恐竜時代の鳥の翼、琥珀の中でありのまま保存

白亜紀末に絶滅した鳥は、現代の鳥にそっくりの翼をもっていた

2016.07.01
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1億年近く前の鳥類の翼の先端。骨、軟部組織、羽毛が琥珀の中に保存されている。元々、ペンダントに加工されて「天使の羽」と名付けられる予定だったことから、このサンプルは「天使」というニックネームが付いた。(PHOTOGRAPH BY RYAN C. MCKELLAR)
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 1億年近く前に生きた原始的な鳥の翼が、琥珀に閉じ込められた非常に保存の良い状態で見つかった。羽毛の重なり方、模様、色、配列など、現在の鳥類にそっくりの形態が、当時の鳥類にもすでに備わっていたことがわかる。

 科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」の6月28日号に論文が掲載された。白亜紀末期に絶滅した鳥類の系統、エナンティオルニス類のものである可能性が最も高いという。ナショナル ジオグラフィック協会もこの研究を支援している。(参考記事:「琥珀の中から新種の吸血バエ化石を発見」

「我を忘れるほどの発見」

 恐竜の多くが羽毛に覆われていたという事実は1990年代から一般に浸透してきた。一方、当時の鳥の羽毛に関する手がかりは、これまでのところ、炭化・圧縮された化石に残る羽毛の痕跡や、琥珀の中で化石化した個々の羽毛くらいしかなかった。(参考記事:「驚きの恐竜展を開催、もはや鳥展、米NYで」

 羽の痕跡からその並びがわかることもあるが、たいてい細部までは保存されていなかったし、色に関する情報が残っていることもまれだった。他方、琥珀に封入された1枚切りの羽毛では、その持ち主である動物までたどり着くことができなかった。

 今回、新たに見つかった翼のサンプルは2つ。それぞれ重さ1.6グラムと8.51グラムしかないが、骨の構造や羽毛群、軟部組織を備えている。論文の共著者で中国地質大学のリダ・シン氏によれば、動物の本体から抜け落ちたのではない羽毛が研究されるのは白亜紀のものとしては初めてという。

「琥珀内の羽毛を調べていて一番問題なのは、わずかな断片だったり、体から離れたものだったりして、どんな動物に生えていたのかが永遠にわからないことです」と語るのは、共著者の1人であり、カナダのロイヤルサスカチュワン博物館で無脊椎動物の古生物学を担当する学芸員、ライアン・マッケラー氏だ。「これほどのサンプルが見つかることはまずありません。我を忘れるほどの発見です」

現代の鳥類に近い姿

 X線マイクロCTによる分析で、2つのサンプルは骨の大きさと成長段階からいずれも幼鳥と判明。羽毛の特徴や骨の構造も類似していることから、同一の種に属する可能性がある。(参考記事:「エジプトの猫ミイラ、新X線技術で撮影に成功」

 どちらのサンプルも、皮膚、筋肉、かぎ爪、羽軸が確認でき、風切羽(かざきりばね)や雨覆羽(あまおおいばね)が並んでいるのも見て取れる。いずれも、配置や微小構造が現代の鳥類に近い。

 裸眼では羽毛は黒く見えるが、顕微鏡分析では風切羽はおおむね濃い茶色、雨覆羽はやや薄い茶色から銀色、白色の帯まで色の幅があることがわかった。

紛争地帯から豊富な化石

 今回の琥珀は、ミャンマーで手に入れたものだ。同国で産出する化石入りの琥珀は、ほとんどが北部のカチン州、フーコン渓谷から出ている。この渓谷は現在、カチン独立軍(KIA)の支配下にあり、50年以上にわたって州との間で断続的に紛争が続いている。

 そのため、ミャンマー産琥珀の採掘や売却はほとんど野放しの状態で、大部分が中国の消費者に渡り、宝石として、あるいは装飾を施した彫刻として珍重される。

ミャンマー、フーコン渓谷の琥珀採掘場からは白亜紀の貴重な琥珀が多く産出している。美的価値だけでなく、保存している科学的情報の点でも価値が高い。(PHOTOGRAPH BY MO LI)
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 シン氏ら調査チームが今回の研究に使ったサンプルも、カチン州の州都ミッチーナーにある有名な琥珀市場で収集したものだった。

「ミャンマー産琥珀の魅力は、多様な白亜紀の動植物が含まれていること」と、アメリカ自然史博物館の学芸員、デイビッド・グリマルディ氏は言う。「ミャンマー産琥珀のうち約7割は何も入っていませんが、残りの3割に驚異的な生物多様性を見ることができます。これほどの多様性は、全く予想していないものでした」

科学者には宝物、消費者には不純物

 ミャンマー産琥珀の多くは宝飾品や彫刻に使われるため、封じ込められた虫や植物は不純物とみなされ、研磨の段階で一部または全部が壊されることがある。しかし、羽毛が残っていた場合は珍重され、それを生かしたカッティングと研磨が施される。

 シン氏らのチームは、今回の羽毛サンプル2つのうち小さい方を「天使」と名付けた。ジュエリーデザイナーが、この琥珀から作ったペンダントに「天使の羽」という名前を付けようと考えていたからだ。研究者たちが化石を分析した際、翼の表面が琥珀の表面に出た状態で端が切れていたことから、もともと初期鳥類の全身が琥珀に閉じ込められていた可能性もある。(参考記事:「カナダで発見、琥珀から恐竜の羽毛」

 体のごく一部だったとしても、マイクロCTの分析で浮かび上がった姿にシン氏の胸は高鳴った。「1枚きりの羽ではなく、1億年近く前の翼に付いていた複数の羽が、その骨構造とともに観察できたのです」と、シン氏は振り返る。

 シン氏は、「間違いなく天使です」と誇らしげに締めくくった。(参考記事:「恐竜から鳥へ、羽はどうやってできたのか?」

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文=Kristin Romey/訳=高野夏美

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