NASAの木星探査機ジュノー、まもなく木星に到達

木星の雲の層から5000キロの距離まで接近

2016.06.21
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太陽系最大の惑星である木星。全体が帯状の厚い雲に覆われている。(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL/UNIVERSITY OF ARIZONA)
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 7月4日、米国の独立記念日に、NASAの科学者や技術者は、別の祝祭にわくだろう。2011年に打ち上げた木星探査機ジュノーが、長い旅路の果てに、ついに木星周回軌道に入るのだ。(参考記事:「探査機ジュノー、木星誕生の謎に挑む」

 3枚の細長い太陽電池パネルが突き出した形の探査機ジュノーは、現在、風車のように回転しながら宇宙空間を進んでいる。そういうとゆったりと飛んでいるイメージが浮かぶが、米国東部標準時7月4日午前11時18分(日本時間7月5日午前0時18分)に木星に到達すると、瞬間的に人工物としては最高レベルのスピードで、巨大惑星を取り巻く苛烈な放射線帯に突入する。

 ジュノー・ミッションに参加している米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所の応用物理学者バリー・モーク氏は、「木星の放射線帯の荷電粒子は、太陽系内で最も高エネルギーで密度も高いのです」と言う。「木星探査機にとって、ここが最も危険な場所です」

 放射線帯に突入してからの35分間を乗りきることができれば、ジュノーは安定した極軌道に落ち着く。それから20カ月にわたり、ジュノーは木星を37周するが、放射線帯の影響をなるべく受けないようにするため、大半の時間は木星から何十万kmも離れていることになる。

 しかし、ジュノーは2週間ごとに、これまでのどの探査機よりも木星に近づく。木星の雲の層の表面からわずか5000キロメートルのところをかすめるように飛行し、8種類の観測機器を駆使して木星の起源を探り、強烈な放射線帯を調べ、帯状の厚い雲の下を覗き込む。

 NASAが6月16日に行った記者会見で、ジュノー・ミッションの主任研究員である天体物理学者のスコット・ボルトン氏は、このミッションの主な目的は木星の成り立ちを解明することと述べた。「太陽系の惑星はどのように作られたのか。そのレシピを知りたいのです」とボルトン氏は言う。「木星は太陽系で最初に形成された惑星で、そこには地球の材料が地球よりもたくさん含まれています。木星の成り立ちを知ることで、生命が誕生したプロセスや、第2の太陽系を見つけるヒントが得られるのです」。ジュノーは、2年間という短い運用期間中にやるべきことがたくさんあるのだ。(参考記事:「木星は「壊し屋」だった、太陽系形成過程に新説」


【動画】木星探査機ジュノーがまもなく木星周回軌道に入る:ジュノーは、これまでのどの探査機よりも近いところから木星を観測する。(音声は英語です)(Video courtesy NASA/JPL-Caltech)

 木星や他の巨大ガス惑星の成り立ちの理解を深めるために、科学者たちが知りたいのは木星にどのくらいの量の水と酸素があるかということだ。しかし近くからとはいえ、これを調べるのは難しい。なぜなら木星の大気の99%は水素とヘリウムが占めていて、あとは微量のアンモニアなどが、途方もない高圧の下でかき混ぜられているからだ。

 地球が水を獲得したプロセスについての理論は、生まれたばかりの太陽系で木星が形成されたプロセスと密接に結びついている。だから現在の木星にどれだけの水があるかを明らかにできれば、その影響を知る手がかりとなる。(参考記事:「地球の水の起源、誕生当時から存在?」

 ジュノーは、木星の中心核の様子も教えてくれるはずである。科学者らは、木星の重力場や磁場の変動が明らかになれば、中心核の組成も明らかになると期待を寄せる。木星の中心核は、岩石と氷の塊なのだろうか?金属水素の球なのだろうか?あるいは全く違うものなのだろうか?

 木星の強力な磁場も観測するため、ジュノーの観測機器は放射線から保護された筐体の内部に収められている。ミッションの放射線モニタリング部門を率いるハイジ・ベッカー氏は、「ジュノーは鎧を着ているのです」と言う。放射線保護筐体は厚さ1.2センチのチタン製で、空っぽの状態でも約180キロの重さがある。この筐体がなかったら、木星のまわりを光速に近いスピードで飛び回っている膨大な数の電子によって、観測機器はすぐに壊れてしまうだろう。「何もしなければ、ジュノーは2000万ラドの放射線を吸収します。人間が1年ちょっとの間に、歯科用X線撮影を1億回以上受けるようなものです」とベッカー氏。

 ジュノーは軌道運動しながら自身も回転するため、外側に目を向けて木星の磁場の範囲を調べることもできる。木星の壮麗な「X線オーロラ」を間近で見ることもできるだろう。X線オーロラは、木星の大気と磁場、それにわずか10時間周期の自転が複雑に作用し合って生じると考えられている。

【フォトギャラリー】これまで撮影された木星とその衛星たち

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 ジュノーに搭載されているカメラ「JunoCam」は、木星の姿を最高の画質で見せてくれるはずだ。残念ながら、このカメラの寿命は、他の観測機器に比べてはるかに短い。木星のまわりを7~8周すると、放射線によるダメージで壊れてしまうだろう。

 NASA本部のミッション責任者ダイアン・ブラウン氏によると、JunoCamの被写体選びには一般の人々も参加できるという。プロジェクトチームは現在、既に決定している50以上の領域のほかにJunoCamで撮影するべき領域を募集中で、年内にJunoCamのウェブサイト上で投票を行い、リストを絞り込むことになっている。

 ブラウン氏は、「JunoCamが市民科学者の皆さんの役に立てることを、非常に嬉しく思っています」と言い、ジュノーから送られてくる画像のデータ処理にもぜひ協力してほしいと呼びかけている。

 ジュノーの観測装置はすべて木星到達の5日前にオフになるが、研究チームは到着当日に最初の画像を発表する予定だ。初めての周回は8月27日に行われるが、その時には極地方のクローズアップ写真を撮影するほか、木星最大の衛星ガニメデの写真も撮影できるかもしれない。(参考記事:「木星の衛星ガニメデに奇妙な膨れ発見、海の証拠か」

 米カリフォルニア大学バークレー校の天文学教授イムケ・デ・ペイター氏は、長年、木星とその放射線帯を研究してきた。彼女は、地球からの観測データと、ジュノーが収集する新しい観測データを組み合わせて研究を進めたいと考えている。「ジュノー・ミッションのおかげで、木星の研究全般が活気づいています。大勢の研究者がさまざまな波長で木星を観測してきたので、現在、信じられないほど大量のデータが集まりつつあります」とデ・ペイター氏は言う。「こうしたデータと合わせれば、木星の温度地図や、アンモニアなどの化学地図を作成することができるはずです」

 木星の環境への理解が深まれば、エウロパへの接近通過ミッションなど、今後行われる木星の衛星への旅路も楽になる。エウロパの表面を覆う厚い氷層の下には海があり、生命もいるかもしれないと考えられている。(参考記事:「木星衛星エウロパの氷層内に大きな湖?」

 NASAは将来、エウロパやその他の木星の衛星も探査したいと考えている。こうした衛星を汚染してしまうことがないよう、ミッションが終了したら、ジュノーは木星の大気圏に突入し、燃え尽きる運命だ。

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