コガシラネズミイルカが60頭に激減、絶滅のおそれ

高級食材の大型魚を狙った違法な刺し網漁が主な原因

2016.05.19
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絶滅の危機にあるコガシラネズミイルカ。このままでは、ステラーカイギュウやヨウスコウカワイルカに続き、近代以降に絶滅する5番目の海洋哺乳類となりかねない。(Photograph by FLIP NICKLIN, MINDEN PICTURES/NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 世界で最も小さく、最も希少なネズミイルカであるコガシラネズミイルカが、もはや絶滅寸前の状態に追い込まれている。メキシコ政府が5月13日に発表した報告によると、その生息数はすでに、わずか60頭まで減少しているという。

 コガシラネズミイルカの生息数は、2014年の97頭から2年間で約4割も減ってしまった。主な原因となっているのが、トトアバという大型魚を目当てに行われる違法な漁だ。トトアバ自体も絶滅危惧種だが、浮き袋がアジアで高級食材として珍重され、その捕獲には使用が禁じられている刺し網が用いられる。この刺し網の網目がちょうど、コガシラネズミイルカが混獲されやすい大きさなのだ。網にかかったイルカは溺死してしまう。(参考記事:「コガシラネズミイルカ、絶滅寸前」

世界最小のネズミイルカを救えるか

 メキシコのカリフォルニア湾北部にのみ生息するこのイルカを絶滅から救うため、これまでに多額の費用をかけてさまざまな取り組みが行われてきた。たとえば、同海域での刺し網の使用禁止、メキシコの政府と軍と環境保護活動家による監視活動、地元漁師への漁の自粛要請と補償金の支払いといった対策が、これまでに実施されてきた。

 しかし、今回発表された60頭という数字は、そうした努力がまだ十分でないことを示している。人前に姿を見せずひっそりと生きるコガシラネズミイルカを守るため、世界自然保護基金(WWF)メキシコ支部では懸命に活動を続けてきた。

「トトアバ漁を阻止してコガシラネズミイルカを救おうと奮闘してきましたが、私たちは今、その戦いに敗れつつあります」。WWFメキシコ支部のオマール・ビダル氏は、プレスリリースの中でそう述べている。「それでも、今ならまだコガシラネズミイルカを救えるでしょう。これが最後のチャンスです」

 ビダル氏は、漁の規制強化と禁漁区の拡大がただちに必要だと訴えるとともに、コガシラネズミイルカに無害な漁法を探る取り組みへの支援を強め、早急に実現させるべきだと言う。さらにメキシコ、米国、中国が協力し、トトアバの密漁に対する厳重な取り締まりを早急に実施すべきだと述べている。(参考記事:「ガラパゴスに全面禁漁区、フカヒレ密漁の増加受け」

「近代における5番目の海洋哺乳類の絶滅が、現実に起きてしまうかもしれません。私たちは今、その瀬戸際にいるのです」(参考記事:「ワールド・イズ・ブルー 失われる生物多様性」

This story was produced by National Geographic’s Special Investigations Unit, which focuses on wildlife crime and is made possible by grants from the BAND Foundation and the Woodtiger Fund. Read more stories from the SIU on Wildlife Watch. Send tips, feedback, and story ideas to ngwildlife@ngs.org.

文=Rachael Bale/訳=北村京子

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