謎のウロコ地形の正体はミミズの糞の山、南米

南米の湿地に無数の小山、科学者が成分を分析

2016.05.17
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南米の湿地帯を埋め尽くす謎の塚「スラレス」を上空から撮影した。(PHOTOGRAPH BY JOSÉ IRIARTE)
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 南米コロンビアとベネズエラの熱帯湿地に、「スラレス(surales)」と呼ばれる謎の地形がある。空から見るとウロコ模様、近くから見るとこんもりとした小さな塚。高さは30センチのものから2メートルを超えるものまで、無数に並んでいる。

 今回、この謎めいた塚の正体を研究者らが突き止め、5月11日に科学誌『PLOS ONE』に論文を発表した。なんとミミズの糞の山である可能性が高いという。(参考記事:「アマゾンの不思議な構造物「シルクヘンジ」、正体が判明」

謎の地形「スラレス」

「スラレスの存在は以前から知られていましたが、その正体や詳しい場所については誰も何も知りませんでした」と、ミミズを専門とする生物学者で、土壌科学者でもあるアン・ツァンゲーレ氏は言う。彼女自身、数年前に科学者仲間から聞いたのが最初だった。

 モンペリエ大学(フランス)とミュンヘン工科大学(ドイツ)に所属する同氏の研究チームは、古書の不明瞭な記述を検討したほか、グーグル・アースを使って探したりもした。

 こうして手に入れた情報をもとに、彼らは2012年に飛行機や車を使って調査を開始。特定の季節に洪水が起きて湿地になる「季節湿地」を7万平方キロにもわたって捜索した末に、何千ものスラレスが点在するのを特定した。

地上から見たスラレス。塚の周囲には深い溝があり、水がたまっている。(PHOTOGRAPH BY JOSE IRIARTE)
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 研究チームはスラレスの化学分析を行い、そこにすむ動物たちを調べた結果、塚を造ったのはおそらくアンジオルリヌス(Andiorrhinus)属のミミズだろうという結論に至った。

 北米のビーバーやアフリカのシロアリのように巨大な構造物を造る動物はほかにもいるが、ミミズが造る塚は南米にしか見られないという。(参考記事:「巨大なアリ塚を築くシロアリの集合精神」

糞が積もって塚になる

 マリア・ヘスス・ブリオネス氏は、スペインのビゴ大学の生物学者で、ミミズを専門にしているが、数年前に世界の土壌生物をまとめる『グローバル土壌生物多様性アトラス(Global Soil Biodoversity Atlas)』の作成に着手したときに初めて、この奇妙な塚について耳にしたという。

「私は、この塚はもともと農民によって造られたと聞いていました」とブリオネス氏。「人間が塚を放棄した後に、シロアリ、アリ、ミミズなどの土壌動物がすみついて維持してきたのだろうと思っていました」

アンジオルリヌス属のミミズを腕に乗せる人。研究によると、このミミズが巨大なスラレスを造り上げたという。(PHOTOGRAPH BY DOYLE MCKEY )
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 南米の先住民はしばしば大型の土塁を造り、大規模に農業を行ったり環境を変えたりしてきたため、ツァンゲーレ氏の研究は、小さなこぶから大きな塔まで、昔の人々が残した構造物を除外することから始まった。「スラレスは、ミミズが作ったとは思えない大きさです。隣に立つと自分が小さくなったように感じます」とツァンゲーレ氏は言う。(参考記事:「謎の古代文明の遺跡を中米で複数発見、マヤとは別」

 共同研究者である英エクセター大学の考古学者ホセ・イリアルテ氏は、土壌中の植物化石の小さな粒子を分析して、この千年間は誰も耕作を行っていないことを示した。

 さらなる分析により、ミミズの糞がスラレスの土壌のかなりの部分を占めていることが明らかになった。ミミズは1つの場所で暮らす傾向があるため、同じ場所に栄養豊富な糞をすることになる。

 ツァンゲーレ氏によると、時間の経過とともにミミズの糞は人間の背丈より高く積み上がり、やがて不安定になって倒壊するという。非常に近いところに2つの塚が造られた場合には、合体して1つの塚になる。スラレスにはほかの種類のミミズもいたが、アンジオルリヌス属のミミズが最も多いため、塚を築いたのは彼らだろうと結論づけた。(参考記事:「【動画】ネットを戦慄させたミドリヒモムシとは」

小さな生物の大きな仕事

 40年にわたってミミズを研究してきたピエール・マリー・キュリー大学(フランス)のパトリック・ラヴェル氏は言う。「森林を成長させるためには、目に見えないところで土壌生物どうしが緊密に協力し合うことが必要です」

 ミミズの糞の塚は、土壌に含まれる水分量を変化させ、その場所に生育できる植物の種類に影響を及ぼす点で、生態系において重要な役割を担っているとラヴェル氏。彼は今回の研究には関与していないが、「土壌の理解と管理にとって大きな意義のある、重要な研究です」と語った。(参考記事:「農業を変えるか、土壌微生物の可能性」

文=Carrie Arnold/訳=三枝小夜子

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