巨大な牙もつ50歳のゾウ、密猟者に殺される

貴重なゾウ社会の長老、密猟の闇深く

2017.03.10
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【動画】巨大な牙を持つ50歳のゾウ、サタオ2が、ケニアのツァボ・イースト国立公園で死んでいるのを発見された(解説は英語です)

 アフリカゾウの中でも数少ない巨大な牙を持つゾウが、ケニアで死んでいるのが見つかった。密猟者の手によって殺されたと見られる。

 ケニア南部で活動する保護団体「ツァボ・トラスト」が今年1月4日、月例の航空調査を行っていたところ、サタオ2という名で知られる約50歳のアフリカゾウが倒れているのを発見した。3月6日になって団体が発表し、明らかになった。死因は特定されていないが、活動家たちは、ツァボ国立公園の東側でエサを探していたところを、密猟者の放った毒矢に当たって死んだのではないかとみている。この地域は「密猟のホットスポット」として知られている。

 アフリカゾウの中でも、地面につくほど長く成長した牙を持つゾウは、「タスカー(英語で牙を持つ動物という意味)」と呼ばれている。だが、その立派な牙のおかげで、密猟者に狙われやすい。今では、アフリカのタスカーは25頭しか生存していないと考えられており、そのうちツァボ・トラストが今年1月に確認できたのはわずか10頭のみだった。

 サタオ2を殺した犯人は牙を持ち去ることができなかったとみえて、死骸には2本の象牙がそのまま残されていた。それぞれの牙の重さは、51キロと50.5キロだった。

 サタオ2の死骸が発見されてから2週間後、密猟者とみられる2人の容疑者が逮捕された。2人は同じ地域で他にも3頭のゾウ密猟に関わったとされており、AK-47自動小銃1丁と毒矢12本、弓3本を所持していた。(参考記事:「密猟象牙の闇ルートを追う」

 ツァボ・トラストは、サタオ2の死は公園にとって悲しい出来事だが、その象牙が違法市場へ流出しなかったことが救いであると報告した。ウェブサイトには「何よりも重要なのは、サタオ2の死に関わったとされる密猟グループが永久に解体されたことです」と書かれている。

 ツァボ保護地区は面積4万1440平方キロで、ケニア国内の全保護地区のほぼ半分を占めている。ツァボ・トラストは毎月、アフリカゾウやクロサイの航空調査を実施し、情報を収集している。クロサイも、同様に絶滅の危機に瀕している哺乳類だ。また2013年以降、同団体による密猟関連の逮捕件数は142件に上っている。(参考記事:「史上最大のゾウ調査、アフリカ上空を46万キロ」

ゾウに迫る密猟の脅威

 タスカーは、ゾウ社会では重要な役割を担っている。サタオ2ほどの年齢と体格のタスカーになると特にその存在は大きいと、保護団体「アンボセリ・トラスト・フォー・エレファンツ」の科学者ビッキー・フィッシュロック氏は、2015年のナショナル ジオグラフィックの取材に対し語っていた。「彼らは50~60年の間ゾウ社会のネットワークの一部として、社会的・生態学的な経験を積み、若いゾウの手本となってきたのです」

 サタオ2の死のわずか3年前には、同じく重要な存在だったゾウ、サタオが、やはり50歳前後で殺された。こちらも、公園にとって大きな損失だった。サタオ2という名はこのゾウにちなんで付けられたものだが、血縁関係はないと思われる。長老的存在だったサタオも、巨大な牙を狙った密猟者に殺されたが、その死はサタオ2よりもさらに凄惨なものだった。顔が切断されて、象牙が持ち去られていたのだ。(参考記事:「巨大な牙で愛されたゾウ、サタオ殺害」

 ゾウにとって最大の脅威は、象牙取引を目的とした密猟だ。国際自然保護連合(IUCN)は、アフリカゾウを危急種に指定している。米コロラド州立大学が2014年に行った調査によると、アフリカゾウは繁殖するよりも早い勢いで密猟されており、2011年のピーク時には4万頭以上が殺された。(参考記事:「アフリカゾウ、3年で10万頭殺される」

 現在、生息数は41万5000頭と推定されているが、これは2007年時と比較して10万頭以上の減少である。

広がる象牙取引禁止

 世界では、象牙取引を減らすために様々な措置が講じられている。絶滅の危機に瀕している動植物取引の制限を目的としたワシントン条約も、世界的な象牙取引には反対の立場をとっている。(参考記事:「ゾウ大国ボツワナ、象牙取引の全面禁止を支持」

 米国には世界でも最大規模の象牙市場があり、以前は商業輸入のみが禁じられていたが、2016年7月に象牙関連のあらゆる商取引がほぼ全面的に禁止された。この措置は、オバマ前大統領による野生生物の取引を廃止する2013年大統領令の一環として定められていたもの。オバマ氏は当時、こうした取引の現状を「国際的な危機」と批判していた。

 同じく巨大な象牙市場を持つ中国も、2017年末までに取引を禁止する計画を昨年末に発表した。

 現在世界最大の市場を持つ香港は、国内での取引を2021年までに段階的に廃止していくと公約している。(参考記事:「日本で違法な象牙取引が横行、覆面調査でも確認」

文=Sarah Gibbens/訳=ルーバー荒井ハンナ

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