【動画】ピニャータ作りの町
人の数よりピニャータの数の方が多いメキシコの小さな町。ピニャータ作りを始めたのはある一つの家族だった(解説は英語です)。

 メキシコの小さな町サン・ホセ・ブエナビスタは、老若男女がそろってピニャータ(中にお菓子やおもちゃを入れた紙製の人形で、祭りなどで子どもたちがくす玉のように割る)を作っている。まるで映画の中の話のようだが、現実の世界だ。

 映像作家のポール・ストーリー氏と、制作集団「トライポッド・シティ」のパートナーであるクリス・リー氏、チャーリー・クワイ氏は、メキシコでの1か月にわたる撮影を終えたところだった。そんな折、住民の大部分がピニャータ作りに携わっている町があることを耳にした。

 ストーリー氏は、ナショナル ジオグラフィックの電話取材に対し「メキシコを題材にしたプロジェクトをやりたかったのは、この国についてある種のステレオタイプのようなものが存在すると思っていたからです。作品を通じてそのようなステレオタイプをくつがえし、人々の姿をありのままにとらえて、新たな視点からとらえたメキシコの姿を描き出すことができると思ったのです」と答える。(参考記事:「心温まるメキシコのガイコツ菓子」

「ピニャータ王」を探して

 首都メキシコシティーから南西に2時間ほど行った町、サン・ホセ・ブエナビスタは、うってつけの場所に思えた。3人は早朝から配車サービス「ウーバー」を利用し、名前と住所を頼りに「ピニャータ王」と呼ばれる人物を探しに出かけた。

 人口1000人ほどの町で、ほどなくその男、フランシスコ・レイエス氏は見つかった。「彼はとても気さくないい人で、歓迎してくれました。私たちが来ることを知っていたのかは定かではありませんが、とても協力的に迎え入れてくれました」とストーリー氏は話す。

 レイエス氏によると、ピニャータ作りは町全体で盛んだが、始めたのは彼の両親らしい。二人が人形の作り方をほかの家族に教え、それが親から子へと受け継がれているのだという。レイエス氏の兄弟姉妹はそれぞれ近くで工房を構えている。ストーリー氏いわく「とりわけ熱心そうな」レイエス氏の長男も父親の仕事を受け継いでいる。

 ピニャータはもともと羽飾りをつけた陶器で、先住民伝統の宗教的な意味合いもあった。だが現在では、米国の映画やアニメのキャラクターをかたどった張り子が一般的だ。

 そのため著作権の問題が起き、米国へ国境を越える際にピニャータが押収されたりもするが、レイエス氏は動じていない。作り手たちは互いに助け合いながら地域のいたる所、特に都市部の大きな店に手製の人形を販売している。(参考記事:「メキシコ国境の壁は問題を解決するのか」

誕生日や家族の集まりに欠かせない

 ピニャータは、再利用可能なファイバーグラスの型に紙を張り付けて成形した後、1日かけて乾燥させる。切り込みを入れて型から外し、ペイントするのにさらに1日か2日を要する。

 できあがったピニャータは、20ドルから30ドル(2000円~3000円余り)で販売される。ウーバーの配車2時間分と同じ価格だが、メキシコではかなり高額だ。それにもかかわらず、ピニャータは年間を通して需要がある。誕生日や、ポサダと呼ばれるクリスマス前の行事に使われることが多いが、お祝いの席や家族の集まりなどにも欠かせないものとなっている。

 ストーリー氏らは感謝の意を込めて、レイエス氏の家族や友人の子供たちのためにアニメ『ドーラといっしょに大冒険』のピニャータを購入し、1日の撮影を終えた。子供たちは嬉々としてそのピニャータを壊す。

「私たちはリサーチすることに多くの時間をかけています。しかし、ほんの数日でも人々と直接会って話をすることで、インターネット上ではわからない多くの発見があるでしょう。それでも私たちにわかるのは、ほんの少しだけなのです」とストーリー氏は語る。(参考記事:「シンコ・デ・マヨ:戦いの歴史の意味」

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