北朝鮮の地下鉄に乗ってみた 写真13点

まるで核シェルターの美術館!写真とともにレポート

2016.05.02
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復興駅に到着する電車。2010年以前外国人の入場が許されていたのはわずか2駅のみだった。そのうちのひとつである復興駅には、とりわけ豪華な装飾が施されている。(PHOTOGRAPH BY ELLIOTT DAVIES)
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 北朝鮮の平壌を訪れるのはきわめて困難だ。だが、その潔癖なまでに清潔で、熱狂的なまでに愛国的で、豪華絢爛に飾り立てられた地下鉄が、外国人観光客へ向けて新たに開放されることになった。(参考記事:「北朝鮮 見え隠れする素顔」

 以前は、平壌にある17の地下鉄の駅のうち、外国人の入場が許されていたのはわずか2駅だけだった。そのため、地下鉄そのものが良くできた見せかけの舞台装置にすぎず、衣装を着た役者が通勤客のふりをしているだけではないかという憶測が飛び交っていた。しかし、2015年の秋に全駅が初めて観光客へ開放されることになり、政府は外国人向けのツアーを許可した。ツアーに参加したオーストラリア人の旅行ブロガーでソフトウェア開発者のエリオット・デイビス氏が目にしたのは、「北朝鮮の大掛かりな美術館のようであり、その理想をすべて込めたもの」だったと感想を語っている。「あそこまで清潔だとは思っていませんでした。こう言っては何ですが、これまで見てきた中で最も美しい地下鉄だったと思います」(参考記事:「秘密主義の国、北朝鮮の基本情報」

1945年に朝鮮が日本から独立したことを記念する壁画の前に立つ駅員。(PHOTOGRAPH BY ELLIOTT DAVIES)
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 古風な拡声器から流れる愛国歌を聞きながら、街の中心にあるオフィス街の下、通勤客は地下96メートルをエスカレーターで降り、重い鋼鉄の扉を通り抜ける。核攻撃を受けた場合に、地下鉄を核シェルターとして使用するための扉だ。各駅名は地名ではなく、社会主義を象徴する決まり文句が採用され、金箔で覆われた金日成の像、精巧なモザイクの壁画、北朝鮮の軍事的勝利を記念する青銅の飾り板、天井から下がるちょっと変わったシャンデリアなどで構内は飾り立てられている。

「どの地下鉄の駅も、政府が本当に北朝鮮の国民に聞かせたいこと、信じ込ませたいことをほぼすべて網羅しています」と、デイビス氏は語る。「観光客にも良い宣伝になっています。北朝鮮への旅行は最初から最後まで政治的なものでした。旅行を終えた外国人が、『北朝鮮って、そんなに悪くないよ』という感想を持つことを期待しているのです」(参考記事:「北朝鮮の聖なる火山「白頭山」に噴火の兆候」

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最高指導者金日成と金正日親子の写真が全車両に飾られ、車内のスピーカーからは愛国歌が流れている。

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統一駅の装飾のテーマはすべて朝鮮半島再統一への希望だ。

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平壌の地下鉄の深さは世界有数。地上からホームまではエスカレーターで4分かかる。

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栄光駅には、白頭山の前に立つ金正日の壁画がある。1994~2011年まで実質的に最高指導者の座に就いていた金正日は、ここ白頭山で誕生したと北朝鮮の政府メディアは主張しているが、旧ソ連の歴史文献には、誕生したのはロシアだったとある。

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国家の未来への夢を描いた統一駅の壁画。日本からの独立運動を率いた金日成総書記が太陽として描かれ、北朝鮮の国旗の下、南北朝鮮の統一を果たした喜びに沸く国民を見守っているという構図。

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他の観光客と一緒に地下鉄に乗ったデイビス氏は、「通勤客はみなとても礼儀正しく、高齢者だけでなく私たち外国人にまで席を譲ってくれました。これが普通のことなのか、それとも私たちだけへしてくれたことなのかは分かりませんが」と話す。

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光復駅のひと際豪華な金日成像。照明が落とされているのは、像を引き立たせるためだろうか。「正直言って、かなり不気味な光景でした」と、デイビス氏は振り返る。

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駅のホームには、額に入れられた政府発行の新聞が掲示されている。通勤客は、電車を待つ間ここでニュースを読む。

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平壌の地下鉄の壁画は、明るく愛国心にあふれている。この壁画には、花火とスポットライトの下で、熱狂する国民へ手を振る金日成の姿が描かれている。

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「平壌の地下鉄では、走ったり、押したり、笑ったり、笑顔を見せる乗客もいませんでした」と、デイビス氏は語る。「おしゃべりすら聞こえません」。もちろん、スマホでゲームなど論外だ。2014年の時点で、北朝鮮での携帯電話所有率はわずか10%ほどだった。

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黄金原駅の壁画には、フルーツと野菜が描かれている。「私たちには何でもない当たり前のものでも、北朝鮮の人々にとっては国家の自立を象徴するものであり、非常に大切な存在なのです」と、デイビス氏。

北朝鮮、知られざる日常の娯楽 写真12点
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(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER, NATIONAL GEOGRAPHIC)

文=Melody Rowell/写真ギャラリー=Elliott Davies/訳=ルーバー荒井ハンナ

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