全地球の二酸化炭素の流れを3D映像化、NASA

炭素観測衛星OCO-2のデータを初めて可視化

2016.12.21
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

最新の3Dアニメーションで地球大気中の二酸化炭素の動きを見る。赤い部分は二酸化炭素濃度が高く、青い部分は低い。(解説は英語です)(映像提供:NASAゴダード宇宙飛行センター)

 この幻想的な映像は、人工衛星が測定したデータとスーパーコンピューター・モデルによって作り出された。地球の大気中を二酸化炭素(CO2)が動き回る様子を、これまでにない精緻さでとらえた、NASAが誇る最新の成果だ。

 映像では、CO2が山岳地帯から滑り降り、平野部を突き進んで海まで達し、さらに渦を巻きながら高度およそ20キロの上空まで上昇していく様子が見てとれる。2015年末にインドネシアで発生した大規模な森林火災では5億トンを超えるCO2が排出された。CO2を吸収する森林の成長は夏に盛んで冬は小康状態になるため、北半球における大気中のガス濃度は増加と減少を繰り返し、まるで地球そのものが呼吸しているかのようだ。(参考記事:2015年11月号 まるごと一冊 気候変動特集号

 だが、この目を見張る映像は単なる見世物ではない。これはNASAがスーパーコンピューター向けに開発した気候モデルに、同じくNASAが2014年に打ち上げた軌道上炭素観測衛星(OCO-2)のデータを入力した初めての成果だ。OCO-2のミッションは地球上のCO2の動きを常時監視すること。地上700キロの高度を周回して1日に約百万回の測定を行い、10万点に近いCO2レベルの推定値を得る。

 OCO-2は地表面から反射される太陽光の明るさ、特に酸素(O2)やCO2が吸収されやすい赤外波長での明るさを測定する。これらのガスが吸収した光量がわかれば、そのエリアに存在する気体分子の数を推定できるため、科学者たちは宇宙から得たデータで地球上のCO2濃度の分布を再現できることになる。

 このような映像を提供できるのはNASAだけだ。この衛星はハッブル宇宙望遠鏡に使われている各種センサーや、金星の大気などを観測するための各種計器も利用している。

 宇宙からCO2を観測できるようになったのは大きな進歩だと話すのは、NASAジェット推進研究所の科学者でOCO-2科学者チームのリーダーを務めるデビッド・クリスプ氏。これまでの地上測定も非常に優れているものの、残念なことに測定地点が少ないと言う。

「地上には約150カ所の測定地点があり、収集されるデータは信じられないほど正確なものです」とクリスプ氏は話す。「ところが世界は実に広大で、しかも実に興味深い循環パターンがいくつもあります。つまり、たった150カ所の測候所で地球全体の天気を予測するようなものなのです」

空からの目

 データ量が一気に増え、2014年9月から2015年9月までの1年間の様子が可視化されたことで、科学者たちは地球上の大気、陸地、海洋の間でCO2が相互に交換される様子をより深く理解できるようになった。

 CO2交換の解明は極めて重要だ。大気中のCO2濃度は過去2世紀の間に4割以上も増加し、現在は400ppmを超えている。これは主に化石燃料を燃やす人間の活動によるものだ。温室効果ガスの増加が世界的な温暖化傾向を招き、壊滅的な結果をもたらす気候変動を生じさせている。(参考記事:北半球CO2濃度、400ppm超える

 現時点では人間が排出するCO2の約半分が陸地と海洋に吸収されている。今後どれだけの速さで地球温暖化が進行するかは、こうした「タンク」がいつ満杯になるかに左右されるが、OCO-2による観測はこうした疑問に答えるヒントを与えてくれる。(参考記事:CO2吸収の飽和点が迫る地球環境

 さらに、OCO-2はたとえば2015年の中頃に猛威をふるったエルニーニョなど、地球上の気候が自然の法則に従って変化する様子を高精細画像でとらえることができる。クリスプ氏によれば、この衛星のおかげでエルニーニョによる地球への影響がいくつも確認できているという。2015年に発生したインドネシアの大規模な森林火災で5~7億トンのCO2が排出されたこと、そしてそのためにエルニーニョが悪化して深刻な干ばつとなったことなどだ。

エルニーニョとは2年から7年の周期で発生する一連の複雑な気象パターンのこと。激しい気象変動を引き起こし、数十億ドルに及ぶ損害や多くの死者、病気の蔓延を伴うこともある。エルニーニョの発生原因は何か、その影響はどのようなものか、なぜ予測が難しいかを解説する。(解説は英語です)

エルニーニョがCO2吸収を妨げる

 さらにクリスプ氏によれば、アフリカ全体の高温化と南米の高温化・干ばつが植物の成長を妨げたこと、そのためCO2の吸収が阻害されたこともOCO-2による観測で明らかになったという。エルニーニョは2大陸の合計で約18億トンのCO2吸収を妨げたことになるが、これは人間が排出するCO2の5%近い量に相当する。OCO-2チームは12月上旬に開かれた米国地球物理学連合の秋の会議で、こうした発見について報告した。

「アフリカでは植物が高温にさらされ、インドネシアでは植物が燃え、南米では植物の成長が止まりました」とクリスプ氏は話す。「大規模なエルニーニョが発生するとなぜCO2が増加するのかはこれまで理論としてはわかっていましたが、その理論がすべて正しかったと証明されたのです」

 当初の計画ではOCO-2の運用は2年間だけで、今年で終了の予定だったが、データ収集は現在も毎日続けられている。衛星チームはミッション期間の延長をNASAに申請していて、打ち上げられなかったOCO-2の予備機も国際宇宙ステーションでの観測用に改良中だ。

 しかし、OCO-2の将来は不透明といえる。次期大統領ドナルド・トランプ氏の顧問たちは、NASAの気候科学研究に否定的な見解を示している。

「気候変動を否定する人たちも、気候が変化していること自体は認めています。人間の活動が原因だとは考えていないだけです」とクリスプ氏は話す。「気候が変化するとき、たとえば農産物の生産や植物の健康状態など、我々に大きな影響を与えるプロセスはどのように変化していくでしょうね」(参考記事:「CO2止めても7℃上昇」に批判相次ぐ

文=Michael Greshko/訳=大光明宜孝

  • このエントリーをはてなブックマークに追加