2016年ドラマチックな科学ニュースベスト6

恐竜や古代人から宇宙の大発見まで、ナショジオニュースから厳選

2016.12.22
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2つのブラックホールが合体するシミュレーション画像。2月に観測された重力波の発生源だ。(ILLUSTRATION BY SXS COLLABORATION)
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 衝突するブラックホール、琥珀の中から見つかった恐竜の一部、生命が住めるかもしれない惑星。この1年の間に、科学の分野ではときにまるで映画のようにドラマチックな発見がもたらされた。

 2016年のすばらしい科学的発見をおさらいし、人類の起源から宇宙の深淵に至るまで、私たちがこの世界への理解をどれだけ深めたのかを振り返ってみよう。

時空のさざ波「重力波」を初観測

 アインシュタインが存在を予言してから100年。ようやく宇宙の時空のさざ波が観測された。重力波と呼ばれるこのさざ波は、最大級に激しい出来事によって引き起こされる。今回観測された重力波の源は、お互いのまわりを回りあいながら衝突した2つのブラックホールの合体だった。重力波はこのような巨大なエネルギー源から発生するものの、実際に観測できる世界への影響はごくわずかなため、長いこととらえられなかった。(参考記事:「重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語」

 しかし、2016年2月、米ルイジアナ州とワシントン州にある超高精度検出器によって、ついに地球を通過する重力波の直接観測に成功した。さらに、その数カ月後には2回目となるさざ波も検出し、まぐれ当たりではないことも確かめられた。天文学者たちはこの成果に歓喜した。重力波を使えば、今まで見えなかったものが見られるようになる。たとえば、謎に満ちたブラックホールの直接観測も可能だ。(参考記事:「2度目の重力波観測、天文学はいよいよ新時代へ」

琥珀から恐竜のしっぽを発見

琥珀の中にある羽毛に覆われた恐竜の尾。(PHOTOGRAPH BY LIDA XING)
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 ミャンマーの市場で見つかったその小さな琥珀は、危うく宝石になってしまうところだった。だが、幸運にも古生物学者の手に渡り、12月に恐竜の尾の一部が含まれていると発表された。最初、9900万年前のこの恐竜の尾は、植物の一部だと勘違いされていた。しかし、くわしい調査の結果、実際は骨と羽毛に覆われた軟部組織であることがわかった。(参考記事:「世界初、恐竜のしっぽが琥珀の中に見つかる」

 さらに分析を進めた結果、この尾は幼いコエルロサウルス類のものであるらしいこともわかった。コエルロサウルス類は、ティラノサウルスや現在の鳥類につながる恐竜だ。この発見は、羽毛の種類と恐竜を直接照合できる手段をもたらしただけでなく、琥珀からさらに多くの驚くべき発見が得られることを示唆している。(参考記事:「恐竜時代の鳥の翼、琥珀の中でありのまま保存」

生命が住めるかもしれない「隣の」惑星

赤色矮星プロキシマ・ケンタウリのまわりを回るプロキシマbの地表の想像図。(PHOTO ILLUSTRATION BY ESO, M. KORNMESSER)
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 地球外惑星に生命のしるしを見つけたいという私たちの遠い希望が、8月に少しばかり手元にたぐりよせられた。太陽系から最も近い隣の恒星プロキシマ・ケンタウリに惑星があることが明らかになったからだ。(参考記事:「太陽系から最も近い地球型惑星発見、過酷な環境」

 プロキシマ・ケンタウリまでの距離はわずか4.24光年。人類が世代を経ずに通信できる距離にあり、これまでに多くの天文学者やSF作家を魅了してきた。

 今回発見されたプロキシマbと呼ばれる惑星の質量は地球と同じくらいだ。小さく赤いプロキシマ・ケンタウリとの距離は、もし水が存在するなら、地表で液体を維持できる位置にある。プロキシマbで生命探査を行えるような技術が進展するには、まだしばらく時間がかかるだろう。しかし、この惑星の存在が明らかになっただけでも、天文学者にとっては朗報だ。(参考記事:「太陽系から最も近い太陽系外惑星が消えた!」

古代人の貴重な足跡

1万9000年前から5000年前、10人以上の古代人がエンガレ・セロの火山灰に残した足跡。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 タンザニアは初期人類についての計り知れない情報源で、さまざまな人類の祖先の骨や道具などが見つかっている。10月、エンガレ・セロという場所で何百個もの古代人の足跡の年代と成因が明らかになり、科学者たちを小躍りさせた。1万9000年前から5000年前の間にできたこれらの足跡は、そびえ立つ火山のそばを走ったり集団で移動したりした古代人の痕跡を示すものだ。(参考記事:「古代人の謎の足跡400個超、年代と成因が明らかに」

 1970年代には、同じタンザニアのラエトリと呼ばれる場所で、約360万年前のアウストラロピテクス・アファレンシス(アファール猿人)がつけた最古の足跡が発見されている。この足跡は、直立二足歩行をする初期人類の最古の証拠でもある。2016年12月には、博物館建設のためにラエトリを訪れた科学者たちによって、さらに足跡が発見された。そこからアウストラロピテクスの特性についての理解が深まり、この人類の祖先の社会構造についての議論が巻き起こっている。(参考記事:「アファール猿人、新発見の足跡から一夫多妻仮説」

巨大な海生ワニ

マキモサウルス・レックスの想像図。(ILLUSTRATION BY DAVIDE BONADONNA)
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 1月には、史上最大の海生ワニの化石が見つかったというニュースが科学者たちを驚かせた。チュニジアの砂漠で見つかった頭骨などの化石から、このワニは、成長すると体長10メートル、体重3トン以上になると考えられている。 (参考記事:「史上最大の海生ワニの化石を発見、チュニジア」

 1億2000万年前に生きていたこのマキモサウルス・レックスは、1億4500万年前ごろのジュラ紀末に起きたと言われる大量絶滅の謎を解く重要な手がかりとなる。古生物学者たちは、そのような大量絶滅が起きたのであれば、マキモサウルス属を含むテレオサウルス科も絶滅したと考えていた。しかし、その後の時代からマキモサウルスの化石が発見されたことで、海生ワニの一部が生き延びていたことだけでなく、大量絶滅自体が当初考えられていたよりもゆっくりと起きていた可能性も取りざたされている。

NASAの探査機が木星に到達

木星の北極付近で発生している巨大オーロラを示す合成画像。(PHOTOGRAPH BY NASA, ESA)
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 NASAの木星探査機ジュノーは、28億キロをわずか5年で航行し、7月に太陽系最大の惑星の軌道に突入するという危険なミッションを成功させた。ジュノーの打ち上げは2011年8月。人工物が木星を周回するのは、2003年のガリレオ探査機以来となる。太陽電池を搭載したジュノーは、木星の構造や強力な磁場の調査にあたる計画だ。この探査は、今後何十年間かにわたる氷の衛星エウロパ探査への道を開く可能性がある。(参考記事:「祝!探査機ジュノーが木星周回軌道に、偉業を解説」

 周回軌道に達するまでに、ジュノーは長い宇宙の航海に耐え、さらに木星の強烈な放射線帯を通過しなければならなかった。7月4日、風車のような形をしたジュノー探査機は回転速度を上げて、木星の周回軌道への突入を成功させた。その後、ジュノーからはすばらしい画像や大量のデータが続々と送られており、天文学者たちも歓喜している。(参考記事:「嵐とオーロラの木星の極地、探査機ジュノーが撮影」

文=Victoria Jaggard/訳=鈴木和博

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