マヤ遺跡「発見」の少年「批判のおかげで前進」

カナダの15歳少年にインタビュー、批判にひるまずメキシコ調査遠征を計画中

2016.06.04
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ウィリアム・ガドゥリー少年。マヤ文明の都市の並びが現代の星座と一致しているとする理論への批判は、かえって研究を進める役に立ったという。2016年5月、ワシントンD.C.にて撮影。(PHOTOGRAPH BY REBECCA HALE, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 今年の5月初旬、母国の外に出たことのないカナダの15歳の少年が、メキシコのジャングルの中に未知のマヤ文明の都市を発見したというニュースが世界を駆けめぐった。

 当初の報道によると、ケベック在住のウィリアム・ガドゥリー少年は、現代の星図と100以上のマヤ文明の都市の並びを対応させられることに気づいたが、1つの星座については対応する都市がなかったという。そこで、この都市に「火の口」という意味の「カーク・チ(K’aak Chi)」という名前をつけ、専門家の協力を得て、遺跡があるはずの地域の衛星画像を入手した。

 画像を分析した結果、予想どおりの場所にマヤ文明の遺跡らしき構造物が見つかった。その後に起きたことは、皆さんもよくご存知だろう。世界中のマスコミがこのニュースに飛びつき、センセーショナルな見出しをつけて報道したが、否定的な見方をする人が現れ、激しい批判が噴出、その後、沈黙が続いていた。(参考記事:「15歳少年のマヤ遺跡「発見」は間違いと専門家」

 では、沸騰する話題の渦中にあった15歳の少年に何が起きたのだろうか? 考古学コミュニティーの大半がガドゥリー少年の結論を否定したが、彼がこの研究で見せた創造性と技術力は多くの人々から賞賛された。少年は、このプロジェクトで全カナダ科学フェア(Canada-Wide Science Fair)で金メダルを受賞し、9月に開催されるEU青少年科学者コンテスト(Eurpean Unioin Contest for Young Scientists)にも招待されている。

 ナショナル ジオグラフィックは、最近、学校行事で米ワシントンD.C.を訪れたガドゥリー少年に、この研究をめぐる報道や将来の夢について話を聞くことができた。(参考記事:「知ってるようで知らないマヤ文明を解説」

ガドゥリー少年は、星座の位置を利用して、マヤ文明の都市が存在していた可能性のある場所を特定した。衛星画像では、その場所になんらかの構造物があるように見える。構造物の正体を明らかにするには、地上からのさらなる調査が必要だ。(IMAGE COURTESY OF ARMAND LAROCQUE)
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――マヤ文明の都市が現代の星座と同じ並びになるように建設されていたというあなたの理論は、科学者から多くの批判を受けましたね。ある有名なマヤ学者は「クズ科学」とまで言っていました。この批判をどう思われましたか?

かまいません。僕の研究に批判的な人がいるのは楽しいことではありませんが、批判のおかげで研究を前に進めることができましたから。

――あなたの研究がニュースになったとき、多くのジャーナリストが接触してきたのでは?

そうですね。ひっきりなしに電話がかかってきました。僕が受け取った電子メールは400通か500通ぐらいでした。そのへんの対応は母が手伝ってくれました。

――あなたの研究は多くの人々が見ているところで批判されましたが、研究は続けるのですね?

もちろん続けます。

――将来、どんな分野を専攻したいですか?

天文学か考古学かな・・・まだ分かりません。

――今回の研究成果を正式に発表して、科学的に精査してもらいたいと思いますか?

考古学者や科学者にきちんと読んでもらえるように、科学誌に研究成果を発表したいです。実は今、ある雑誌と発表について相談しているところです。

――あなたは3年前からこのプロジェクトに取り組んでいますが、次は何をすることになるのでしょうか?

この遺跡の存在を証明するために、メキシコに行って確認してこなければなりません。たぶん、この夏にも。(参考記事:「中米ホンジュラス 密林に眠る伝説の都市」

――遠征期間はどのくらいになると思いますか?

2週間ぐらいでしょうか。専門家ではないので、よく分かりません。

――この研究に必要な資金はどのくらいでしょうか?

約10万ドル(約1000万円)です。

――あなたはコンピューターソフトと衛星画像を使って、カナダでこの研究を行いましたね。実際にマヤの遺跡を訪れたことはありますか?

去年の夏、ユカタン半島のエクバランとチチェン・イツァに行きました。期待していた以上にすばらしい遺跡でした。(参考記事:「ユカタン半島のマヤ遺跡調査、聖なる泉とピラミッドの謎」

――ほとんどの科学者は、昔の人は今とは違う星座を見ていたと言いますが、あなたはやはり、世界中の人々が、何千年も何万年も前から、私たちと同じパターンの星座を見てきたと確信しているわけですね?

そうです。人間は皆、同じパターンを見てきました。オリオン座に対応する場所にはアステカの都市があり、シリウスに対応する場所にはインカの遺跡があります。

――あなたが好きな星座は?

カシオペア座です。僕のイニシャル(W)と同じ形をしているので。

――私たちがあなたの記事を掲載したとき、科学者たちがあなたの理論をこき下ろすのは単に嫉妬しているからだというコメントが読者からたくさん届きました。あなたはどう思われますか?

僕もそう思います。科学者は、ときに新しいアイデアを怖がります。自分たちが確立した理論が批判されるのを恐れているのです。

――科学者は、まだ学位を取得していない人々が提唱する科学的アイデアに、もっと耳を傾けるべきだと考えているわけですね。

そのとおり。科学者にはもっとオープンな心を持ち、ほかの人のアイデアにも耳を傾けてもらいたいですね。(参考記事:2015年3月号特集「科学を疑う」

――一流の科学者から研究を批判されている学生たちのために一言。

自分の限界に挑み、決してあきらめないでください。夢を追いかけて!

――ナショナル ジオグラフィック協会が支援するマヤ考古学者のフランシスコ・エストラーダ=ベリ氏が、あなたと一緒にジャングルに行き、マヤ文明の遺跡を探したいと言っています。彼の招待を受けますか?

喜んで!

文=Kristin Romey/訳=三枝小夜子

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