【解説】火星に複雑な有機物を発見、生命の材料か

有機物の証拠となる2本の論文、火星生命探査が前進

2018.06.11
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火星は冷たくなく、死んでもいないのです

 専門家は、今回の2つの研究成果を宇宙生物学の画期的な発見として歓迎する。

 米カリフォルニア工科大学の惑星科学者で、火星を専門とするベサニー・エールマン氏は、「火星が今でも生きていることを示す、信じられないくらい嬉しい発見です」と言う。「火星は冷たくなく、死んでもいないのです。おそらく、生命が生きられるギリギリのところにあるのです」。なお、同氏は今回の研究には参加していない。(参考記事:「火星の地下1~2mに氷の層発見、採水に便利」

 しかしウェブスター氏らは、今回の研究は、単独では火星に生命が存在することの証拠にはならないと強調する。「観測結果は生命活動の可能性を否定しませんが、生命が存在することの決定的な証拠でもありません」

 より確実な答えを得るためには、生命の証拠を分子レベルで検出できる高感度の装置を火星に送り込む必要がある。地球上では、生命体はより多くのメタンを生成し、無生物からはエタンが生成されることが知られている。火星でも同様の傾向が見られるなら、生命が存在している可能性は強まるだろう。(参考記事:「火星に生命は存在するのか」

 今後のミッションも情報収集に役立つはずだ。欧州宇宙機関(ESA)の火星探査計画「エクソマーズ(ExoMars)」では、2016年3月に周回機「トレース・ガス・オービター」を打ち上げたが、2020年には探査車も打ち上げる予定である。探査車は、ドリルで火星の土を1.8メートル以上掘り、搭載する分析機器でサンプルを調べることができる。また、NASAが進めている火星探査計画「マーズ2020(Mars 2020)」では、将来のミッションで地球に持ち帰れるように、火星で土壌サンプルを集めて梱包することを予定している。(参考記事:「2020年、NASAの火星生命探査はこうなる」

 2016年10月に火星周回軌道に投入されたトレース・ガス・オービターが現在収集しているデータは、将来、科学者たちが火星のメタンの分布地図を作成し、その発生源を特定するのに役立つかもしれない。

 トレース・ガス・オービターのプロジェクト科学者であるホーカン・スヴェデム氏は、「私たちは数週間前から最高感度のモードで測定を始めたところです。現在、メタンに関するデータの抽出に取り組んでいます」と言う。「数週間後には結果を発表できると思います」(参考記事:「火星地図200年の歴史、こんなに進化した15点」

ギャラリー:祝20周年!探査機が撮った火星の絶景写真36点(写真クリックでギャラリーページへ)
火星探査車キュリオシティの自撮り写真。(PHOTOGRAPH BY NASA, AP)

文=Michael Greshko/訳=三枝小夜子

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