【動画】シュモクザメ対イタチザメ、緊迫の攻防

最後まで目が離せない映像の結末は…、米国メキシコ湾で撮影

2016.07.29
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米ルイジアナ州の沖合、メキシコ湾で繰り広げられたシュモクザメとイタチザメの攻防。2016年7月17日撮影。

 釣りの旅行でメキシコ湾を訪れていた大学生が劇的な映像を撮影した。釣り針に掛かったシュモクザメを、大きなイタチザメが執拗に襲う映像だ。

 まず釣り針に掛かったシュモクザメが抵抗して泳ぐ姿が映る。するとイタチザメがやってきて、シュモクザメに噛みついた。この動画を撮影したのはライアン・ウィルシー氏。シュモクザメを釣ったのも同氏で、兄弟のアーロン氏も同行している。(参考記事:「海のハンター イタチザメに会いたい」

 この攻防は数分間続いた。最終的にイタチザメは「シュモクザメの頭のあたりをくわえ、釣り糸を切って奪っていきました」とライアン氏。「信じられない光景が撮影できました」(参考記事:「世界が注目!神子元島のシュモクザメ」

 ウィルシー氏は夏休みを利用してメキシコ湾に3日間の釣り旅行に来ており、米ルイジアナ州ベニスの50〜60キロメートル沖合で、他の釣り人たちと一緒に小魚をエサにしてマグロをねらっていた。

「アタリがきたときは、また大きなマグロが掛かったと思いました」とウィルシー氏は話す。その日、すでに2匹のマグロを釣っていたからだ。「でも、姿を見せたのはシュモクザメでした」(参考記事:「横に傾いて泳ぐ奇妙なサメを発見し、理由を解明!」

 彼らは、5分から10分ほどシュモクザメと“格闘”していたが、そこに現れたのがイタチザメだった。最初は水中の黒い影しか見えなかったとウィルシー氏は言う。

傷ついた獲物は見逃さない

 米フロリダ自然史博物館でサメの研究プログラムの指揮をとっているジョージ・バージェス氏は、やってきたのは間違いなくイタチザメ(Galeocerdo cuvier)だと話す。

 世界中の暖かい海に住むイタチザメは、「傷ついた獲物は見逃しません」とバージェス氏。「釣り針に引っ掛かってボートに引っ張られている以上に傷ついた状態にある獲物はいないでしょう」

 イタチザメは日常的に他のサメを襲う。特に傷ついたサメは格好のターゲットだ。実は、サメが「何でも食べる海のゴミ処理屋」と言われるのは、イタチザメがいるからだとバージェス氏は言う。人を襲うサメはそう多くないが、大きくて力の強いイタチザメはそのひとつに数えられる。(参考記事:「被害数は史上最多に、いま危険なサメが増えている?」

驚異の捕食者、イタチザメと泳ぐ

 バージェス氏は、シュモクザメはメキシコ湾に多く生息するアカシュモクザメ(Sphyrna lewini)だろうと話す。通常、イタチザメは元気なシュモクザメには手を出さないが、傷ついていればそれに乗じて襲うことがある。(参考記事:「「海のハンター展」に行ってみた。写真16点」

 ウィルシー氏によると、シュモクザメの体長は2メートルを少し超えるくらいに見えたが、イタチザメはそれよりも大きく、体重450キログラム以上はあったのではないかという。ただ、バージェス氏はそう断言できるほどの証拠はないと言う。なお、イタチザメは体長5.5メートルに届くこともある。

 動画には遠くに石油掘削基地が映っているが、どちらのサメもそれに引き寄せられてきたと考えられる。こういった建造物の表面には、人工岩礁と同じように、サンゴやフジツボなどが付着する。すると小魚が集まるようになり、それを食べるマグロやサメなどの大きな魚もやってくる。

 さらに、魚が針に掛かれば、動き回るし水しぶきも飛ぶ。

「こうした現象はサメを大いに刺激します。イタチザメがやって来るのもうなずけます」。さらにバージェス氏は付け加える。「サメが別のサメを食べるのは想像しにくいかもしれませんが、さほど珍しいことではありません」(参考記事:「ホホジロザメ 有名だけど、謎だらけ」

 そして皮肉なことに、シュモクザメが釣り針にかかった魚を奪うこともある。

減り続けるサメ

 世界中でサメは減り続けている。フカヒレ目当ての乱獲や、エビやマグロの漁に使う網などに巻きこまれる“混獲”が大きな原因だ。なかでもシュモクザメはとりわけ弱く危ぶまれている。絶えず泳ぎ続けていないと十分な呼吸ができず、漁具にかかるとすぐに窒息してしまうからだ。(参考記事:「大海原の王者 ヨゴレはどこへ?」

 このような脅威の中にありながら、手厚い保護が行われている米国や世界の保護区では、ゆっくりとではあるがサメの個体数は回復しつつある。(参考記事:「ガラパゴスに全面禁漁区、フカヒレ密漁の増加受け」

 ルイジアナ州では、4月1日から6月30日の間を除き、シュモクザメ釣りは合法だ。釣り船1隻につき、1回1匹のサメの持ち帰りが認められている。

 しかし、2匹のサメが水中で繰り広げる戦いを見るのは、「一生に一度の経験でしょう」とウィルシー氏は話している。(参考記事:「世界でサメを撮ってきた」

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文=Brian Clark Howard/訳=鈴木和博

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