森の部族に身を捧げた男、二度と帰ってこなかった

ボルネオ島の先住民にほれこみ、助けようとした男の数奇な人生

2018.03.13
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
パーム油プランテーションで収穫作業に勤しむインドネシア人作業員。(PHOTOGRAPH BY MATTIAS KLUM, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

――サラワク州での森林破壊の現状と、プナン族への影響について教えてください。

 サラワク州ではずいぶん前から森林の伐採が行われていましたが、かつてはそのペースが遅く、範囲もまばらでした。マレーシアが独立して体制が変わると、地元の政治家が森林の伐採権を売り出し、その大半は彼らの友人や親類の手に渡りました。その結果、伐採のペースは特に70年代、80年代には大幅に加速しました。(参考記事:「マレーシアのダム建設、抗議活動が激化」

 ちょうどブルーノがサラワクにやってきた1984年頃、東プナン族とダヤク族が昔から暮らす土地でも伐採が始まろうとしていました。ダヤク族は先祖伝来の土地を持っており、少額とはいえ補償金の交渉をすることができました。しかしプナン族には何もありません。プナン族の意識の中では、すべての土地は彼らのものであり、彼らの先祖は森全体に埋葬されていました。一方、マレーシア政府にとって、プナン族は最底辺の存在でした。多数派であるイスラム教徒や中国系の人々はダヤク族を見下し、ダヤク族はプナン族を見下していました。伐採は彼らの世界をまるごと破壊したのです。(参考記事:「アマゾン先住民、ダム建設で消える暮らし 写真19点」

――パーミエリ氏が、時に怪しげな状況下で購入した芸術作品の多くは、今では一流の美術館に収められています。パーミエリ氏の冒険と取引について教えてください。

「怪しげ」という言葉は必ずしも正しくありません。マイケルが作品を購入した相手であるダヤク族自身が、島の外での作品の価値を理解していなかったという意味では、怪しげな面があるのは確かです。ただしマイケルは、ダヤク族が適正と考える値段で取引をしています。ですからこの件に関しては、倫理的にグレーな部分が大いにあるのです。

 マイケルは10年間にわたってボルネオに通い、一度に数カ月間を現地で過ごし、驚くほど強力なネットワークを作り上げました。何週間もかけて川を上り、外の世界とほとんど接触を持たない場所まで足を踏み入れました。さらにはマハカム川で昔から使われている貨物船まで購入して、その上で暮らしていたのです。(参考記事:「「非接触部族」マシコ・ピロ族、頻繁に出没の謎」

 私がボルネオ島を訪ねたある日、彼は「見せたいものがある」と言って寝室のマットレスを持ち上げ、60センチ×90センチくらいの厚紙の分厚い束を取り出しました。その紙には、彼の手で非常に細かく美しい地図が描かれていました。世界で3番目に大きな島の広大な土地の、あらゆる村や、川の支流が書き込まれていました。彼はそのすべてに足を運び、地図に記したのです。

【動画】ボルネオ島のオランウータンは1999年から2015年までの16年間で15万頭近く減少した。原因は森林伐採やパーム油プランテーション、人との衝突にある。(解説は英語です)

次ページ:男は二度と帰ってくることはなかった

おすすめ関連書籍

奇跡のサバイバル60

大震災、飛行機脱落、登山事故、誘拐・・・・・・絶体絶命の状況から九死に一生を得た人々。生死を分けた判断、状況は何だったのか?

定価:本体2,400円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加