犯罪現場の血痕から年代を知る新技術の開発に成功

DNA鑑定では不可能、科学捜査への貢献に期待

2016.07.04
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犯罪現場に残された血痕をぬぐった綿棒。こうした血痕を利用して容疑者の年代を推定する方法が発見された。(PHOTOGRAPH BY MIKE APPLETON, THE NEW YORK TIMES, REDUX)
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 このほど、米ニューヨーク州立大学オールバニ校の化学者たちが、血液サンプルのみを使って人の年代を迅速かつ正確に決定する新手法を発表した。すでに普及している簡易妊娠検査のように、近い将来、犯罪現場でこの検査を行うことで、容疑者の年代をその場で絞り込めるようになるかもしれない。

 科学誌「Analytical Chemistry」に発表された論文の共著者であるヤン・ハリメク氏は、「この手法により犯罪捜査がスピードアップし、現場で何が起きたのかがすぐに分かるようになることを期待しています」と言う。(参考記事:「真犯人を追う 科学捜査の最前線」

 通常のDNA鑑定には72時間ほどかかる上、人の年齢に関する確実な情報は得られない。そこで、ハリメク氏の研究チームは、血液中のアルカリホスファターゼ(ALP)という酵素の濃度を利用して年齢を推定できないかと考えた。(参考記事:「コロンブスのDNA鑑定」

 ALP濃度は、骨がさかんに成長している間は高いが、成人になって骨の成長が減速すると急激に低下する。この境界は一般的に女性では17歳前後、男性では18歳前後なので、ALP濃度は法律により異なる扱いを受ける少年と成人を区別するのに役立つことになる。(参考記事:「生と死の境界を科学する」

ほぼ100%の成功率

 研究チームは、容易に入手できる市販のヒト血清にALPを加えたサンプルを100種類作成した。サンプルに加えるALPの濃度は、健康な成人のALP濃度に合わせて変えた。

 ALPの濃度は男女によっても異なるため、100種類のサンプルの内訳は、若い女性の血液に相当する高濃度のALPを含むもの、より高齢の女性に相当する低濃度のALPを含むもの、若い男性の血液に相当する高濃度のALPを含むもの、より高齢の男性に相当する低濃度のALPを含むものが、それぞれ25種類ずつである。

 研究チームは、生体触媒アッセイという手法を用いて、このALPの活動によって生成する化学物質を探した。その結果、ほぼ100%の成功率で、ALPの濃度、すなわち年代を決定できた。さらに、犯罪がすぐには発覚しない場合を考え、サンプルを実験台に48時間放置してから検査をしてみたが、同じように正確な結果が得られた。

 米スケールズ生物学研究所の所長で法医学者のジョージ・シロ氏は、ハリメク氏のプロジェクトについて、研究としては良いが、実験条件が現実的でないと指摘する。多くの犯罪が発覚するのは発生から2日目より遅く、現場で血痕が見つかる頃には、ALP濃度の検査ができない状態になっている可能性がある。(参考記事:「科学を疑う」

 さらに、研究チームが実験に用いた高品質の血清サンプルは本物の血液ではないため、実際に正しい検査結果を得るには、たくさんの血液が必要な可能性もある。

 シロ氏は、「この手法を現場で使えるようになるには、もっと研究しなければなりません」と言うが、実際に使用できるようになれば、ALP濃度の検査で推定される容疑者の年代を、目や髪の色などの情報と組み合わせて捜査に役立てられるだろうと付け加えた。(参考記事:「美しき姫君の秘密 アート科学鑑定」

 ハリメク氏の研究チームは、今はまだこの手法を化学的に検討している段階であると言う。その次のステップは、血液中のさまざまな成分を調べて、性別や人種などとの関連がないかどうかを確認することだ。研究チームはまた推定できる年齢を2~3年の範囲にまで絞り込みたいと考えている。

 その日をめざして研究は続く。

真犯人を追う 科学捜査
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文=Elaina Zachos/訳=三枝小夜子

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