キーウィは氷河期に爆発的進化、氷河が群れ分断

進化スピード5倍に、ほとんどが過去百万年以内に枝分かれ

2016.09.02
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絶滅危惧種のオカリト(ローウィ)キーウィ(Apteryx rowi)。ニュージーランド南島、フランツジョセフのウェストコースト野生生物センターにて。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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 数百万年前、ニュージーランドへ小さな鳥が飛来した。新しい土地には、鳥にとって脅威となるものがほとんどなく、暮らしは快適。島にすむ鳥にありがちなことだが、天敵となる哺乳類がいなかったため、この鳥の子孫も次第に飛ぶ能力を失っていった。

 さらに鳥たちは、哺乳類がやるように枯葉をかき分けてミミズや土の中の虫を探すように進化していった。後に、ニュージーランドの象徴として愛されるようになるキーウィの祖先たちである。

 つい最近まで確認されていたキーウィの種は、オオマダラキーウィ(またはロロア)、コマダラキーウィ、そしてブラウンキーウィ(またはトコエカ)の3種のみ。どれも似たり寄ったりの外見をしている。多くの鳥は羽毛の色で見分けがつくが、夜行性のキーウィの色はどの種もほぼ同じだ。それでも、注意して観察すると違いが見えてくる。オオマダラキーウィは3種の中で最も大きく、羽毛の色は灰褐色。ブラウンキーウィはそれより少し小さく、赤みがかっている。コマダラキーウィが、3種の中では最も小さい。(参考記事:「飛べない鳥、進化の謎を解明か」

 しかし1995年、カナダのロイヤルオンタリオ博物館のアラン・ベイカー氏が、ブラウンキーウィが実は3種の別々の種だったと報告した。今では、ノースアイランドブラウン、オカリトブラウン(またはローウィ)、サザンブラウン(またはトコエカ)として知られている。彼らはいずれも見た目はそっくりだが、遺伝的に異なっている。こうして、3種とされてきたキーウィが5種に増えたが、話はそこで終わらない。

 ベイカー氏は2年前に他界し、その研究を引き継いだカナダ、トロント大学スカボロ校のジェイソン・ウィアー氏が、現生キーウィに11の遺伝的に異なる系統があるとオンライン科学誌「米国科学アカデミー紀要プラス(PNAS Plus)」に発表したのだ。また、すでに絶滅したキーウィにも6種の系統があったという。すべての系統が別々の種とまで言えるほど違いがあるかどうかはまだ明らかではないが、ウィアー氏はほとんどが亜種として分類できるだろうと考えている。いずれにしても、ウィアー氏の研究によって、キーウィは多様化の象徴と言われるガラパゴスフィンチにも匹敵するバラエティ豊かな鳥であったことが明らかとなった。(参考記事:「ダーウィンフィンチのゲノム解読が広げる種の概念」

絶滅危惧種のノースアイランドブラウンキーウィ(Apteryx mantelli)。ニュージーランド、クイーンズタウンのキーウィバードライフ公園にて。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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進化の途中の亜種?

 ウィアー氏の報告はこうだ。氏は、保護活動の一環としてベイカー氏のチームが1980年代から集めてきた203羽のキーウィの血液サンプルを使って、それぞれの個体から数百カ所のDNAを選び出して比較した。

 その結果、ノースアイランドブラウンキーウィには4つの異なる系統があり、それぞれがニュージーランド北島の別々の場所に限定して生息していたことがわかった。同様に、サザンブラウンキーウィも地理的に独立した4つのグループに分けられる。いずれも、1995年以前はひとまとめに「ブラウンキーウィ」として分類されていたものである。「このうちの一部の系統は以前から独立したものではないかと考えられていましたが、より詳しいデータが必要でした」と、ウィアー氏。「それ以外のものは、存在をほのめかすものすらありませんでした」

 これらの系統のほとんどはかなり若く、過去百万年以内に枝分かれしたものだ。最も新しいものは、11万年前に分かれたと考えられる。「多くの専門家はこれらを異なる種だと言うと思いますが、完全に独立したものではないことを示す証拠もあります」とウィアー氏。「私たちは、独立種になる過程にある亜種だと考えています」(参考記事:「哺乳類、大型化に2400万世代」

系統ごとに保護策が必要

 ウィアー氏は、キーウィの種が多様化した原因は氷河にあると考えている。氷河が拡大すると、キーウィたちは離れ離れとなり、それぞれ別の地域で独自の系統を作り上げていく。「キーウィは、地上に貼り付いている哺乳類にかなり近い鳥類です」と、オーストラリア、アデレード大学のアラン・クーパー氏は言う。空を飛べないので、氷河のような物理的障壁に直面すると、簡単に個体群が分かれてしまうのである。

 ウィアー氏は、ニュージーランドの氷河が拡大と縮小を激しく繰り返していた過去80万年の間に、キーウィの多様化がそれ以前と比べて5倍のスピードで進んだと報告している。生物が短い期間内に多数の新しい種を生み出していく「適応放散」の例としては、ガラパゴスフィンチやハワイミバエ、マラウイシクリッドといった動物群が代表的だが、それらと比較しても、キーウィの多様化の速度は目を見張るものがある。(参考記事:「鳥類は恐竜絶滅後に爆発的進化した」

 この結果はキーウィの保護活動に大変重要な意味を持つと、ニュージーランドにあるマッセー大学のイザベル・カストロ氏は言う。カストロ氏とその同僚は、一部の亜種の存在に以前から気付いており、それに合わせてキーウィの保護活動を行なってきた。「今回の研究によって確実な資料が得られたので、これを基に資金援助を申請し、受け取った資金を全ての系統に均等に配分できればと思います。また、南島に生息する種などこれまで知られていなかった種についてもっと学び、どうやって保護すべきかを考えていく必要があります」(参考記事:「ニュージーランド、2050年までに外来種を根絶へ」

 例えば、遺伝的な系統がとても似ていても、個体の単位では、交尾相手を探し、認識し、呼び寄せる能力に関わる鳴き声やにおいが異なるかもしれないと、ウィアー氏は言う。カストロ氏のチームも、くちばしの先端の器官(枯葉を探ってエサを見つけるのに使う)や尾腺(体のにおいの元になるあぶらを出す)などに違いがあることには既に気付いていたという。キーウィは、外から見ただけではなかなか違いが分からない鳥なのである。

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文=Ed Young/訳=ルーバー荒井ハンナ

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