小さい鳥の歌声はなぜ美しい?

見事な歌からチェーンソーの音マネまで。鳥の声の不思議に迫る

2015.07.08
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複雑で美しい歌を歌うチャイロコツグミ。カナダノバスコシアにて撮影。(PHOTOGRAPH BY SCOTT LESLIE, MINDEN/NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 カラオケが大好きだけど、歌はあまり上手くない……。そんな友人には、「鳥のような歌声だね!」というのがうまいほめ方かもしれない。

 相手は、あなたがこの鳥を指しているとは思いもしないだろう。

 Facebookに寄せられた「小さい鳥は美しくさえずるのに、大きい鳥はそうでないのはなぜ?」という質問が寄せられたのを機に、鳥の声の多様性について掘り下げてみたい。

小さくてかわいい「琴」

 何よりも、「美しさの基準は人それぞれです」と言うのは米コーネル大学鳥類研究所のマーク・デヴォカイティス氏だ。

 とてもメロディアスとは言えなくとも、素晴らしい声を出す鳥は多い。たとえば、アメリカフクロウの“この世のものとは思えない"鳴き声。あるいは、ワタリガラスの延々と続く歌には、なんと33種類もの声のレパートリーがある。

「体の構造のおかげで、小さな鳥は“人間が歌と認識しやすい”声を出すのです」

 その構造とは、鳴管と呼ばれる器官で、人間の喉頭にあたる。

 米ルイジアナ州立大学自然科学博物館で鳥類を担当する学芸員のJ. V. レムゼン氏によると、スズメ目の鳥――既知の鳥約1万種の6割を占め、スズメやカラスやウグイスなどの歌鳥を含む――は、最も複雑な鳴管を持つ。

 スズメ目の鳥は、鳴管の両側面を独立して動かすことができる。さえずりからクリック音まで、非常に多様な音を出せるのはそのためだ。歌鳥は、「歌声を引き継ぐだけでなく、新しいバージョンの歌を覚えることもできます」とレムゼン氏。

 スズメ目の多くは小さい。たとえば、チャイロコツグミは約28gしかないが、デヴォカイティス氏いわく「複雑で忘れがたい」歌声の持ち主だ。


(再生ボタンをクリックするとチャイロコツグミの歌が流れます)

 小さいほど歌声が美しいという法則には、少なくとも1つは例外がある。オーストラリアに住むキジ大のスズメ目、コトドリだ。レムゼン氏は、コトドリは「間違いなく世界で最も複雑な歌声を持ち、どんな音でも真似できる」と述べている。

 カナダオンタリオ州にあるウィンザー大学の生物学者、ダン・メニル氏によると、複雑な歌声を持つ鳥の多くは、知性も高い。

 スズメ目の歌鳥たち、ハチドリ、オウムは、親から歌を学ぶ能力を持つように進化を遂げている。他にこのような特徴を持つ動物は、コウモリ、クジラ、イルカ、ヒトだけである。

1つの歌に、ほかの鳥の声マネを20回以上入れられるコトドリ。カメラの音やチェーンソー、車の盗難防止用アラームのマネも難なくこなす。(動画は広告のあと約30秒後に再生されます)。

 この能力を持つ動物は、代々曲を発展させていくため、手の込んだ歌を持つものが多い。

鮮やかな色、「残念な歌声」

 レムゼン氏によると、一雄一雌の習性をもつ鳥の場合、複雑な羽毛の代わりに複雑な歌声を持つことがある。その逆もしかり。

 たとえば、フウキンチョウとミソサザイは、生涯同じパートナーを持つ。フウキンチョウはひじょうに複雑な色彩を持つが、「歌は残念」。一方のミソサザイは、色は単調だが、「歌はとても素晴らしい」

 つまり、これらの種の鳥たちは、外見または歌のどちらかを使って異性を魅了することにエネルギーを費やす。一雄一雌の鳥は1羽の連れ合いを見つければいいだけなので、大げさな求愛方法にエネルギーを投じる必要がないのだ。

 一方、雄も雌も複数のパートナーを持つ種の場合、「羽毛と歌声の両方において必死になる必要があります」とレムゼン氏。

 その最たる例が、ニューギニアの極楽鳥だろう。

 お気に入りのさえずりを見つけたら、あなたもツイートしてみては?

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文=Liz Langley/訳=堀込泰三

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