【動画】ルアーで魚を釣り、子どもを寄生させる貝

見事な疑似餌で魚を誘惑、一瞬にして幼生を寄生させるイシガイの驚異

2017.12.06
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糸の先に「ミミズ」をつける貝も

 北米の川底に暮らす擬態の名人はVillosa irisだけではない。

 ミシシッピ川上流に生息し、絶滅の危機に瀕しているヒギンスランプヌマガイ(Lampsilis higginsii)の外套膜は、同地でよく見られる固有種の小魚にそっくりだ。縦縞が走り、目のように見える点まで付いている。(参考記事:「ペニスでメスの首刺すネジレバネ、壮絶な繁殖行動」

 他にも、たとえばミズーリ州南部とアーカンソー州北西部に広がるオザーク高原でしか見られないショクヨウヌマガイ(Cyprogenia aberti)が出す短い粘液の糸は、ミミズそっくりに見える。魚がその「ミミズ」を飲み込むと、幼生が放出される。

 アラバマ州とミシシッピ州に生息するランプヌマガイの一種(Lampsilis perovalis)は、それよりも長い糸を出す。川の流れに漂い、動いている糸は本当に釣り糸としか見えない。どれも先端には小魚か昆虫の幼虫そっくりに見える疑似餌が付いており、その中では無数の幼生が放たれる瞬間をじっと待っている。捕食者が餌に食いついた瞬間に幼生が噴き出る様子は、まるでタンポポの種が飛ぶようだ。

イシガイ科ランプヌマガイの一種(Lampsilis siliquoidea)が魚そっくりの疑似餌を披露。「the Genoa National Fish Hatchery」にて。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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 一方、欧州では同じくイシガイの仲間であるUnio Crassusが、一風変わった方法をとる。舌に似た足を使って川岸によじ登ると、幼生が入った水を川の表面に向かって吹きかける。

「水が降りかかる様子は、水族館で魚の餌をまき散らしているのにそっくりです」と、米オハイオ州立大学の生物多様性博物館、軟体動物部門の学芸員であるトーマス・ワッターズ氏は語る。「魚たちが何ごとかとやってきて、幼生に寄生されるというわけです」

魚に食いつくものまで

 これらのイシガイは、魚を利用するためにずる賢くて巧妙な方法を進化させたが、その中でバーンハート氏が最も賞賛するのは、米国のほとんどに生息するEpioblasma属の仲間だ。

 この種は殻を開けて自ら中身を差し出し、魚が食いつこうとすると頭を挟んで殻を閉じてしまう。他のイシガイと同じく、捕らえた魚に無理矢理幼生を寄生させてから、魚を放す。

【動画】Epioblasma capsaeformisに捕らえられたヤウオ

 Epioblasma属の中には、獲物をうまく挟み込めるように、殻の端が歯のようになっているものもいる。

 バーンハート氏は言う。「文字通り、イシガイに食いつかれるのです」

文=Jason Bittel/訳=潮裕子

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