レアな繁殖法をもつヒキガエル3種を同時に発見

植物の水たまりに産卵、ブラジル南部の孤立した雲霧林で

2015.12.09
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ブラジル東部で見つかったヒキガエル3種の1つ、Melanophryniscus biancae(PHOTOGRAPH BY: HUDSON GARCIA)
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 マルシオ・パイ氏は、あきらめかけていた。

 パイ氏の研究チームは、夜明けとともにブラジルのパラナを出発した。長い悪路を4WDに揺られ、セラ・ド・キリリ山のふもとに車を停めた一行は、雲霧林に向けた急坂を上り始めた。衣服はびしょぬれで、誰もが疲れ果てていた。

 そのとき、氏は静かな鳴き声を聞いた。真っ暗闇に近い森を、そろりそろりと歩きながら声をたどると、アナナスの枝の間に、赤腹の小さなカエルを見つけた。(参考記事:「体長1センチの新種カエル、7種を発見」

矢印をクリックするとカエルの鳴き声が流れます。

 彼らの根気は、報われたのだ。チームは、ブラジル南部の雲霧林に住むヒキガエルの新種3種を見つけた。Melanophryniscus biancae、M. milanoi、M. xanthostomusだ。

「これらのカエルは非常に神経質です。湿度が高すぎても低すぎても、捕まえることはできないでしょう」と、パラナ連邦大学の進化生物学者のパイ氏は述べている。

いぼいぼの森の住民

Melanophryniscus milanoi。新発見の3種すべてが、腹部に赤い模様を持つ。(PHOTOGRAPH BY LUIZ FERNANDO RIBEIRO)
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 暫定的なDNA検査から、色が濃く腹に赤い模様があるこの3種は、非常に関連が強く、わずか数千年前に進化を遂げたことが示された。

 この3種は体長わずか2.5cmと、ヒキガエルとしては小柄な部類に属する。クロヒキガエル属(Melanophryniscus)の多くは毒を持つが、3種が毒を持つかどうかはわかっていない。(参考記事:「有毒カエルの皮膚は甘くて苦い?」

 クロヒキガエル属は池や小川に産卵するが、3種は植物にたまった水に産卵する(phytotelm breeding)。一般的に水溜まりは小さいため、産卵数は50未満と他のヒキガエルに比べて少ない。(参考記事:「トゲ肌からツル肌に早変わりする新種カエルを発見」

 オタマジャクシは比較的大きく、泳ぎがあまり得意ではない。チームはこれらの研究結果を、12月2日付の科学誌「PLOS ONE」に発表した。

何よりも重要なこと

 ブラジル東部の雲霧林では、1990年代以降数々の新種が発見されている。

 山頂を取り囲むように茂る孤立した森は、「空の孤島のようなもの」とパイ氏。

Melanophryniscus milanoi。新発見の3種は、山頂の孤立した森でしか見つかっていない。(PHOTOGRAPH BY LUIZ FERNANDO RIBEIRO)
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 つまり、ある山頂に住む種がほかのどこにも存在しないことが多く、結果的に驚くほどの多様性が保たれている。このプロジェクトだけでも、11種の新種が発見されている。

 しかし、範囲が狭いことは危険でもある。1つの集団が姿を消せば、絶滅を意味するからだ。今回発見されたヒキガエル3種も、すでに気候変動と森林破壊による「脅威にさらされている」とパイ氏は言う。 (参考記事:「半透明のかわいい新種カエル、コスタリカで発見」

ブラジル南部に多くみられる雲霧林は驚くべき生物多様性を誇る。(PHOTOGRAPH BY LUIZ FERNANDO RIBEIRO)
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 雲霧林は気候変動の影響を最初に受ける生息環境のひとつであり、研究チームは発見の発表を急いだ。

 また、3種を正式に命名することが生存を確保するための第1歩でもある。

「名前がなければ、法的には存在しないのと同じこと。なので、保護できないのです」


【動画】オタマジャクシの世話をするイチゴヤドクガエルの父親。赤ん坊はそれぞれ、自分の「部屋」を持っている。(解説は英語です)

文=Carrie Arnold/訳=堀込泰三

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