捨てられる食材で5000人に食事、米NYで

世界の食料の3分の1がむだに捨てられている

2016.05.13
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ニューヨーク市のユニオン・スクエア・パークで開催されたイベント「5000人へ食料を」でふるまわれた料理を楽しむ人々。新鮮で高品質であるにもかかわらず廃棄される運命にあった食材だけを使って調理されたごちそうを、数千人の一般市民が無料で味わった。(PHOTOGRAPH BY TIMOTHY A. CLARY, AFP/GETTY)
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 絶品ラタトゥイユに、ピーマンとニンジンのピクルス、端野菜と1010個の卵で作ったタルト。米国ニューヨークの公園、ユニオン・スクエアで5月10日、数千人の市民にグルメ料理がふるまわれた。

 だが、これはただの無料ランチではない。使用された食材は全て、卸業者や農場から出た余剰食料や、傷があったり形が悪いというだけで店で売ることのできない野菜などだ。

「Feeding the 5000(5000人へ食料を) 」と銘打ったイベントを今回ニューヨークで主催したのは、英国の非営利団体「フィードバック」だ。食料のムダ捨てを減らすために活動し、廃棄される運命にあった食材だけを使った料理をふるまうイベントを各地で開催している。

全米で廃棄されている膨大な食料と比べれば

 会場には、ビジネスマン、近所の住人、学生、ホームレスが途切れることなくやってきては、ボランティアの手から料理の入った器を次々に受け取っていく。器は、使用後に堆肥に混ぜて再利用できる素材で作られたものだ。人々は立ったまま料理を口に運びながら、調理に協力した地元シェフたちとの会話を楽しんだり、特設ステージでの講演や料理の実演に見入っていた。また、非営利団体「シティ・ハーベスト」の協力により、主にホームレスや低所得者へ食事の支援を行う近隣のフードバンクやスープキッチンへさらに5000人分の食事が届けられた。

 横断幕のかかったステージでは、野菜ジュースの搾りカスで作ったハンバーグや、チーズ製造の際に出る乳清のカクテル、ラムハツのひき肉とリーキのフェットチーネ、熟しすぎた冷凍バナナとはちみつのデザートといった料理の実演が行われた。デザートを試食した若い女性は「とても甘い」と感想を述べた。(参考記事:「肉を食べるジレンマ」

 使用された食材は、ジャガイモ、玉ねぎ、ナス、ニンジン、ホウレンソウなど数千キロ。しかし、それでも全米で廃棄されているおびただしい量の食料と比べれば微々たるものだ。米国では、年間6300万トンの食料が無駄に捨てられている。これは、全生産量の40%に相当する。世界的に見れば、食料全体の3分の1以上にあたる約13億トンが、農場から食卓へ届くまでの間に食べられることなく失われ、経済損失は年間9400億ドルにも上る。その一方で、8億500万人が恒常的な栄養不足に苦しんでいる。(参考記事:「世界8億500万人が栄養不足、原因は食料へのアクセス」

環境にも大きな負荷

 食料を廃棄すれば、それを育て生産するのに使われた水、燃料、農薬、土地、そして労働まで、あらゆる資源が無駄になる。収穫、加工、箱詰め、配送までされて人の口に入らない食料のために、33億トンを超える二酸化炭素が排出されている。国連によると、もし食料廃棄をひとつの国と考えれば、その温室効果ガスの排出量は中国、米国に次いで世界第3位となる。

 2015年、国連、米農務省、米環境保護庁は、廃棄食料を2030年までに半減させるという目標を掲げた。そして2016年初めには、同じ目標を目指して企業代表、政府高官、基金、研究グループ、慈善団体の役員30人が「チャンピオンズ12.3」と銘打ったキャンペーンを発足させた。

「Feeding the 5000」のグローバル・キャンペーン・マネージャーを務めるドミニカ・ジャロス氏は「これだけの団体が集まれば、変化を起こすには十分です」と語る。「長年の間、それぞれ異なる分野で活動してきたグループですが、食料廃棄という問題が彼らをつなげたのです。誰もがこの問題を正したいと思っています」

 フィードバックでは、天然資源保護協議会や生物多様性センターなど40以上の団体およびシェフとパートナーシップを組み、今回のようなイベントを通して、廃棄食料でもおいしく食べられることを人々に伝えていくとともに、業界主導による4つの具体的な解決法に焦点を当てて取り組んでいる。第一に、消費期限の表示法の改革を求めていくこと。米国では表示の仕方が複数あって、その意味をよく理解せずに、十分に食べられるものでも捨ててしまう消費者が多い。そのほか、スーパーマーケットで売る食品の見栄えの基準を下げること、廃棄する食品の量を正確に量って報告すること、余剰食料をもっと慈善団体への寄付に回すようにすることである。

 欧米では、消費者レベルで捨てられる量が最も多いため、多くの団体は現在そこに焦点を当てて活動しているが、フィードバックはそれ以前の供給プロセスの段階での廃棄削減に取り組んでいる。例えば、農家は出荷直前に注文をキャンセルされたり、契約をさかのぼって修正されるなどして大量の野菜や果物の廃棄を余儀なくされており、このような不公平な商取引をやめるよう訴えている。(参考記事:「コメの生産量と同量の食品が日本で廃棄されている」

流通業者に変化

 現状を知って危機感を抱いた一般消費者の後押しもあって、フィードバックの活動は成果を見せ始めている。英国の大手小売販売店テスコは、これまで両端を切り落としていたサヤインゲンのヘタだけを切り落として販売するようになり、廃棄量の30%削減に成功した。他にも、欧州各国や米国のスーパーに対し、農家の農産物を全て買い取るか、全て売りさばくことができない場合には、他の卸先を開拓するよう農家を支援すべきだと訴えている。例えば、果物や野菜を冷凍する会社や、絞ってジュースに加工する工場、弁当業者などだ。

「多くの人々が飢えている一方で、食料をゴミとして処分したり、農家の人々の作った作物を無駄にするような行為はもはや許されるべきではないということを、スーパーマーケットは認識すべきです」と、フィードバックの創立者トリストラム・スチュアート氏は言う。(参考記事:インタビュー:トリストラム・スチュアート「世界の食料の3分の1が廃棄されている理由」

 2009年以来、フィードバックは欧州を中心に「Feeding the 5000」のイベントを30回以上開催している。

【2016年3月号特集】捨てないで食べちゃおう

文=Elizabeth Royte/訳=ルーバー荒井ハンナ

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