新種恐竜「泥の竜」、ダイナマイトで発見

大量絶滅直前の中国に多数のオビラプトルの仲間

2016.11.15
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ぬかるみから脱出しようと、最後の瞬間までもがく羽毛恐竜のトンティアンロン・リモスス(Tongtianlong limosus)。イラストレーターによる想像図。(ILLUSTRATION BY ZHAO CHUANG)
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 中国の建設現場で岩盤を崩す工事をしていた作業員が、偶然に化石を発見したのは4年前のことだった。独特の形をした化石は羽毛恐竜の新種だったことが、このほど学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表された。

 この恐竜が生きていたのは約7200万~6600万年前。巨大な隕石衝突により、大型恐竜が大量絶滅に至る直前の時代だ。

 科学者らはこの新種を、「天国へ向かう泥だらけの竜」を意味する「トンティアンロン・リモスス」(Tongtianlong limosus)と命名した。化石が泥の中にはまり込み、脚と首を長く伸ばして、脱出しようともがいているような姿だったことから名づけられた。

「最も美しく、最も悲しい化石」

 英エジンバラ大学地球科学部のスティーブ・ブルサット氏はプレスリリースで、「これまで見てきた中で、この新種恐竜は最も美しく、最も悲しい化石の1つです」と述べている。

「ですが、ぬかるみにはまった状態の『泥だらけの竜』(マッドドラゴン)を入手できたことは幸運でもあります。小惑星が落ちてきて、一瞬で世界が変わる前の数百万年に栄えていた恐竜の骨格としては非常に優れた例です」(参考記事:「小惑星衝突「恐竜絶滅の日」に何が起きたのか」

 トンティアンロンは、オビラプトルなどを含む恐竜のグループ「オビラプトロサウルス類」に属する。このグループの恐竜は、羽毛に覆われ、小さな頭部には歯がなく鋭いくちばしを持っている。この数十年で何種類かが北米やアジアで見つかっているが、体長は1.2~6.7メートルと幅がある。(参考記事:「驚きの恐竜展を開催、もはや鳥展」

 今回の発見は、中国南部の江西省で見つかったオビラプトルの仲間としては6つ目。大きさは大型のヒツジか小型のロバほどだ。体格に加え、オビラプトロサウルス類ならでは特徴の1つが、とさかのような頭の突起。交尾相手を誘ったり、ライバルを威嚇したりするための装飾だったと考えられている。

中国で産出した「泥だらけの竜」ことトンティアンロンの骨格化石。ダイナマイトで岩盤を崩す工事中、建設作業員が発見した。(PHOTOGRAPH BY JUNCHANG LU)
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 ブルサット氏はナショナル ジオグラフィックの取材に対し、「このようなとさかは、今の一部の哺乳類にみられる『角』に似ています」と話した。「哺乳類は、種類が違えばたいてい角の形も違うため、異なる種を定義するのに役立ちます。オビラプトロサウルス類も同様です。トンティアンロンのとさかは極めてシンプルで、ドームのようなヘルメット型でした」(参考記事:「恐竜に軟組織の“トサカ”を発見」

大量絶滅の直前に多様な進化

 中国の1地域にこれほど多くのオビラプトロサウルス類がまとまって存在していたことから、恐竜時代の終盤に関して科学者たちは新たな知見が得られた。

「小惑星衝突前の数百万年の間にも、彼らは多様化していました」とブルサット氏。「この時期にも恐竜が依然として繁栄しており、新たな種を生み出し、生態系を支配していたという証です」

 当時の中国南部は、密林と多くの川や湖がある「非常に動的で変化の多い環境でした」とブルサット氏は続けた。オビラプトロサウルス類だけでなく、ティラノサウルスに近い種や、大型の草食恐竜である竜脚類、アヒルのようなくちばしをしたハドロサウルス類などが一帯を歩き回っていた。

 科学者らは、オビラプトロサウルス類の恐竜が同じ地域に多く現れたのは、適応放散の1事例ではないかと考えている。祖先を同じくする生物が、それぞれの環境に適応し、そこで繁栄できるような特徴を発達させながら、急速に多様化したということだ。(参考記事:「キーウィは氷河期に爆発的進化、氷河が群れ分断」

 例えばオビラプトロサウルス類は、ティラノサウルス・レックスやベロキラプトルに似た肉食のグループから進化した獣脚類の恐竜だ。しかし彼らは歯を失い、代わりにくちばしを獲得した。これにより、狙える獲物の種類が変わった。

「現代の鳥類については、くちばしの用途も取る餌の種類もさまざまだと分かっています」とブルサット氏は話す。「したがってオビラプトロサウルス類はおそらく雑食性であり、餌とする食料の種類も種によって異なったのでしょう」

 オビラプトロサウルス類の中には、硬くて平たいくちばしと強靭な顎の筋肉を備えた種があり、これらは貝を割って食べていたと考えられる。一方、草食性とみられる種も多い。(参考記事:「“地獄の鶏”は北米最大級の羽毛恐竜」

 トンティアンロンの上顎はくちばしの先端が目立つ凸型になっており、何かに特化して食べていたことを示唆している。だが何を食べていたのかはまだ分からないとブルサット氏は言う。

 研究者らは、今回のような状況において観察できる標本が得られたことに、非常に感謝している。「発掘地の周りを見ると、ダイナマイトの跡が分かりますし、実際、ダイナマイトによって恐竜の尾の辺りは一部が壊れてしまいました」とブルサット氏。「しかしダイナマイトを使わなければ、この化石が地上に出てくることは永遠になかったでしょう。新種が見つかるのと、そんな種が存在したことさえ知らずにいるのとではまるで違います。今回はその好例です」

文=Mark Strauss/訳=高野夏美

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