公海での操業中にロープを点検する漁師。公海は、各国の沿岸から200海里の排他的経済水域より外側にある海だ。(PHOTOGRAPH BY CHRIS JOHNS, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 どの国にも属さない海、公海。そこでの漁業のなんと54%が、政府による費用負担がなければ利益が出ないことが明らかになり、6月6日付の科学誌「Science Advances」に論文が発表された。強制労働や漁獲量の過少申告によって操業を実現しているとみられる事例もあった。

 論文の著者でナショナル ジオグラフィック協会付きエクスプローラーであるエンリック・サラ氏は、「今回の研究により、公海漁業の多くが無意味であることが立証されました」と言う。「生態系に悪影響を及ぼし、経済的にも利益のない公海漁業はやめるべきではないでしょうか?」(参考記事:「“原始の海”を守る、エンリック・サラ」

 2016年に公海で操業していた漁船は3600隻あまりだった。生態学者、データ科学者、経済学者からなる研究チームは、公海漁業の影響をより詳しく解明するため、公海漁業のコストに関する2014年のデータを分析した。その結果、この年の公海漁業のコストは総額62億~80億ドル(約6800億~8800億円)で、補助金の総額は約42億ドル(約4600億円)にのぼることがわかった。

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 特に中国と台湾は、漁獲努力量が大きい方だったにもかからず、利益は最も少なかった。ロシアの水産業も、補助金を支給されているのに利益が出ていないことが示された。

 補助金は、利益がない漁船に支給されるだけではない。研究から、わずかに利益を上げている日本、韓国、スペイン、米国の企業も、政府の補助金によってさらに利益を支えられていることが明らかになった。

 論文の共著者の1人であるカナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学の経済学者、ラシッド・スマイラ氏は、「補助金には3種類あります」と言う。研究チームは2000年から漁業補助金のデータをまとめているが、すべての補助金が有害であるわけではなく、持続可能な管理、研究、規制などの活動に用いられる、有益な補助金もあった。

 企業の船の積載量を大きくして、資源枯渇のおそれのある漁場で大量に漁獲することを助長するような補助金もあった。政府が企業に対し、税制優遇や燃料費の補助、装備の改良資金や漁港などのインフラ整備などの名目で支援を行う例もあった。(参考記事:「南シナ海 枯渇する水産資源」

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