史上最大規模、子ども140人の集団生贄を発見

遺体には心臓を取り出された跡も、南米ペルーのチムー王国遺跡

2018.05.01
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超自然的な力との取引

 ラス・リャマスで行われたような、子どもとリャマの子だけを大量に生贄として捧げる儀式は、考古学の世界でこれまで知られていなかったため、すぐに疑問の声が上がった。「チムー王国の人々はなぜ、そんな儀式をしようと考えたのだろう?」

 プリエト氏がラス・リャマスでの研究について科学者仲間や地元の人々に報告すると、しばしば同じことを言われるという。

「この地で起きたこととその規模を知ると、人々は必ず『なんのためにそんなことを?』と言うのです」

 研究チームは、発掘の際に見つかった泥の層が手がかりになるかもしれないと考えている。泥の層は、激しい雨が降り、洪水が起きたことによりできたものだろう。ペルーの海岸地域は基本的に乾燥しているが、おそらく、生贄の儀式が行われた当時、この地域はエルニーニョによる異常気象に見舞われていたのだ。(参考記事:「珍現象:エルニーニョで砂漠が一面の花畑に」

エルニーニョ・南方振動(ENSO)は、赤道太平洋の海水温が上昇したり低下したりする気候パターンである。海水温が上昇すると、表面温度が高い範囲(赤で示す)が赤道をまたいで広がり、激しい雨をもたらして、近海漁業は大打撃を受ける。研究者たちは、ラス・リャマスの集団生贄は、西暦1400年~1450年にかけて発生した大規模なENSOの影響を和らげてほしいと神々に祈願するために行われたのではないかと考えている。(NOAA)
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 海水温の上昇により、近海では魚が獲れなくなっていただろう。王国中に張りめぐらされていた農業用の運河も、海岸地域の洪水により破壊されてしまっただろう。

 チムー王国は、ラス・リャマスの集団生贄の儀式からわずか数十年後にインカ帝国に屈服した。

 米ジョージ・メイソン大学の人類学教授ハーゲン・クラウス氏は、ウアンチャコの北のランバイエケ谷にある10世紀~12世紀のセロ・セリージョス遺跡での発掘調査で、子どもを生贄とする儀式が行われていた証拠を発見している。この地域で最古のものだ。クラウス氏はラス・リャマスの発掘プロジェクトには関与していないが、ペルー北部の海岸地域の社会が、成人を生贄として捧げてもエルニーニョにより繰り返し起こる混乱が終息しないのを見て、子どもを生贄にすることを考えるようになったのかもしれないと言う。(参考記事:「シカン遺跡で集団生贄の証拠を発見」

「人は、自分が最も価値があると思うものを生贄として捧げます。成人の生贄を捧げても雨がやまなかったので、新しいタイプの生贄を捧げなければならないと考えたのではないでしょうか」

 クラウス氏は、「タイムマシンでも使わないかぎり、答えを知ることは不可能です」と言い、ラス・リャマスでの発見は、アンデスにおける儀式的な暴力と人間を生贄とする儀式の多様性に関する知識を増やしてくれる点で重要だと付け加える。

「儀式的な殺人は契約であり、超自然的な神から何かを得るために行われるという考え方があります。けれども実際には、超自然的な力をもつ存在と交渉し、それを操ろうとする、極めて複雑な試みなのです」

ギャラリー:子ども140人の集団生贄を発見 写真15点(画像クリックでギャラリーページへ)
ナショナル ジオグラフィック協会のエクスプローラーである考古学者のガブリエル・プリエト氏(左から2人目)は、今から500年以上前に生贄の儀式が行われたペルーの北部沿岸地域の発掘調査を進めている。彼は、地元の学生たちを指導して、ウアンチャコの歴史を解き明かす次世代の科学者に育て上げようとしている。

さまざまな民族や地域から連れてこられた

 ラス・リャマスの生贄を調べている科学者チームは、現在、生贄の生活史(彼らがどんな人で、どこから来たかなど)を解明するという困難な仕事に取り組んでいる。

 子どもの骨格から性別を決定するのは難しいが、予備的なDNA分析から、生贄には少年も少女もいたことが示唆されている。また、同位体分析の結果は、すべての生贄がこの地域から出されたわけではなく、おそらくチムー王国中のさまざまな民族や地域から連れてこられたことを示している。

 遺体のなかには、当時、高地で行われていた人工頭蓋変形の痕跡があるものもあり、チムー王国が支配していた遠隔地の子どもも生贄として沿岸部に連れてこられたことを示している。(参考記事:「古代インカの穿頭術、成功率は70%を超えていた」

 ラス・リャマスでの発見後、研究チームはウアンチャコでも子どもとリャマが生贄として捧げられた同時代の集団生贄の跡を発見し、ナショナル ジオグラフィック協会から支援を受けて調査を進めている。

「ラス・リャマスは世界に例を見ない遺跡です。この地域に同様の遺跡があといくつあり、今後の研究を待っているのだろうかと思うとワクワクします」とプリエト氏は言う。

「この遺跡は氷山の一角かもしれないのです」

【この記事の写真をもっと見る】ギャラリー:史上最大の子どもの集団生贄? ペルーの遺跡で発見、写真あと10点

文=Kristin Romey/写真=Gabriel Prieto/訳=三枝小夜子

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