ワシを使って不審ドローン撃退へ、オランダ警察

鳥類の保護活動家が異議

2016.02.12
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ハクトウワシを不審なドローンとの闘いに駆り出してよいのか。(Photograph by Paul Nicklen, National Geographic Creative)
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 オランダ国家警察が、不審なドローンから市民を守るための新戦力として、ワシを訓練する様子を映した動画が、インターネットで話題を呼んでいる。(参考記事:「【動画】好奇心旺盛なチンパンジーがドローンを撃墜」

 巨大なワシが上空からすばやく飛来してドローンを捕獲する姿は格好いい。ワシを使ったドローン捕獲部隊を作ろうというアイデアには、確かに理にかなっている部分もある。彼らは大きくて頑丈な鳥であり、力強い巨大なかぎ爪とすぐれた視力を持っている。ほかのドローン撃退策といえば、電波を発射する銃や、大きなドローンを飛ばして不審ドローンの上から網をかぶせるなど、費用がかかる上にあまりスマートとは言えないものばかりだ。

 ただし、勘違いしないでほしい。生きたワシをドローン撃退に使うのは、決していいアイデアなどではない。

 動画に映っている警察の訓練に協力しているのは、オランダに拠点を置くガード・フロム・アバブ社で、彼らは見ての通り、生きたワシをドローンの攻撃に使用している。

 最大の問題は、ワシが間違いなく危険にさらされることだ。オーストラリアのすぐれた科学的検証番組でも、ドローンの翼、とりわけカーボンファイバー製のものは、動物にとって極めて危険であることが確かめられている。もしワシが判断を誤ったり、ドローンのオペレーターが回避や防御の操作を行った場合、翼がワシにあたって深刻な怪我を負わせたり、殺してしまう可能性もある。

 バード・フロム・アバブ社は、ドローンを攻撃するのはワシの「自然な狩猟本能」による行動だとしているが、彼らの映像に登場するハクトウワシは通常、空中で獲物を捕ることはない。「彼らが食べるのは魚や腐肉です。ハクトウワシはいわゆる“鷹狩り”に向いた鳥ではないのです」と、米バージニア州猛禽類保護委員会代表のケント・ノウルズ氏は言う。

 こうしたタイプの狩りは、彼らにとって自然ではあり得ない。「危険なのは、ハクトウワシなどの鳥が自然の中で出会うものが、ドローンとまるで似ていないことです。彼らがドローンの正体を理解しているとは思えません」

 ハクトウワシはもう十分につらい目にあってきた。彼らは絶滅危惧種のリストから外されてからまだ10年もたっていない。人間は農薬(主にDDT)、生息地の破壊、違法な狩猟によって、ハクトウワシを絶滅の危機に追いやった。1963年には、米国内のハクトウワシの数は、わずか487ペア(つがい)にまで落ち込んだ。以来、その数は徐々に盛り返し、まさに今、かつての生息地で繁殖を始めて、安定した個体数を確保しつつあるところだ。(参考記事:「賢いインコ「ヨウム」、アフリカで激減」

 こうしたさまざまな苦難の末に、さらに我々は彼らを空飛ぶロボットと戦わせようというのか。私はむしろこう提案したい。ハクトウワシをそっとしておこうではないか。彼らに羽を休める木々や、食料となるサーモンを提供し、あとは放っておくべきだ。人間は動物たちを使って、これ以上何をしようというのだろう。野生動物がいるべき場所は自然の中であって、警察署ではない。人々がワシを放っておいてくれることを切に願う。

【フォトギャラリー】復活したハクトウワシ

文=Nicholas Lund/訳=北村京子

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