賢いインコ「ヨウム」、アフリカで激減

ペットとして世界中で人気、全面的な取引禁止案も浮上

2016.02.10
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2011年、ウガンダの国境で密輸人から保護したヨウムたち。かつてガーナには多くのヨウムが生息していたが、現在はほぼ姿を消しているという。(PHOTOGRAPH BY JAMES AKENA, REUTERS)
[画像のクリックで拡大表示]

 おしゃべりで、鮮やかな赤と白の差し色が入ったグレーの鳥、ヨウム。1990年代のアフリカ、ガーナの深い森には、1000羽以上にもなるヨウムの群れがあちこちで見られた。ところが、英国の鳥類学専門誌『Ibis』誌に発表された最新の研究によると、現在はガーナでは、ヨウムの姿はほぼ見られないという。

 激減した要因は、ペット向けに乱獲されたことと、森林が消失したことだという。

 人間の言葉をまねるのが並外れて得意なヨウムと、ヨウムとよく似たコイネズミヨウムは、世界中の家庭でペットとして珍重されている。2~5歳児と同等の知能を持ち、ある程度の言葉を覚えるだけでなく、簡単な文章も作れることが研究で証明されている。(参考記事:特集「動物の知力」

「African Grey talking(ヨウムのおしゃべり)」とグーグルで検索すれば、人間の言葉をまねている動画がいくつも見つかる。「アインシュタイン」というヨウムは、TEDの講演会にも出演したほどだ。(参考記事:「人間の声をまねるシロイルカを初確認」

 ヨウムは、かつて西アフリカや中央アフリカの広範囲に生息していた。コートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、カメルーン、コンゴ、ウガンダ、ケニア西部まで、その生息域は300万平方キロ近くに及ぶ。うち7万5000平方キロ以上を擁するガーナは、特に個体数の減少が激しい国の1つだ。

密輸人から保護され、ビクトリア湖のンガンバ島に放たれたヨウムたち。ヨウムは野鳥の中で最も取引されている数が多い。(PHOTOGRAPH BY CHARLES BERGMAN)
[画像のクリックで拡大表示]

 鳥とその生息環境の保護に取り組む国際組織、バードライフ・インターナショナルのナイジェル・カラー氏は「ガーナではヨウムが壊滅的に減少しており、めったに見ることができません」と説明する。カラー氏も著者に名を連ねる今回の論文によれば、ガーナでは1992年以降、90~99%ものヨウムが失われたという。

 研究を先導したナサニエル・アノーバー氏は「懸命に探しましたが、ヨウムはほんの少ししか見つかりませんでした。20年前には、1200羽もが群がっているとまり木もあったのですが」と話す。ガーナ出身のアノーバー氏は、現在は英国マンチェスター・メトロポリタン大学の大学院に所属している。

「アフリカの沈黙」

 ナショナル ジオグラフィックのエマージング・エクスプローラーでもある、ヨウムの専門家スティーブ・ボイズ氏は「ヨウムがガーナから消えかけているのは、意外なことではありません」と述べる。「ウガンダ、ルワンダ、タンザニアなど、あちこちの生息域で局所的に絶滅が起きています。私たちはこの現象を“アフリカン・サイレンス(アフリカの沈黙)”と呼んでいます」(参考記事:「米ナショジオ協会、2015年のエクスプローラー14人を発表」

 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(CITES)の記録を見る限り、ヨウムは野鳥の中で最も数多く取引されている。

 1980年以降、ヨウムが生息する国からは80万羽が合法的に輸出されている。ただし、この数字は森で捕獲されたヨウムの数とは一致しない。野生のヨウムは捕獲後に死ぬことが多く、45~65%が輸出される前に命を落とすと推定されている。さらに、バードライフ・インターナショナルによると、報告されていない国内外の取引を計算に入れると、過去20年間に西アフリカや中央アフリカで捕獲されたヨウムは、おそらく100万羽を超えるという。(参考記事:「約2万羽の鳥を違法販売、インドネシア3市場で」

 米国では1992年、野生のヨウムの輸入が禁止された。欧州連合(EU)も2007年に同様の措置を講じている。しかし、飼育下で繁殖された個体の取引は変わらず盛んで、これが野生のヨウムの減少に関連している可能性が高い。

 米国を拠点に、ヨウムなどオウム類の保護に取り組むワールド・パロット・トラストのディレクター、ローワン・マーティン氏は「あまり知られていないことですが、特に南アフリカや中東では、飼育下での繁殖に使われる親鳥は、野生の鳥であることが多いのです」と話す。「飼育業者にすれば、野生の鳥を購入して繁殖した方が、自分で育てた鳥を使うより安上がりですみます。自分で育てるとなると、繁殖できるまでに何年もかかりますから」(参考記事:特集「野生動物 ペットへの道」

ウガンダの家庭でペットとして飼われているヨウム。ケージの中からこちらを見つめている。(PHOTOGRAPH BY REUTERS)
[画像のクリックで拡大表示]

 南アフリカ、バーレーン、パキスタン、モザンビークといった規制の緩い国では、こうした制度の抜け穴が利用されている。例えば、南アフリカは飼育下で繁殖されたヨウムの最大の輸出国で、年間4万羽以上を輸出している。それと同時に、南アフリカはヨウムの最大の輸入国でもある。つまり、南アフリカで繁殖されたヨウムは、野生の親から生まれたという可能性が高い。ヨウムを飼うことは、意図はしていなくとも、結果的に野鳥の取引を後押ししていることになるのだ。

取引を全面的に禁止に

 CITESは現在、ヨウムが生息するすべての国に対し、野生のヨウム取引の全面禁止を提案している。ほとんどの国がすでに禁止してはいるが、カメルーンにはいまだ、1600羽というCITESの輸出割当が適用されている。全面禁止案の採決は、今年後半に南アフリカのヨハネスブルクで開催されるCITESの締約国会議で行われる予定だ。

 ワールド・パロット・トラストのマーティン氏は「野生のヨウムの取引がすべての国で禁止されれば、種を保護するうえで最も大きな成果につながるでしょう」と話す。「違法取引がなくなることはないでしょうが、その規模は大幅に縮小するはずです」

 シンガポール、バーレーン、パキスタンなど、新興国を中心とする消費国の需要を減らすことも1つの手だ。これらの国には、オウムには霊的な力があると信じている人々もいて、頭や羽が呪術や儀式に用いられている。

ヨウムとともに生きるために

 ボイズ氏は「ヨウムの購入を検討するのであれば、その出所を100%明らかにするべきです。飼育下での繁殖、あるいは人工飼育の個体であることを証明する書類を手に入れましょう」と助言する。

 ボイズ氏はさらに、ヨウムが最長で65年も生きること、野生では極めて社会的であることを知っておいた方がいいと述べる。野生のヨウムは大きな群れで行動し、1日に数キロ移動する。個体間や社会集団内の結び付きも非常に強い。

「私たちはヨウムの群れを独身クラブと呼んでいます。彼らはそこでほかの個体と知り合い、生涯をともにするパートナーを見つけます」。音をまね、ユニークな鳴き声をたてるのは、野生生活に欠かせないコミュニケーションの手段だ。(参考記事:「イヌは飼い主を取られると嫉妬する」

「特別な存在であるヨウムを大切にし、保護していかなければなりません」とボイズ氏は訴える。「わなにかかり、捕まえられてしまったら、彼らは悲しみに打ちひしがれるでしょう。自由を奪われた鳥は、心が折れてしまうのです」

【フォトギャラリー】賢い動物たち17点(特集「動物の知力」より)

文=Paul Steyn/訳=米井香織

  • このエントリーをはてなブックマークに追加