絶滅危惧種サイガが大量死、生息数が半減

カザフスタンの草原、原因は謎の伝染病?

2015.11.09
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草を食むサイガのメス。2009年、ロシア・カルムイク共和国で撮影(PHOTOGRAPH BY IGOR SHPILENOK, WILD WONDERS OF EUROPE)
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 中央アジアの大草原に暮らす偶蹄類の一種「サイガ」が今春、謎の伝染病によって大量死したことが、先週ウズベキスタンで開かれた会議で報告された。カザフスタンで発生したこの大量死による死亡数は全個体の半数にのぼり、その死体が何キロにもわたって草原に点在している状態という。(参考記事:「動物の大量死が増加、過去70年の傾向を調査」

 コミカルな外見にもかかわらず、サイガは知名度が低い。大きさはヤギと同程度で、ゾウの鼻を短くしたような、柔らかい長鼻をもつ。米国農務省国立野生生物研究センターでサイガを研究する生物学者のジュリー・ヤング氏は、サイガがあまりにも知られていないため、研究内容をいつでも説明できるよう、写真を財布に入れて持ち歩いていたことがある。「ほとんどの人が、一度も聞いたことがないんです」

大草原を駆け回る掃除機

 その不格好な鼻は、何のためにあるのだろう。

 ある研究チームが2004年にサイガの鼻を切断してスキャンした結果、内部には大きな空間があることがわかった。これは、空気を肺に吸い込む前に「浄化」する機能を持っていると考えられている。砂の嵐を巻き起こしながら大群で移動する際に、より効率的な呼吸を可能にしているのだろう。

 また、長鼻がコミュニケーションや交尾相手の選択にも役立っていることを示す証拠が見つかっている。ホエザルやコアラのオスと同様、サイガのオスが鼻から発する大きなうなり声は、身体の大きさを主張するためであり、求愛の役に立つと考えられている。

サイガは、中央アジアの大草原で大きな群れをなして暮らしている。2009年、ロシア・カルムイク共和国で撮影(PHOTOGRAPH BY IGOR SHPILENOK, WILD WONDERS OF EUROPE)
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 うなり声で勝敗がつかなければ、長いネジのような角で繁殖権をめぐって争う。成功を収めたオスは、最高50頭ものメスとハーレムを形成する。メスはそれぞれ、双子を産むことが多い。

 サイガの鼻には、もう1つ興味深い点がある。彼らは、鼻を地面に近づけて走るのだ。「大草原を駆け回る掃除機みたいと、よくジョークを言ったものです」(参考記事:サイガも暮らす「カザフスタンの草原に謎の地上絵」

厳しい未来

 かつてはヨーロッパのブリテン諸島から北米のユーコンまで広く見られたサイガだが、その未来は厳しそうだ。

 サイガ(Saiga tatarica)は、今春の大量死以前から、国際自然保護連合(IUCN)によって近絶滅種(critically endangered)に指定されていた。IUCNによると、現在の個体数は世界で約5万頭と推定されており、1970年代中盤の125万頭から大きく減少している。

 今春は未知の病気による大量死があったものの、依然として最大の脅威は狩猟である。食用としてだけでなく、その角が漢方薬として解熱や悪霊追放に効くとされ、珍重されているのだ。保護の努力により個体数は回復しつつあるものの、オスの数が足りない状態が続いている。(参考記事:「絶滅が危惧されたサイガ、個体数回復か」

3頭のサイガのメス。2009年、ロシア・カルムイク共和国で撮影(PHOTOGRAPH BY IGOR SHPILENOK, WILD WONDERS OF EUROPE)
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 ヤング氏は、モンゴルにすむ亜種、Saiga tatarica mongolicaが大量死を経験していないことだけが唯一の朗報だと言う。しかし、そのモンゴルの亜種もIUCNの絶滅危惧種(endangered)に指定されており、数千頭を残すのみ。そのため、同様の伝染病に見舞われたら生き延びることは困難であろうとヤング氏は述べている。(参考記事:2009年特集「絶滅危惧種」フォトギャラリー

文=Jason Bittel/訳=堀込泰三

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