道路は世界を60万分割、環境への影響評価

科学者が「道路のない地域」の重要性を地図化

2016.12.26
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世界の「道路のない地域」。青は特に広い領域を示す。赤は道路から1キロメートル以内の領域を示す。(MAP BY P. IBISCH ET AL., SCIENCE 2016)
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 道路のない原野は、地球上で最後に残された、手付かずに近い土地である。12月に科学誌『サイエンス』に発表された研究により、道路のない土地は、現在も地球の陸地の80%を占めているものの、その土地は道路によって約60万もの区画に細かく分割されていることが明らかになった。

 論文の著者らによると、道路のない土地は、生物多様性を維持するのにきわめて重要な役割を果たしており、水循環や気候の調節にとっても欠かせないものだという。「2010年から2050年までの間に、全世界の道路の総延長は60%以上増加すると予測されている。生物多様性が失われるのに歯止めをかけるには、道路開発に関するグローバルな戦略を立てることが急務である」と、彼らは論文で指摘している。

 ドイツのエーベルスヴァルデ持続可能開発大学のピエール・イビシュ氏が率いる国際研究チームは、グリーンランドと南極を除く、地球上のすべての「道路のない地域」の地図を作成した(上)。道路データは、クラウドソーシングによる地図プロジェクト「オープンストリートマップ(OpenStreetMap)」の3600万キロメートル以上の道路のデータを利用した。汚染、騒音、害虫や外来種の輸送、土壌浸食、人間の侵入の増加など、道路による影響は実際の表面積をはるかに超えて広がるため、研究チームは道路から1キロ以上離れている場所を「道路がない地域」と定義した。彼らの見積もりによると、地球上の1億2300万平方キロの土地のうち約1億500万平方キロが道路のない地域になるという。(参考記事:「クラウドサイエンスで野生生物研究に貢献」

 研究チームは、この数字は手付かずの土地の広さを過大評価してしまうと考えている。なぜなら、一部の道路、特に主要道路の影響は5キロ以上に及ぶほか、道路地図が完成していない国も多いからだ。一部の地域では道路建設が急ピッチで進められているため、新しい道路の多くがまだ地図に載っていないことになる。

100平方キロを超える土地はわずか7%

「道路のない地域」の生態学的価値を評価した地図。濃い青は価値が高い。赤は道路から1km以内の地域を示す。(MAP BY P. IBISCH ET AL., SCIENCE 2016)
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 研究者たちは、各地域の広さ、生物多様性、生態系にとっての重要性にもとづいて、その生態学的価値を評価した。道路のない地域のほとんどは狭く、60万区画のうち半分以上が1平方キロ未満、80%が5平方キロ未満で、100平方キロ以上ある地域はわずか7%であった。道路のない地域の4分の1は、動物がまばらにしか生息しておらず、樹木もない、基本的に不毛の土地だ。3分の1は放牧地だ。残りの地域の一部が、アマゾンや北米の北方林のような緑豊かで生物学的に豊かな地域になる。(参考記事:「【動画】道路を横断するサケ」

 論文によると、残念なことに、現在残っている「道路のない地域」のうち、国際的な保全の取り組みの対象になっているのはわずか9.3%であるという。研究チームは、道路の悪影響を裏付ける科学的証拠が蓄積されてきている今、生態学的に最も貴重な「道路のない地域」を優先して保全していくべきだと主張する。(参考記事:「セレンゲティ国立公園に道路建設計画」

「『道路のない地域』における道路の延長を制限することが、地球規模での生物多様性と持続可能性の目標を達成するうえで、最も費用対効果が高く直接的な方法かもしれない」と、彼らは結論づけている。(参考記事:「【動画】道路をゆっくり飲み込む恐ろしい地滑り、ロシア」

文=Betsy Mason/訳=三枝小夜子

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