サイのウンチはソーシャルメディアだった

直径20メートルの共同トイレがコミュニケーションの場に

2017.01.14
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南アフリカで、メスの糞のにおいを嗅ぐオスのシロサイ(PHOTOGRAPH BY COURTNEY MARNEWECK)
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 人々は昔から、たき火の周りや井戸端に集まって情報を交換し合ってきた。実は、シロサイも同じことをしている。大きな糞の山のまわりに集まって情報を交換しているというのだ。(参考記事:「動物大図鑑 シロサイ」

 シロサイは、共同トイレに落ちた糞から、他のサイの年齢、性別、健康状態、生殖状態などについての手がかりを得ていることが、新たな研究によって明らかになった。

「実は、糞は動物同士がコミュニケーションを取るのに効果的な手段なのです。たくさんの情報が含まれていますから」と話すのは、今回の研究のリーダー、コートニー・マルネウェック氏。彼女は南アフリカのクワズール・ナタール大学の博士課程で生態学を研究している。

 尿や糞の中に含まれる化学物質を検出して、同じ種の仲間たちに何が起こっているのかを知る動物は多い。犬が電柱のにおいを嗅ごうとするのもそのためだ。ただし犬があちこちで嗅ぎまわるのに対し、シロサイは群れが同じ場所で排泄する。

 他の動物、特にガゼル、サル、ウサギなど大きな群れで生活する哺乳類は、よく共同トイレで仲間の情報を仕入れている。しかし、サイでこのような行動が確認されたのは、この研究が初めてだ。(参考記事:「なぜ動物はうんちを食べるのか」

偽物の糞による実験

 マルネウェック氏らは、南アフリカの複数の群れから200頭以上のシロサイを追跡し、共同トイレで糞のサンプルを集めた。これによって、サンプルがどの個体の糞なのかを正確に追跡できるようになった。

 共同トイレは簡単に発見できる。巨大なサイがよく通る道は草が踏みならされている上に、トイレに行くときは遠くまで移動することはないからだ。さらに、共同トイレは直径20メートルほどあり、マルネウェック氏によれば、「大きいので見逃しようがない」。意外かもしれないが、サイの糞は主に乾燥した草なので、この共同トイレはさほど臭くないという。

 サイの糞の化学組成を分析したところ、年齢や性別によってそれぞれ異なる成分をもつことがわかった。

 次に、研究者たちは草と泥で偽物の糞を作り、子ども、おとなのオス、発情期のメスの3グループの糞から見つかったのと同じ物質を混ぜた。そして、それを無作為に選んだ共同トイレに置き、おとなのオスがどう反応するかを観察した。

 1月11日付の英国の学術誌『英国王立協会紀要B』に掲載された研究結果によると、オスは発情期のメスの糞に含まれる化学物質が入った偽の糞にかなり敏感に反応した。オスは他のサイよりも念入りにその糞のにおいを嗅ぎ、たびたび共同トイレを訪れ、偽物の糞の上に排泄した。

 こうした反応から、オスのサイは糞に含まれる化学物質から情報を集めていることがわかるとマルネウェック氏は話している。

【動画】ウンチを科学する(解説は英語です)

サイの保護にも貢献

 ドイツのフランクフルト大学の博士課程に在籍するマドレン・ツィーゲ氏は、共同トイレは動物の群れに多くのメリットをもたらしているという。(参考記事:「アリが「公衆トイレ」を持つと判明」

「群れの全員が今、何が起きているのかを認識することは重要です。全員の状態がわかれば、誰かを探しに行ったり、けんかをしたりする必要はなくなります」

 また、同じ種の別の群れとコミュニケーションを図るためにも大切だ。ツィーゲ氏によれば、多くの共同トイレは群れの縄張りの端にあり、境界線を守る役割も果たしているという。

 この研究は、色々なことに役立ちそうだ。研究リーダーのマルネウェック氏は、シロサイのコミュニケーション方法を知ることが、彼らを保護する助けになると話している。

 シロサイは、国際自然保護連合によって近危急種(near threatened)に指定されており、今もなお密猟によって脅かされ続けている。(参考記事:「サイの密猟が過去最高に、南アフリカ」

文=Carrie Arnold/訳=鈴木和博

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