ひもを引いてエサを食べる賢い鳥、定説覆す

高度な「知能」のタイプは生まれつき?

2016.08.22
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バルバドス原産のコクロムクドリモドキの亜種(Quiscalus lugubris fortirostris)。最近行われた実験では、2羽がひもでつるされているエサを食べられた。(Photograph by Cagan H. Sekercioglu, National Geographic)
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 橋を渡っていて、偶然橋の下にドーナツがぶらさがっていることに気づいたとしよう。とてもおいしそうで、お腹も空いている。しかし、ごちそうにありつくにはひと手間必要だ。あなたなら、ひもを引っ張ってみるだろうか?

 テレビ番組の企画の話ではない。動物の知能を試すために、科学者たちはこのようなひもを使ったテストを長いこと行ってきた。もっとも多いのは鳥類だが、カンガルーやイヌ、ネズミ、キツネザル、ゴリラなども、すべてひもに興味を示し、合格している。

 8月17日に科学誌「PLOS ONE」で発表された研究で、さらに2種類の動物がこのテストをクリアしたことが明らかになった。クロアカウソ属の一種であるバルバドスブルフィンチ(Loxigilla barbadensis)と、コクロムクドリモドキの亜種(Quiscalus lugubris fortirostris)で、どちらもカリブ海の島国、バルバドスに生息する鳥だ。(参考記事:「【動画】賢い鳥、イソップの難題をあっさり解決」

バルバドスブルフィンチとコクロムクドリモドキがひもを引っ張ってエサを食べる様子。

 この研究を率いたのは、カナダ、モントリオールにあるマギル大学の生物学者、ジャン=ニコラ・オデ氏だ。氏によれば、この2種類の鳥には高い問題解決力があることはすでにわかっていた。2015年に、都会に住むブルフィンチは田舎に住むブルフィンチよりもエサにありつくための課題を速く解けることを発表していたからだ。

「その後、どこまで複雑な問題を解けるのか調べることにしました」とオデ氏は話す。(参考記事:「動物の知力」

晩めし前のひと仕事

 ひものテストにはいくつかのバリエーションがあり、計160種類以上の哺乳類や鳥類に対して行われてきた。

 この実験は、動物にはかなり複雑な作業だと考えられている。一度ひもを引っ張るだけではだめで、引っ張ってたぐり寄せるという行為を何度か繰り返さなければ、エサにありつけないからだ。

 特に手や前足のない鳥類には難しい。しかし、くちばしでひもをくわえて引っ張り、足で押さえているあいだに、もう一度くちばしで引っ張るという方法でこの問題を解決する鳥類は多い。

 実験では、ひもでぶらさがっている種エサを引き上げることができたのは、42羽のブルフィンチのうち18羽だった。コクロムクドリモドキは、31羽のうち2羽だけが湿らせたドッグフードにありつけた。低い確率に思えるかもしれないが、2羽が成功したことは、問題解決能力が種に備わっている証であり、大きな意義があると研究は位置づけている。

鳥がひもを引っ張る様子の連続写真。(Photograph by Jean-Nicolas Audet)
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 それでも、コクロムクドリモドキの成功率が低かったことから、オデ氏のグループは続く実験にはブルフィンチを使うことにした。用心深さ、新たな物への反応(新奇性恐怖)、連想など、さらに高度な認知を必要とするテストである。

さまざまな「知能」

 驚くべきことに、研究によって明らかになったのは、ある実験に成功した鳥と別の実験に成功した鳥の間に統計的な関連性がないことだった。従来の定説とは異なり、ひもを引っ張ることができた鳥の方が、エサを食べるために箱のふたを開けたり、ある色の容器に必ずエサが入っていることを学習できる確率が高いとは限らないということだ。これらはいずれも高度な認知機能の指標となっている。

 オデ氏は、関連がないのはそれぞれの鳥の経験が異なるからではないかと考えている。バルバドスでは、都会に住む鳥はレストランからサトウキビを盗んだり、クリームの容器のふたを開けたり、スーパーマーケットから食べ物をくすねたりすることを覚えている。この実験で使ったブルフィンチはすべて野生から捕まえたものだったため、似たようなことを経験していたものもいたのではないかと同氏は言う。

 しかし、みなが似たような経験しかしていない実験室で育てられた鳥を使っても、同様に関連性がないこともわかっている。したがってオデ氏によれば、この結果からわかるのは、個々の素質はそもそも生まれつき異なるという知能の本質なのかもしれないという。(参考記事:「チンパンジーの知能、半分は遺伝」

 たとえば、「車の修理が得意な人もいれば、チェスが得意な人もいます。どちらも高度な知能が必要ですが、そのタイプは異なります」とオデ氏は言う。

類は友を呼ぶ

 行動生態学者のアン・エリソン氏は、ブルフィンチやコクロムクドリモドキがひもを引っ張れるのは驚くことではないと言う。同氏はカナダ、バンクーバーアイランド大学に所属し、ヒメコンドルがひもを引っ張ることができたという論文を発表している。しかし、コンドルが使ったのは、くちばしと舌を使ってひもを、一時的にエサをためておく素嚢(そのう)に飲み込むというまったく異なる方法だった。

 なお、エリソン氏も実験でテストを解いたヒメコンドルの能力に関連性はまったく見つけられなかった可能性があると記している。あまりにさまざまなテストを行ったためだ。サンプル数が少ないのに、いろいろやり過ぎると関連性を見つけるのは難しくなりがちだ。

 エリソン氏は今回の新しい研究には関与していないが、こういった研究は、単にある動物に知能があることがわかったということ以上に重要だと話している。人々は、人間と同じように“賢い”動物に親しみを感じやすいからだ。(参考記事:「野鳥と人が蜂蜜めぐり「共生」、科学的に解明」

「あっと驚くような方法で動物が賢いことを示せることがあります。そのときに、ただ驚かせたり楽しませたりするのではなく、動物を保護するきっかけにすることがとても重要です」とエリソン氏は話す。(参考記事:「賢いインコ「ヨウム」、アフリカで激減」

「動物が少しは人間に近いことが示せれば、動物を守りたいと思う人も増えるものですから」

捕らわれの鳥たち
詳しくはこちら(PHOTOGRAPH BY TODD FORSGREN)

文=Jason Bittel/訳=鈴木和博

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