15歳少年のマヤ遺跡「発見」は間違いと専門家

現代の星図と地図を見比べても古代の遺跡は発見できない

2016.05.12
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カナダ人の少年が、星座の位置を利用してマヤ文明の失われた都市の位置を推定し、グーグルアースの画像(左)と衛星画像(右)に遺跡のような構造物が写っていることを確認した。研究者たちは、それがマヤ文明の建造物なのか、放棄されたトウモロコシ畑なのかを議論している。(SATELLITE IMAGE COURTESY OF CANADIAN SPACE AGENCY)
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 カナダ人の少年が、中米のジャングルに足を踏み入れることなくマヤ文明の失われた都市を発見したという報道は、世界中の人々を驚嘆させた。

 しかし、残念ながらこの「発見」は、悪気はないが正しくもない空想の産物であったようだ。背景にあるのは、現代の西洋人が受ける教育と古代文明とでは、世界を見る方法がまったく違うことだ。(参考記事:「謎の古代文明の遺跡を中米で複数発見、マヤとは別」

マヤ都市の並びと星図が「一致」

 もとの報道はこうだ。

 15歳のウィリアム・ガドゥリー少年は、マヤ文明の20個以上の星座を、地図に記載されているマヤ文明の都市の並びと対応させることができた。都市の並びは完全に星図と一致していたが、カラクムル遺跡とエル・ミラドール遺跡を含む1つの星座については足りない部分があったという。(参考記事:「知ってるようで知らないマヤ文明」

 そこでガドゥリー少年は、対応する星の位置にもとづき、メキシコのカンペチェ州の特定の場所に未知の遺跡があるはずだと考えた。カナダ、ニューブランズウィック大学の名誉助教アルマン・ラロック氏が、その場所の衛星画像を分析すると、1つのピラミッドと数十個の建造物の存在が明らかになったという。

カナダ宇宙庁のプロジェクトマネジャーであるダニエル・デ・ライル氏と一緒に同庁の衛星画像を吟味する15歳のウィリアム・ガドゥリー少年。(PHOTOGRAPH COURTESY OF CANADIAN SPACE AGENCY)
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 ガドゥリー少年はこの都市に「火の口」という意味の「カーク・チ(K’aak Chi)」という名前をつけたが、早くも複数の研究者が、少年の発見に対して否定的な意見を表明している。

 現時点では、ガドゥリー少年もラロック氏も、インタビューの申し込みに対して返答していない。

マヤ文明に西洋の地図を押し付ける過ち

 異を唱える人物の一人が、「天文考古学の父」として広く知られる天文学者であり人類学者である、アンソニー・アヴェニ氏。彼に言わせれば、現代の星図と古代人が作り上げた多数の構造物(マヤ文明の都市にせよナスカの地上絵にせよ)を1対1で対応づけようとするのは、空想的な創作行為でしかない。

「私たちが知っているような、現実の距離を一定の縮尺で表現する『地図』の概念は、主に近代の西洋のものなのです」とアヴェニ氏は言う。彼によると、人類が地上に建造物を配置する際に宇宙を意識することは「確かにある」が、ガドゥリー少年が主張するほどの精度ではないという。

 また、マヤ人は黄道(太陽の通り道)に13の星座を見ていたことが分かっているが、その星座を何に見立て、星々をどのように結んでいたかについては、複数の異なる理論がある。

「ガドゥリー君の発見は、いかにも西洋的な空想です。私たちは、雲の形からさまざまなものを連想するように、星図を見てさまざまなものを連想するのです」とアヴェニ氏は言う。とはいえ彼は、完全なデータを見るまでは、少年の仮説を頭から否定することはできないと考えている。

 アヴェニ氏は、少年の想像力と独創性を高く評価している。「非常に聡明で、自分の考えを強く持っている少年だと思います。研究のために大学の奨学金を獲得できればいいですね」

画像に写っているものの正体

 一部のマスコミは、衛星画像やグーグルアース(Google Earth)の画像に写っている遺跡らしきものの1つは、放棄されたトウモロコシ畑であるとしてすぐさま否定した。しかし、ナショナル ジオグラフィック協会が支援するマヤ文明考古学と遠隔探査の専門家、フランシスコ・エストラーダ=ベリ氏は、現在入手できる画像は、どちらの説についても決定的な証拠にはならないと言う。

「私の目には、ピラミッドのようなものは何も見えません。ジャングルの中の空き地など、いろいろな可能性が考えられます。私に見えるのは、林冠(木々の枝葉が茂っている部分)の中にある多角形だけです」

 衛星画像は、林冠の中にある奇妙な形を示すことはできるが、実際に地上に何があるのか推定するためには、ライダー(LiDAR)などの遠隔探査装置を使って、植物の下にあるものを「見る」必要がある。(参考記事:「LiDARで発見、ホンジュラスの密林に眠る伝説の都市」

 エストラーダ=ベリ氏は、「ガドゥリー君がライダーの画像を利用できれば、いくつかの領域を遺跡候補から除外できただけでなく、もっと小さいマヤ遺跡の位置を確認することもできたでしょう」と言う。

 彼はまた、ガドゥリー少年が偶然マヤ遺跡を発見した可能性も大いにあると付け加える。
「マヤ文明の未発見の遺跡はまだ何百とあり、あちこちに散らばっているからです」と彼は言う。「地図上の1点に指を置いたとき、その場所に偶然マヤの遺跡が存在している確率はかなり高いのです」

少年へのエール

 ガドゥリー少年の研究プロジェクトには、「天界の生まれ(Born of Heaven)」というタイトルがついている。彼は、この研究で地元の科学フェアで一等賞をとった後、2014年の科学会議で発表を行った。彼のプレゼンテーションはカナダ宇宙庁の目にとまり、衛星画像を提供された。(参考記事:「空から地球を診断する」

 カナダ宇宙庁のプロジェクトマネジャーであるダニエル・デ・ライル氏は、「彼には応援が必要だと思ったので、衛星画像をいくつか提供しました。研究自体は彼が独力で行いました」と言う。

「彼はまだ15歳で、前途には明るい未来が広がっています」とデ・ライル氏は言う。「将来、私が彼のために仕事をする日がくるかもしれません」

 エストラーダ=ベリ氏もガドゥリー少年の努力を称賛する。「彼が独自の理論を考案し、最先端の技術を用いて検証を行ったのは、すばらしいことです。彼と一緒にジャングルに行き、マヤ文明の遺跡を探したいですね」(参考記事:「21世紀中に解明されそうな古代ミステリー7つ」

 ガドゥリー少年が考古学者の招待を受け入れたら、皆さんにもお知らせするつもりだ。

文=Kristin Romey/訳=三枝小夜子

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