ブラックホールは食べ残しを投げ捨てるとの新説

地球から数百光年の距離をさまよう残骸も

2017.01.11
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銀河系の中心に位置する超大質量ブラックホール「いて座A*」を取り巻く乱流領域のX線画像。(PHOTOGRAPH BY NASA)
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 銀河系(天の川銀河)の中心に位置する怪物のようなブラックホールは、惑星サイズの「食べ残し」を投げ捨てており、なかには地球からわずか数百光年のところを猛スピードで駆け抜けるものもあるかもしれないとする新説が発表された。(参考記事:「宇宙の見方を変えた天の川銀河のブラックホール」

 ブラックホールは物を吐き出すところではなく飲み込むところだという一般的な概念からすると、いささか奇妙に思われるかもしれない。しかし、米国ハーバード大学の学部生イーデン・ガーマ氏が米国天文学会の年次総会で1月4日に発表した新しいシミュレーションによれば、銀河系の中心にある巨大ブラックホールが自由に浮遊する惑星状天体を大量に宇宙空間へ送り出している可能性があるという。「銀河系には、ブラックホールが食べ残した星々の冷たい残骸が何億個も浮遊している可能性があるのです」とガーマ氏は語る。(参考記事:「小惑星を食べ放題のブラックホール」

 宇宙をさまようこうした天体は、非常に変わった方法で形成される。

 銀河系の中心に位置する超大質量ブラックホール「いて座A*」の近くには、1万年に1回ほどの頻度で恒星が接近してくる。すると恒星はブラックホールの強力な重力によって破壊され、スパゲッティーのように引き伸ばされて、銀河系の中心付近にリボンのようにたなびくガスだけが残る。

 ここまではよく知られている話だが、ガーマ氏と彼女の指導教官であるジェームズ・ギロション氏は、その先を解き明かそうとした。2人は、ブラックホールが恒星を引き裂く過程を50回シミュレーションし、崩壊してスパゲッティー状になった物質が再結合して球形になり、ガスと塵からなる惑星ほどの質量の塊を形成することを確認した。

「銀河系の中心で潮汐力によって天体が破壊される現象は1980年代後半から研究されていますが、この過程から実際にコンパクト天体が形成されるという考えは非常に新しいものです」とガーマ氏。

95%が銀河系の外へ

 彼らのシミュレーションでは、ブラックホールの食べ残しから1万1473個もの天体が生まれた。いずれも海王星より大きく、なかには木星の数倍の大きさのものもあった。ブラックホールはこれらの天体を遠くに投げ飛ばし、その速度は時速3000万km以上になることもあった。

 新しく生まれた惑星状天体のうち、約95%が銀河系の外に飛び出し、天の川銀河とその隣の銀河を隔てる宇宙の僻地へと消えていった。数%の天体はいて座A*の近くにとどまり、親天体を引き裂いた大食漢の怪物のまわりを永遠に回り続けることになった。最後に全体の1%未満の天体は、銀河系の外れ、おそらく地球から約600光年以内のところをさまよう。(参考記事:「今週の宇宙画像:「田舎」のブラックホールほか」

銀河系の中心で繰り広げられる激しい活動。ブラックホールの存在は、この領域の星やガス塊の軌道運動によって明らかになる。(ILLUSTRATION COURTESY NASA)
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 いて座A*という怪物の専門家であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校のアンドレア・ゲッズ氏は、これを興味深く妥当なシナリオだと見ている。

 いて座A*が通りすがりの恒星を引き裂く頻度についてのガーマ氏とギロション氏の推測が正しければ、銀河系にはこうした奇妙な惑星状天体が数百万個も存在している可能性がある。さらに、近隣の銀河の中心にあるブラックホールによって宇宙空間にはじき出され、銀河系内に飛び込んできた天体もあるかもしれない。(参考記事:「巨大惑星、惑星系からはじき飛ばされた」

「一般に、こうした天体は猛スピードで移動し、銀河から完全に離脱することができるのです」とガーマ氏は言う。そうなると1つの疑問が生じる。銀河系内をさまよう恒星の残骸の中で、銀河系以外の銀河で作られたものはどのくらいあるのだろうか?

 こうした「食べ残し」の天体を見分けることができるかどうかはまだわからない。星が崩壊してできた惑星状天体は低温なので、赤外線望遠鏡がないと探せない。さらに、仮に見分けられたとしても、それが恒星の崩壊によってできたのか、あるいは銀河系以外の銀河から飛び込んできたのかを示す痕跡はないかもしれない。

 けれども、ガーマ氏は期待を寄せる。「惑星状天体を発見することができれば、その化学組成を調べることで、もとの恒星についてもっとよく知ることができ、生命が存在できるかどうかもわかるでしょう」

文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子

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