11月28日が「火星の日」になった理由

火星から届いた最初の画像は人々を失望させた

2016.11.30
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1964年11月28日に打ち上げられた火星探査機マリナー4号。1965年7月14日には、火星の上空9846キロメートルを通過し、史上初となる火星の接近写真を撮影、送信した。(PHOTOGRAPH BY NASA, ASSOCIATED PRESS)
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 11月28日は火星の日だった。これは、1964年の11月28日に火星探査機マリナー4号が打ち上げられたことに由来する。

 打ち上げから8カ月後、探査機が火星を通過する際に送ってきた画像によって、人類はこの惑星の詳細な姿を初めて目の当たりにした。その後、マリナー4号が集めたデータは、火星の地表探査を安全に行うために欠かせない情報となった。(参考記事:「探査機が見た火星フォトギャラリー」

失望した人々も

 ところがせっかくの画像も、当初はNASAの広報活動のお荷物でしかなかった。モノクロの不鮮明な画像からわかったのは、火星が月と大して変わらないクレーターだらけの不毛な星ということだったからだ。

 もちろん誰も、水が流れる川や岸辺に生い茂る植物を期待していたわけではないが、少なくとも火星に夢と想像を育んできた人々は失望した。「火星は荒涼とした世界であることがわかった」。米ニューヨーク・タイムズ紙は、「死の惑星」と題した1965年7月30日付けの社説でそう論じている。「火星の地表は宇宙空間からの有害な放射線にさらされ、大気もほとんどない。生命が生まれるような大量の水が存在したこともなかったはずだ」

 同じ社説には、米国科学アカデミーがその3カ月前に発表した報告書ドラフトが覆されたとも書かれている。ドラフトには、「現在わかっている証拠をすべて考慮すると、火星で生まれた生命体が存在していると考えるのは十分合理的だ」と書かれていた。

 その後もあちこちで懐疑的な見解が続出した。物理学者のフィリップ・アベルソン氏は、マリナー4号によって「火星で有機物が生成されている、あるいは過去に生成されていた可能性は低い」証拠がもたらされたと述べた。リンドン・B・ジョンソン大統領さえ、「人間性を持つ生命は、多くの人々が考えるより貴重な存在だ」と口をはさんだ。

マリナー4号の成果

 一方、火星探査を支持する科学者たちはマリナー4号を大成功と考え、火星の画像から性急な結論が出されていることにいらだちをつのらせた。

 NASAの歴史室の説明にはこう記されている。「探査機は、火星全体のわずか1%を低い解像度で撮影したにすぎない。もし同じように地球を撮影したとしても、生命の痕跡を見つけることはできなかっただろう」

 とはいえマリナーの火星画像によって、地球外生命の可能性を訴えてきたNASAはその後の探査を推し進めることが難しくなった。1967年、アポロ計画とベトナム戦争の予算が膨らみ続けることに不満を持っていた米国議会は、火星着陸計画の予算から3000万ドルを削減した。

何世紀もの間、火星は人々の想像力をかき立ててきた。そのため、マリナー4号が撮影したクレーターだらけの淡泊な画像に人々は失望することとなった。(PHOTOGRAPH BY NASA)
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 だが、計画は終わらなかった。数年後には別のマリナー探査機が火星に送られ、ついに1976年、NASAはバイキング探査機を火星に着陸させた。しかし、着陸した探査機が微生物すら発見できなかったため、人々はふたたび興味を失った。「太陽系の惑星の中で、地球外生命が存在する確率が圧倒的に高いのが火星でした。しかし、銀河のこの一帯では、生命が存在するのは唯一地球のみであることがほぼ確実になったのです。私たちは夢から覚めました」と、バイキング計画を率いた科学者の一人であるノーマン・ホロウィッツ氏は話している。(参考記事:「火星地図200年の歴史、こんなに進化した15点」

地球外生命探査、ふたたび

 それから20年後、火星をはじめとする地球外生命の探査はふたたび人々の想像をかき立てることになる。1996年8月7日、NASAの地質学者たちが記者会見を開き、火星に由来する隕石から微細な化石が見つかったと発表した。小さな生き物にも見える隕石の電子顕微鏡画像は広く公開された(のちに生命体でないと結論づけられた)。

 この会見の1週間後、NASAはガリレオ探査機が撮影した木星の衛星エウロパの鮮明な画像を公開した。ひび割れた氷の層の下に、液体の水が存在することを示すものだ。

 これこそ画像の持つ力の産物だと言えるだろう。30年前、マリナー4号が撮影した不鮮明なモノクロ画像を受けて、ニューヨーク・タイムズ紙は火星を「死の惑星」と表現した。それが今では、エウロパや火星の隕石の高解像度画像が地球外生命の発見を予感させるものになっている。(参考記事:「ここがすごい!「マーズ2020」火星探査計画」

 これらすべては、「火星の日」に始まったマリナー4号の成功の上に築かれたものなのだ。

人類の火星への旅は、もはや夢物語ではない――。
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文=Mark Strauss/訳=鈴木和博

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