリュゲム国立公園内で見つけた岩に指を走らせて言った。「他のユキヒョウへ、ここは自分のすみかだと知らせているんです」

 岩から目を上げると、カルナウコフ氏は熟練した目で周囲を見渡した。残された痕跡を頼りに、ユキヒョウの視点からその動きを説明する。

「ここにカメラトラップ(自動撮影装置)を設置すれば、何がすんでいるのかもっとよくわかります」(参考記事:「カメラに興味、パキスタンのユキヒョウ」

 公園の副園長で生物学者のデニス・マリコフ氏はGPS装置を取り出すと、新たなデータポイントを入力した。ロシア初の、ユキヒョウの全域調査である。

 岩の向こうに、ユキヒョウの糞が落ちていた。カルナウコフ氏は、持参した小袋に糞を入れると、ポケットにしまった。他の標本と一緒にモスクワへ送り、DNA分析にかける。

 このようにして遺伝物質とカメラトラップの両方を使い、個体ごとに異なる模様を持つユキヒョウを1頭1頭特定していく。ユキヒョウは、絶滅が危惧されている捕食動物のなかでも特に北に生息している。この調査によって、世界的なユキヒョウの個体数を明らかにし、保護の必要性を調べる。国際自然保護連合(IUCN)は現在、ユキヒョウの危機ランクを下げるかどうかで激しい論議を交わしている。(参考記事:「絶滅危惧種ユキヒョウを脅かす気候変動と遊牧民」

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【動画】山に入り、密猟者の手からユキヒョウを保護する活動家たち(解説は英語です)。
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