水族館脱走タコ、愛嬌ある性格で人気の若者だった

「外の世界を知りたかったのでしょう。そういう性格でした」と館長

2016.04.19
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ニュージーランド国立水族館にいた頃のタコの「インキー」。好奇心旺盛な若者で、スタッフの人気者だったという。(PHOTOGRAPH COURTESY NATIONAL AQUARIUM OF NEW ZEALAND)
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 今年初め、ニュージーランド国立水族館で飼育されていたタコが、自由を求めて水槽から抜け出し、排水管を通って海に逃げた。

 オスのタコの「インキー」は、夜の間に水槽の外に出て、床の上を這い、海に続く細いパイプに滑り込んだ。

 ニュージーランド国立水族館のロブ・ヤレル館長は、「彼は研究熱心で、自分の限界に挑戦するのが好きでした」と言う。

 インキーが一夜にして脱走したことにヤレル氏らが気づいたのは3カ月前のことだった。残された水の跡から、脱走ルートは容易に特定できた。インキーは、もう1匹のタコと一緒の水槽に入れられていたが、その蓋をずらすことに成功していた。

 ヤレル氏によると、インキーは成体の大きさにはなっていたが、完全な成体ではなかったという。インキーが脱走してからしばらく経つが、最近、この事件が報道されるとたちまち世界中で話題になり、水族館のスタッフを驚かせた。(参考記事:「タコが写真を撮る動画が話題に」

「ローカルニュース向けの話題だとは思いましたが、世界中からこんなに注目されるとは予想していませんでした」とヤレル氏。

 インキーは2014年にパニア・リーフで漁師に捕獲され、ネーピアにある国立水族館に寄贈された。インキーの体は魚との戦いで傷ついていたが、愛嬌のある性格で好奇心旺盛だったので、すぐにスタッフの人気者になった。

 ヤレル氏はプレスリリースで、「タコは群れを作らないので、水族館での暮らしは不幸でも孤独でもなかったと思います」と見解を述べた。「けれども好奇心が強い若者だったので、外の世界を知りたかったのでしょう。そういう性格でした」(参考記事:「【動画】ココナツの殻を運ぶタコの動画で話題沸騰」

 タコやイカの話題を取り上げるウェブサイト「The Cephalopod Page」の管理人である海洋生物学者のジェームズ・ウッド氏は、インキーの脱走劇には特に驚いていない。長年タコを研究してきた彼は、多くの大脱走を見てきたからだ。(参考記事:「【動画】絡み合うタコの「会話」を初めてとらえた」

【動画】272kgの巨大なタコが直径約2.5cmの管をすり抜ける! 体の形を自在に変え、コンピューター・グラフィックスを見ているかのよう。

 タコが水槽から脱走したことは、「特に意外ではなく、めずらしい行動でもありません」と彼は言う。「タコは素晴らしい動物で、とても高い知能を持っています」(参考記事:「新種の社会性タコ、研究は困難続き」

 ウッド氏は、密封された観察容器や蓋をした水槽から脱出したタコの話をよく知っている。バミューダ諸島の水族館のタコのように、何度も水槽を抜け出して近くの水槽の魚を食べていたものもいれば、インキーのように水のあるところに逃げたものもいるという。(参考記事:「【動画】電光石火、カニを奇襲するタコ」

 タコが知的であるにしても、これほど迅速に脱走計画を立てられたのはなぜだろう? ウッド氏は、彼らが「活動的で、好奇心旺盛で、周囲の環境とよく関わりあっている」からだと言う。タコは学習するのが早く、餌がどこから来るのか観察していることが多い。その体は柔軟で骨がないため、小さなすき間に体を押し込んで通り抜けることができる。

 タコは、自然界で有数のすばらしい脳をもっている。彼らは偉大な脱出芸人であるだけでなく、好奇心にあふれ、個性があり、人間の顔を識別することが知られている。(参考記事:「カメラを分解するタコの好奇心」

「夜の間にこっそり逃げるのはズルいと言うかもしれません。でもそれがタコなんです」とウッド氏。

 ヤレル氏によると、国立水族館は、現時点ではインキーの代わりのタコを迎える計画はないという。「寂しいですが、彼の新生活が幸せなものになることを祈っています」 (参考記事:「【動画】深海で幽霊のようなタコを発見、新種か」

文=Wajeeha Malik/訳=三枝小夜子

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