カルデラ形成の詳細な観測に成功、噴火予知に光

アイスランドのバルダルブンガ火山、極めて重要な報告、サイエンス誌

2016.07.20
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【動画】バルダルブンガ火山を研究する専門家集団:火山活動の活発なアイスランドは、あらゆる種類の噴火についてデータを集められる格好の場所だ。幅広い分野から100人以上の科学者が参加する「フューチャーボルク」プロジェクトは、噴火が人々の生活に与える影響を抑えるため、EUに情報提供し迅速な判断に貢献することを目指している。2012年に始まったプロジェクトは、アイスランドで2014年に起こった噴火でもモニタリングに大きな役割を果たした。(音声は英語です)

 熱く煮えたぎる地球の内部への裂け目である火山は、時に激しく活動して恐ろしい被害をもたらす。イタリアのベスビオ火山やインドネシアのクラカタウ火山など、人類の歴史に記録が残るそんな破壊的な大噴火には、ある共通の要素が存在する。カルデラの形成だ。(参考記事:「史上最大の噴火は世界をこれだけ変えた」

 カルデラ形成は、通常何の前触れもなく短時間の間に起こり、20世紀以降は7件しか確認されていない。この現象のメカニズムについて、科学者らは100年以上も頭を悩ませてきた。

 だから、アイスランドの内陸部にある巨大なバルダルブンガ火山が、ゆっくりとしたペースでカルデラ形成の兆しを見せたとき、これは研究者がその過程を詳しく解明する絶好の機会だった。(参考記事:「アイスランド火山、氷底噴火始まる」

 調査のために、 9カ国から科学者やデータモデリングの専門家たち47人が集まった。アイスランド大学の地球物理学者、マグノス・グドムンドソン氏をリーダーとした研究チームは、2014年8月から2015年2月にかけてバルダルブンガカルデラが成長する過程をまとめた。この報告は7月14日、科学誌「サイエンス」に掲載された。

大噴火を解明する

 カルデラは、火山の奥深くにあるマグマだまりが一度に空になった場合にできる。この空洞に岩石が落ち込むと、火山が大きく陥没するか、あるいは以前からのくぼみがさらに深くなる。

 噴火からカルデラ陥没までの正確な過程については、今も研究が進められている。記録にある歴史上の大噴火を見ると、カルデラ陥没の際にはガスの放出がともない、爆発して上空や周辺に広がっていくことがある。さらに、最も危険なのは山そのものが崩壊し、大規模な地滑りが起きて周辺地域が丸ごと飲み込まれるケースだ。

 火山は数百年から数千年にわたって活発に活動しうる。その間にカルデラ陥没が起こるのはわずか2~3回だ。したがって、アイスランドでゆっくりと進行するカルデラ陥没を逐一観測できるのは、科学者にとって思いがけない好機なのだ。

 今回の研究では、地震学的・地球化学的データの使用、GPS、地上からの調査、ヘリコプターや衛星からの調査など、さまざまな方法で陥没を観測した。グドムンドソン氏は研究者らの取り組みについて、「あらゆるものを測定できました」と振り返る。

「よくあるように一晩でカルデラができた場合、今回のような測定は困難です。しかし、バルダルブンガではカルデラがゆっくりと形成されたため、我々は何度も測定を行い、進行状況を精査できる時系列データを得ることができました」

2014年に起きたバルダルブンガ火山の噴火で流れ出す溶岩。(PHOTOGRAPH BY TOBIAS DÜRIG)
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 バルダルブンガ山(2009メートル)はアイスランドで2番目に標高が高い。そして、バトナ氷河の下800メートルという深さにカルデラが存在している。

 2014年8月中旬にバルダルブンガ火山が噴火の兆候を見せ始めると、2週間のうちに火山の中や周辺でマグニチュード4.0~5.8の地震がたびたび起きた。当初カルデラの直下から始まった地震はやがて南東に移動し、続いて突如北東に向きを変えた。最終的に、噴火は48キロ離れたホルフロインの溶岩原で起きた。

 噴出したマグマの量は約1.9立方キロメートルにもなった。アイスランドでは過去230年で最大の噴火だ。それでも、カルデラ陥没を起こす噴火として見れば中程度の規模にすぎない。

 今回の噴火でバルダルブンガカルデラは65メートル深くなり、面積は110平方キロメートルに拡大した。幸い、この陥没のときは氷河の下で噴火が起こることはなかった。もし発生していれば、大量の有毒ガスが放出され、大洪水が起きていたかもしれない。(参考記事:「本当に恐ろしい「カルデラ噴火」とは」

巨大噴火の共通点

 米スミソニアン国立自然史博物館の火山学者で、米国イエローストーンのような巨大カルデラを研究するステファニー・グロック氏は、学際的チームの研究によって、火山系の成長と活動に関する貴重な理解がもたらされると話す。(参考記事:「巨大火山地帯イエローストーン」

「実際にリアルタイムで観測できたおかげで、火山がどのように成長するかが明らかになります」とグロック氏。「他に類を見ない取り組みで、新しい技術も活用されました。また、地震とマグマの動きがどう関連するかも示されました。地震活動の点を追えば、地下のマグマの動きをたどることができるのです」

 依然として、陥没を引き起こす最初のきっかけが何であるかに疑問は残る。マグマだまりのマグマが地殻活動を起こすのかもしれないし、あるいは断層のずれが突如として通路を作り出し、マグマが急速に噴出するのかもしれない。

北から見たバルダルブンガ火山。太陽が低い位置にあると、氷の下にあるバルダルブンガカルデラの主だったくぼみがより鮮明に見える。(PHOTOGRAPH BY MAGNÚS T. GUDMUNDSSON)
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 研究チームはバルダルブンガ火山で、地下深くにある環状断層が動いて地震が起きたことを確認した。地震でできた地下の溝をマグマが流れ、最終的に遠く離れたホルフロインで地表に噴出したのだ。

「次いで、膨れ上がったマグマだまりからマグマが漏れ出してカルデラ陥没が起こり、マグマだまりの天井が崩れ始めました。いったん陥没が始まると、シリンダーにピストンが押し込まれるように、マグマがさらに押し出されていったのです」とグドムンドソン氏は説明する。

 こうした、いわゆるマグマの水平流出が火山本体から離れた地点でみられるのは、カルデラ陥没を引き起こすような噴火では珍しくないとグドムンドソン氏は指摘する。1912年以降に発生した7件のカルデラ陥没では、地殻の条件が大きく異なっていたにもかかわらず、いずれも大量の水平流出があった。

早期警報の実現を目指して

 バルダルブンガ火山で観察されたパターンは、今後、同様の現象が起こった場合に、状況予測に役立てることができる。地震とマグマの流れとの関係を解明することで、溶岩や氷の流出、地滑りが人口密集地域にどのような被害をもたらすか予測できるのだ。

「緊急計画や災害予測に大変有用です」とグロック氏は語る。「私たちは今、歴史上の噴火記録から、将来の火山活動を予測しています。過去に起こったカルデラ陥没を見れば、その火山が再びカルデラを形成するだろうと推測できますし、実際の火山活動から数十キロ離れた場所で起きているカルデラ陥没とも関係しているかもしれません」

 つまり、火山学者は大規模な噴火や長期にわたる噴火で影響を受ける地域に、数日から数週間前に警告を出せるかもしれない。(参考記事:「コスタリカ首都近郊で火山噴火、写真7点」

「今回のようなマグニチュードの地震が起きた時に火山の表面をモニタリングできていれば、次に同じことが起きた場合に、カルデラ形成の可能性があり、大規模で長期にわたる噴火が間もなく起こると警告できます」とグドムンドソン氏は言う。

「数日前に兆候をつかめば、さらに大きな噴火への準備ができるでしょう」(参考記事:「地震や噴火に備えるために」

【お詫びと訂正】論文の出典である科学誌のプレス資料に基づき、この記事のタイトルを「史上初」としておりましたが、過去に観測例があることを確認いたしました。お詫びして、訂正いたします。(2016/7/22)

文=Michelle Z. Donahue/訳=高野夏美

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