脚をチラッと見せてメスを誘うクモを発見

葉っぱに隠れてハート形の脚をひらひら、動画を公開

2016.01.20
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【動画】オーストラリアのハエトリグモの一種Jotus remusの撮影に初めて成功。オスが「パドル」のついた珍しい脚を振り、メスを誘っている。(Video: Jürgen Otto)

 クモには「ハンカチを落として出会いのきっかけを作る」などという芸当はできない。ではどうするか。先ごろオーストラリアで見つかった新種のクモは、なんとオスが自前の「ハート形の求愛ボード」を振ってみせる。

 このハエトリグモの一種(学名はJotus remus)のオスは、リンゴの種ほどの大きさで、左右の第3脚の先端にハート形をした、カヌーのパドルにも似た平たい器官をもっている。(参考記事:「クモが赤やオレンジ色を見分ける仕組みを解明」

 風変わりな求愛の儀式はこうだ。メスの気を引きたいオスが葉の陰に隠れて、「ハートのパドル」を葉の脇から突き出し、相手の目に留まるよう高く掲げる。クモの専門誌『Peckhamia』に1月7日に掲載された論文によると、体の一部を「チラ見せ」してメスを誘う、あるいは脚にこのような器官があるハエトリグモは、他に例がないという。

 論文の共著者で、これまで数々のクモを研究してきたデビッド・ヒル氏は「このクモには目を見張りました。実に珍しい生き物です」と語っている。

 米ジョージア大学の名誉教授で昆虫学者のロバート・マシューズ氏によると、ハエトリグモは凝った求愛行動と派手な見た目で知られているが、今回見つかった行動は「極めて珍しい」そうだ。

キャンプ場での衝撃

 2014年のクリスマス・シーズンに、もしユルゲン・オットー氏が自宅にこもっていたら、この奇妙な行動をとるクモは、いまだに誰にも知られないままだったろう。

 普段はオーストラリア政府でダニの専門家として働き、個人的にクモの研究をしているオットー氏は、この期間シドニー郊外の国立公園でキャンプをしていた。いつもならクモの撮影用にカメラを持参しているところだが、この時は持ってきていなかった。「たまにはクモの撮影を休もうと思ったのです」と彼は言う。(参考記事:「クジャクみたいに派手なクモの新種、3種を発見」

葉っぱに隠れて脚を振るハエトリグモJotus remusのオス。(Photograph by Jurgen Otto)
[画像のクリックで拡大表示]

 キャンプの最中、オットー氏はテントの上にクモがいるのに気がついた。最初はごく平凡なクモに見えたが、やがてあの奇妙な脚が目にとまった。しかし手元にカメラはない。

 2日後、彼は車で4時間もかかるキャンプ場を再訪し、ほぼ丸1日かけて探しまわった末、ついに目的のクモを発見。オットー氏はこのクモが新種であることを確かめた、学名Jotus remusの「remus」は、ラテン語でオールあるいはパドルを意味する。

ハートの脚は何のため?

 じっくり研究できるだけの数は十分に揃ったものの、このクモが名前の由来となった「パドル」を何に使っているのかは、なかなか判明しなかった。細くてやわらかい毛でできたパドルは、ジャンプをしたり泳いだりするのには使われていないようだった。

 オットー氏は、オスとメスを一緒にしてみることにした。いくつかの実験を経て、彼はメスが上に載っている葉をオスが揺らし、パドルを振ってメスの気を引こうとしているのを発見した。 (参考記事:「「青仮面」の新種のクモを発見」

【動画】色鮮やかな体で踊りまくってメスを誘うクジャクグモ。果たしてその努力は報われるか?(音声は英語です)

 中には、オスのパドルに突進して相手を退散させてしまうメスもいる。しかし交尾相手のいないメスは、パドルを見ると動きを止める。オスは意中のメスがじっとして動かないことを確かめると、さっと飛び出してきてメスに寄り添い、ほんの数秒のうちに交尾を済ませる。

「オスは自分の脚を攻撃してこないメスを探しているのです」とオットー氏は言う。メスがオスを食べているところは見たことがないそうだが、メスはオスよりもやや体が大きい、貪欲なハンターだ。(参考記事:「魅力ないオスをメスが食べる「孔雀クモ」」

 オットー氏はさらにこう付け加えた。「彼らはとんでもないゲームをしているのです。クモがこんなことをしているなんて、誰も思っていなかったでしょう?」

文=Traci Watson/訳=北村京子

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