【動画】ザトウクジラが桟橋前で大口開け食事 

泡で追い込み食事をするバブルネット・フィーディングを超至近距離で撮影

2016.05.11
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【動画】ザトウクジラが狭いマリーナに出没し、大口を開けて食事

 静かな湾内の桟橋の前。海から泡が浮き上がってきたかと思うと、1頭のザトウクジラが水面に顔を出し、巨大な口を開けた。

 漁師のサイ・ウィリアムズ氏がこの場面を撮影したのは、2016年5月2日。場所は米国アラスカ州南西部の都市ケチカンにあるマリーナだ。同氏は自分の船の下に大きな生きものがいることに気づき、その動きを追っていたところ、海面に泡が浮いてきてクジラが出現したという。桟橋から1メートルも離れていない至近距離で、周りには船が停泊し、見物人もいたなかでの出来事だった。

「ハラハラしました。ものすごく大きいので、船か桟橋にぶつかるかと思いました」と、ウィリアムズ氏は語る。

 ビデオカメラはクジラの姿を鮮明にとらえた。大きな下顎にフジツボがついているのさえ見てとれる。

「こんな桟橋のすぐそばにザトウクジラが現れるとは、驚きです」と語るのは、米オレゴン州立大学教授の海洋生態学者リー・トレス氏。「ザトウクジラの個体数は確かに増加しています。新しい餌場を探していたのか、あるいは、ほかのクジラとの競争を避けようとしてここに来たのかもしれません」

 込み合ったマリーナは大型動物にとって危険な場所ではあるが、小さな魚が活動したり、身を隠したりするにはもってこいの場所だ。

特徴的な生態

 動画のクジラは、狭い場所にもかかわらず、いわゆるバブルネット・フィーディングという方法で狩りをしているようだと、トレス氏は言う。(参考記事:「雄大なザトウクジラの狩り」

 基本的にクジラが餌にするのはオキアミや小魚で、狩りは単独のときもあれば集団で行うときもある。獲物の群れの周りに円を描くように泡を吐き出し、時に鳴き声で混乱させながら囲い込む。そして、獲物を海面へと追い込むと、最後に急浮上して、できるだけたくさんのみ込むのだ。(参考記事:「ザトウクジラの狩りは“文化”か?」

 ザトウクジラ(Megaptera novaeangliae)はヒゲクジラの一種で、体長は12~16メートル、体重は最大で36トンにもなる。頻繁に海面に出て潮を吹く習性があるため、クジラのなかでも最も有名で、ホエール・ウォッチングの対象になることも多い。

 さらにザトウクジラは、複雑な歌をうたうことでも知られている。うなるような声や甲高い声といったさまざまな鳴き声を使い、延々と何時間も歌い続けるのだ。しかし、その目的はまだよくわかっていない。(参考記事:「ザトウクジラが異例の低い声、メスの歌か」

依然危うい生息環境

 その姿は世界各地で見られ、夏は南極や北極の海で餌を捕ることが多く、冬は熱帯や亜熱帯の海に移動し繁殖する。

 商業捕鯨が禁止される以前の1960年代や70年代には、乱獲によって絶滅しかけたこともあったが、現在、個体数は推定8万頭まで回復してきている。まだ全盛期の数字には及ばないが、回復は順調で、特に北太平洋で数を増やしていると、トレス氏は語る。しかし、ザトウクジラは依然、漁具にからまったり、船に衝突したりするなどの危険にさらされ、騒音や海洋汚染に生息環境を荒らされているのが実情だ。

「クジラを見るたびに畏敬の念に打たれますが、これほど間近に現れるのはすごいことです」と、ウィリアムズ氏は語る。

 トレス氏はウィリアムズ氏の言葉にうなずきつつも、クジラには近づきすぎないようにと、付け加えた。「クジラが狩りを続けるよう、邪魔をせず、見て楽しむだけにしてください」

文=Brian Clark Howard/訳=倉田真木

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