オーストラリアの巨大恐竜、南極大陸を横断か?

おデブな新種「サバンナサウルス」がもの語る、太古の意外な旅路

2016.10.25
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新たに発見されたティタノサウルス類の1種、サバンナサウルス・エリオットラム(Savannasaurus elliottorum)。標本と、他のティタノサウルスとの比較に基づき再現した。(IMAGE BY TRAVIS TISCHLER, AUSTRALIAN AGE OF DINOSAURS MUSEUM NATURAL HISTORY)
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 竜脚類と呼ばれる巨大な恐竜たちが、かつて南米からオーストラリアへ移動した。そのとき通ったのは、太古の南極大陸だった可能性があるとする論文が、学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表された。

 竜脚類は長い首を持つ植物食恐竜のグループで、史上最大級の陸上動物も含んでいる。今回の報告は、オーストラリアで新しく産出した9500万~9800万年前の竜脚類の化石に基づいたもの。そのうち1つは新属新種で、サバンナサウルス・エリオットラム(Savannasaurus elliottorum)と命名された。(参考記事:「“超ド級”の恐竜発見、体重60トン」

南米の竜脚類の子孫

 論文によると、ティタノサウルス類を含むオーストラリアの竜脚類は、約1億年前以前にはこの大陸にたどり着いておらず、他のグループの恐竜よりも到達が数千万年遅かったという。

 加えて、新たな系統分析の結果、オーストラリアの竜脚類は祖先が南米にいたことが強く示唆された。この結果が妥当なら、これらの恐竜は白亜紀の間に南米からオーストラリアへ陸路でやって来たことになる。

 白亜紀と言えば、大陸移動が現在の位置関係にかなり近くなった時代。その頃使うことができた唯一のルートが、氷のなかった南極大陸だ。太古の地球温暖化により、竜脚類にとっては快適な環境だった。

 論文の筆頭著者であるオーストラリア恐竜時代博物館の古生物学者スティーブン・ポロパット氏は、「これら竜脚類の進化を、大陸の位置変化と対照しながら図に表していくことで、これらのティタノサウルス類が移動した時期を絞り込めます」と話す。

 南極大陸でのティタノサウルス類の足取りは、新たに報告された化石なしでは明らかにならなかっただろう。オーストラリアの化石記録には長らく竜脚類が乏しかったため、これらの化石発見は非常に大きな意義があった。サバンナサウルスだけでなく、オーストラリア初の竜脚類の頭骨を含む、完全に近い化石も見つかった。こちらは、ディアマンティナサウルス・マチルダエ(Diamantinasaurus matildae)という既知の種に属する。

 英エジンバラ大学の古生物学者で、今回の研究には関わっていないスティーブン・ブリュサティ氏はEメールで、「オーストラリアは長いこと、ブラックホールのように何も出てこない不幸な場所の1つでした」とコメントした。「オーストラリアに生きていた恐竜についてはほとんど分かっておらず、そのため恐竜が地球上をどう移動したかという研究も難しいのです」(参考記事:「“南の暴君”、T・レックスの祖先種か」

 ブリュサティ氏は加えて、「新たに見つかったサバンナサウルスの骨格は、オーストラリアを闊歩していた竜脚類の姿について素晴らしいヒントを与えてくれます」と評価している。

大だるのような体に「ガニ股」?

 サバンナサウルスという名前から分かるように、この化石は2005年、オーストラリア東部の草原で見つかった。第一発見者のデビッド・エリオット氏は、オーストラリア人の牧羊業者で大の恐竜好き。オーストラリア恐竜時代博物館を設立し、国内の化石研究を盛り上げている。

 2005年の発掘では、コンクリートより硬い岩石に閉じ込められたサバンナサウルスの化石がいくつも産出した。ボランティアたちが何年もかかって岩の中から骨を取り出し、さらにポロパット氏らが何年もかけて分析した。

 エリオット氏は、「この恐竜が報告されるまでかなりの時間がかかりましたが、本当に興奮しています」とコメントを出した。「サバンナサウルスは、世界の竜脚類の中でも特異な存在です」

 すべての竜脚類と同様に、サバンナサウルスは全身の骨に空洞があり、気嚢も持っていた。巨大な骨格を軽量化しようと進化したためだ。体高は6メートル、体重15~20トンと推定される。

 一方、他の竜脚類と比べると物理的にかなり目立つ部分もある。論文の共著者、ポール・アップチャーチ氏は、サバンナサウルスは股関節部の幅が飛び抜けて広いと指摘。内陸の環境で歩き回る際の安定性と柔軟性を高めるためだろうと推測する。同氏はユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの古生物学者で、竜脚類を専門としている。(参考記事:「“内股”の肉食恐竜、巨大足跡を発見」

 ポロパット氏は、サバンナサウルスの腹部が大きかった可能性も指摘している。細身の近縁種よりもたくさんの栄養分を食物から吸収するため、消化器系が長く複雑になったのだ。

「サバンナサウルスは、発酵用の大だるのような姿だったでしょう。体の作りから言えば、首と足の長いカバといった感じです」とポロパット氏。

研究課題は山積み

 ただし、いずれの研究者も、サバンナサウルスそのものや竜脚類がオーストラリアに到達した過程について、まだまだ研究すべき課題が多いと口をそろえる。

 研究チームはすぐに化石の分析に戻るとポロパット氏は話した。またアップチャーチ氏によれば、チームは今回発表したばかりの系統図をすでに改良し始めているという。これにより、サバンナサウルスなどが生き、死に、太古の地球上に広がっていった様子を今までより正確に把握できるだろう。

「陸上動物の可能性という点で、彼らはまさに限界を超えようとしていたのです」とアップチャーチ氏は語った。(参考記事:「ブロントサウルス、本物の恐竜として復活へ」

文=Michael Greshko/訳=高野夏美

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