世界最大のサイ牧場の「すばらしい写真」

何を感じる? 角を採取するために1300頭を飼育、南アフリカ

2016.12.01
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世界最大の繁殖用の牧場で育てられたサイが、補助的な餌を食べるための草地を歩く。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON)
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 南アフリカ共和国のクレルクスドルプにある世界最大のサイ牧場には、世界のサイの4パーセント強に相当する1300頭が暮らしている。

 南アフリカで育った写真家のブレント・スタートン氏は言う。「自然の中で見かけるサイは、3、4頭で行動しています……こんな光景は、普通は見られません」(参考記事:「胸に刺さる、「助けの必要性」を訴える写真12点」

 牧場の所有者であるジョン・ヒューム氏は、角を採取するためにサイを繁殖させている。スタートン氏が指摘する通り、この写真に写っているサイは、よく見ると角が切り取られたばかりなのがわかる。(参考記事:「サイの悲鳴」

 サイの角は金よりも価値が高く、ヒューム氏はこれまで角の取引で生計を立ててきた。彼が所蔵している約5トン分の角は、売却すればおよそ5000万ドルの利益を生む。2009年、南アフリカではサイの角の取引を禁止する法律が可決され、ヒューム氏が貯め込んできた角は突如として価値のないものとなった。彼は政府を相手に訴訟を起こし、禁止措置は今年5月に撤回されかけたが、国が最終上訴を行っているため、現在も禁止措置は続いている。(参考記事:「サイの角の国際取引、解禁案を委員会が否決」

 サイの養殖や角の取引は、賛否両論が飛び交う複雑な問題だ。スタートン氏はこのとき、ナショナル ジオグラフィック誌の2016年10月号に掲載される特集記事の取材のために、現地を訪れた。(参考記事:「フォトギャラリー:世界最大の「サイ牧場」を撮影」

 スタートン氏がサイ牧場を初めて見たのは2012年のことだ。「まるで牛を見ているかのようです。普段見慣れたサイの姿ではありません。不思議な感じがしますね」

 スタートン氏がこの写真をものにする上でもっとも気を遣ったのは、技術的なことではなく、現実をしっかりと収めることだったという。事実、撮影には特別なアクセサリーや照明は使われなかった。「こういうシーンを撮影するときには、サイができるだけ興味深い配置になるまで待たなければなりません。シンプルな写真ですが、(より大きな)文脈において重要な1枚です」

 サイを牧場で繁殖させることに関しては、これまで激しい議論が交わされてきた。多く聞かれるのは、サイ牧場は推進派が主張するように密猟の減少に貢献するどころか、むしろ角の取引を正当化し、増加させるという意見だ。スタートン氏は、サイ牧場は「野生動物の商品化」だと考えている。また、見た目の印象も不自然だ。(参考記事:「角の取引合法化でサイを絶滅から救えるか」

「(サイ牧場は)この惑星における人間の優位性をよく表わしています。これは自然とは相容れない行為です。サイはこうした環境で生きていくのに向いていません」

 この写真は「角の需要をめぐるより大きな危機の一部」であり、そこには人間の価値観に対する批判も込められているとスタートン氏は言う。(参考記事:「サイの密猟が過去最高に、南アフリカ」

「(この写真は)シーンをうまく演出するとか、セットを組むといったこととは無縁です。大切なのは実物をとらえること、文明とは何かついての対話を生み出すことです」

文=Morgan McCloy、写真=Brent Stirton/訳=北村京子

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