犬にも感情がある、MRIで確認

神経科学者が犬の脳を分析、人間とよく似た部位があるらしいことがわかってきた

2017.09.13
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イヌの研究に続いて、バーンズ氏はアシカがリズムをとることができることを確認した。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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アシカの脳も研究されているそうですね

 イルカやアシカの場合、MRIの中に入れるよう訓練することはできません。ですからわれわれは、死んだ個体の脳をサンプルとして入手して脳内経路を調べ、人間や他の動物と比較しました。

 アシカが興味深いのは、彼らがリズミカルなパターンに従う能力――わかりやすく言えば、ダンスができる能力を持っていることです。ある仮説では、柔軟な発声器官を持つ動物だけがダンスをする能力を持つと言われています。

 アシカはさほど柔軟な発声ができるわけではありません。しかしカリフォルニアにいたあるアシカは、複雑なリズムに乗って踊ることができました。

 こうした能力は、言語を通じて身に付くものだと考えられてきました。なぜなら言語自体がリズミカルなものだからです。しかし言語を持たないアシカのような動物に踊る能力があるということは、これが動物にとってより基本的な性質で、おそらくは人間が登場するよりもはるか昔に発達したものであることを示しています。(参考記事:「踊る動物に音楽誕生の謎を探る」

絶滅したフクロオオカミの脳もスキャンしたそうですが、現代のイヌと比べてどんな違いがありましたか

 タスマニアタイガーとも呼ばれるフクロオオカミは、1936年に絶滅したと考えられています。姿はイヌやオオカミによく似ていますが、有袋類は1億年以上前に別の哺乳類から分岐したグループであり、実際にはイヌの仲間ではありません。(参考記事:「フクロオオカミ、絶滅種再生の可能性」

 わたしの目的は、フクロオオカミの脳がイヌの脳と似ているかどうかを確かめることでした。残されている標本が少ないため苦労しましたが、最終的にふたつの脳をスキャンすることができました。その結果、フクロオオカミの脳はイヌのものと大きく異なり、タスマニアデビルやカンガルーといった他の有袋類に近いことがわかりました。(参考記事:「絶滅危機のタスマニアデビル、「死の病」克服の兆し」

 標本の分析によって前頭葉の相対的な大きさがわかり、彼らがどの程度の問題解決能力を持っていたか、また社会的だったかどうかをある程度推測することができました。フクロオオカミはイヌほど社会的ではなく、むしろかなり非社会的だったようですが、前頭葉内部の連結を見ると、問題解決能力はかなり発達していたことがわかります。ペットにはまったく向いてないでしょうね(笑)

大型動物の脳の3次元復元を行う団体を設立するそうですね

「ブレイン・アーク」というこの団体の目的は、大型動物が地球上から姿を消す前に、脳のデジタルアーカイブを作っておくことです。(参考記事:「フォトアーク:絶滅から動物を守る撮影プロジェクト」

 われわれが今、再び大量絶滅の時期に入ろうとしている可能性が高いことは、多くの科学者が認めています。これはひとつには気候変動の影響ですが、人間が開発などによって動物の生息域を減らしてきた結果でもあります。(参考記事:「6度目の大絶滅。人類は生き延びられるか?」「【解説】温暖化で生物は?人はどうなる?最新報告」

 大型動物の脳を研究することにより、なぜ特定の種が他の種よりも絶滅しやすい傾向にあるのか、逆になぜ他の種は生き延びるのかを解明したいと考えています。

イヌの脳研究のこれからの課題を教えてください。今回の研究で、動物への接し方は変わりましたか?

 イヌのプロジェクトでは、彼らが学習する仕組みをより詳しく研究する予定です。イヌが実際に学習しているときに、MRIで神経経路がどう変化するかを調べていきます。この研究はイヌと一緒に暮らし、彼らを訓練し、問題行動への対処の仕方を探るうえで大いに役立つでしょう。(参考記事:「シーザー・ミランに、皆からの質問を聞いてきた!」

 わたしの生活への影響はまず、以前よりもたくさんのイヌが家の中にいることです(笑)。また仕事がある日の大半は、イヌと一緒に過ごしています。

 今回の研究のおかげで、動物の内に秘められた性質をより深く理解し、彼らはたとえそれを表す言葉を持たなくとも、人間とよく似た感情を持っていることを実感しました。彼らは言わば「人類ではない人間」なのです。(参考記事:「犬は人が思っているよりもずっと”人間らしい”」

文=Simon Worrall/訳=北村京子

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