車にひかれたヘビ、実は新種だった、キルギス高地

標高3000mの山岳地帯の道に貼り付いていた死骸から新種の毒ヘビを発見

2016.01.21
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新たに発見されたマムシの小さな体は、山で生き延びる秘訣なのかもしれない。(Photograph by Philipp Wagner, National Geographic)
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 キルギス共和国南部の山道に貼り付いていたヘビの死骸が、新種の毒ヘビの発見につながった。

 新種を発見したのはドイツ、ミュンヘンにあるバイエルン州動物標本収集研究所の爬虫両生類学者であるフィリップ・ワグナー氏。氏はナショナル ジオグラフィックのプロジェクト「欧州の科学と探査(Science and Exploration in Europe)」の一員として、2013年、アライ山脈の奥地で野生生物を調査する最中に、この新種のマムシを発見。学名を「Gloydius rickmersi」と名付け、科学誌「Amphibia-Reptilia」1月号に発表した。

「最初に見つけたものは車にひかれた死骸で、まっ平らになっていたので、種の特定には至りませんでしたが、次に生きた個体が見つかりました」とワグナー氏はいう。(参考記事:「世界最小クラスの新種ハブを発見、中国」

 こんな場所でヘビが見つかるとは、誰も予想していなかった。標高約3000メートルの山岳地帯という過酷な環境では、一般に爬虫類が生きていくのは困難だからだ。

「この土地では、爬虫類はわずか10数種類しか発見されていません。生物が繁殖できるのは、1年のうち3〜4カ月間に限られます。ヘビを見つけてから2週間後に最初の雪が降ったのですが、それは9月のことでした」

タフなヘビ

 しかし、熱を感知する頭部の「ピット器官」で獲物を見つけ出せるマムシの仲間は、タフなことで知られている。(参考記事:「吸血コウモリに血管を感知するセンサー」

 ガラガラヘビやカッパーヘッドなども含まれるこのマムシ亜科(英語で「ピットバイパー」と呼ばれる)は、砂漠から熱帯雨林、標高4000メートルを超える山の草木のない斜面まで、さまざまな場所で暮らすことができる。(参考記事:「生息地は非公開、新種クサリヘビ」

【動画】ヘビが苦手な人は見ないでください 2014年6月25日。カナダ、マニトバのナルシス・スネーク・デンズには、毎年、大量のヘビが集結する。

 今回見つかった Gloydius rickmersi の場合は、体長約50センチと比較的体が小さいおかげで、体温を短時間で上昇させられるのではないかと、ワグナー氏は考えている。

 もっと太くて長いヘビであれば、「これほどの高地で生き延びるだけの体温を保てないでしょう」

 ぺしゃんこになった死骸からは、しかし、このヘビの弱点が推測できるという。

「道を通る車が少ないにも関わらず、車にひかれて死んでいる個体が非常に多いのです。おそらく道路の上は、周囲に比べてやや暖かいのでしょう。あれは年の終わり頃でしたから、少しでも暖かい場所は非常に魅力的だったはずです」とワグナー氏。一方、ドイツ、ハイデルベルクの爬虫類学者ゲルノト・フォーゲル氏は、一帯の道路はアスファルト舗装がされておらず、周辺の木が生えていない岩がちな地面と比べて暖かいとは考えられないと述べている。

なぜ道路に出てくるのか

 フォーゲル氏の推測は、探索チームが道路上で死んでいる個体をいくつも見つけたのは、この新種のヘビが一般的なマムシと同じく夜行性だからというものだ。

「チームは夜にヘビを探していません」とフォーゲル氏は言う。マムシが活発になるのは夜だ。「ヘビは夜中に車にひかれ、昼になってから発見されたのです」。氏は今回の発見に携わっていない。(参考記事:「謎多きヘビの新種3種を同時に発見、南米」

 これまでに新種のマムシを8種記載しているフォーゲル氏は、Gloydius rickmersi は中央アジアからロシア、中国、モンゴルにかけての乾燥した高地に広く生息する、ほとんど研究が進んでいない5〜6種からなるグループに属していると考えている。

「このエリアは生物の収集が進んでおらず、研究者もあまりいません。本当はもっと多くの種がいるはずです」(参考記事:「カエルを食べる、東南アジアで新種ハブ」

 実際、ワグナー氏はキルギスでの探索で新種をもうひとつ発見した可能性があるという。

「こちらはキノボリトカゲの仲間で、3000メートルから5000メートル以上の高地でしか見つかりませんでした」と彼は言う。

“レベルの高い”生活が好きなのは、どうやらマムシだけではないようだ。

文=James Owen/訳=北村京子

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