グリーンランドは温暖だった?写真で見る洞窟探査

ナショナル ジオグラフィックの支援で北極圏の洞窟探査

2015.11.17
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自然のシャンデリア
「クリスタルパレス」と呼ばれる洞窟の内部に驚くクリス・ブレークリー氏。この一帯の氷晶の大きさ、美しさに、調査チームは息をのんだ。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 前人未踏の洞窟。厳しい、凍てついた土地。珍しい訪問者にちょっかいを出そうと群がってくる動物たち。さながら新作のSF映画のようだが、これは現実の調査だ。オーストリア、インスブルック大学のジーナ・モーズリー氏は、ナショナル ジオグラフィック協会の助成を受け、地球の過去の気候を解き明かすべくこの洞窟に入った。(参考記事:「ナショジオだから行けた!究極の洞窟」

「博士課程のころからやってみたかったのです」とモーズリー氏は言う。彼女は今年、グリーンランドの北東端に近いセントルム・セー湖周辺での洞窟調査チームのリーダーを務めた。この洞窟周辺は、これまで人間が踏査した土地のなかで最北端にあたる。洞窟内に浸透し、したたり落ちる水で長年削られた岩石には、化学的なヒントが数多く含まれている。

 モーズリー氏らのチームは、洞窟内の岩石の炭素や酸素の含有量を分析することで、20万~50万年前のこの地の気候を推測しようとしている。今でもまだ詳細は不明だが、当時のグリーンランド北東部はもっと温暖で、湿度も高かったとみられる。モーズリー氏は、「氷床コアから解明できるよりもさらに前の時代の気候が、洞窟内の岩石からわかる可能性があります。これまで全く手がかりのなかった時代です」と期待を寄せる。(参考記事:「観測衛星続々、空から地球を診断する」

 より詳細な気候の記録を作成できれば、人間の活動が引き起こす気候変動で地球にどのような変化が起こるか、さらに精緻に予想できるようになる。200万年の間に氷期と間氷期をゆっくりと繰り返した更新世についても新たな発見があるだろう。

 岩石を調べるため、モーズリー氏ら5人の調査チームは北緯80度よりもさらに北へ飛ばなければならなかった。過去に地質調査が何度か入っただけの荒涼とした大地では、先駆者たちの気配が今でも感じられる。調査チームは1960年の洞窟調査隊が置いて行った缶詰を見つけ、食べてみたこともある。調査地域には危険な場所もあり、蚊の群れにも襲われる。近年グリーンランドの温暖化が進行するにつれ、蚊が急増しているのだ。

 だがモーズリー氏の気がそがれることはなかった。「周囲の環境、つまり自然に気を付ければいいだけです。自然は多くのものを与えてくれ、そこから学べることがたくさんあるのです」(参考記事:「グリーンランド 消えゆく氷と極北の狩猟民」

 以下にモーズリー氏らが行う調査の舞台裏を写真で紹介する。世界の最北にある洞窟という過酷な条件下で、岩石に目を凝らす科学者たちの様子を見てみよう。

一面の氷の世界

PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE
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 グリーンランドの北東端、セントルム・セー湖へと飛ぶ機内から調査チームのメンバーが目にしたのは、延々と続く氷原だった。5人から成る調査チームは、ここで数週間かけて洞窟内を調べ、過去の気候を推測する手掛かりを探した。

思わぬお出迎え

PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE
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 調査チームを出迎えたのは、滑走路の端にあるホッキョクグマの死骸だった。北極に詳しい専門家たちは出発前、調査地点はホッキョクグマの生息地域よりもずっと内陸なので遭遇することはないと保証したが、なぜわざわざそんなところに行くのかと不思議がった。

温暖化の産物

PHOTOGRAPH BY ROBBIE SHONE, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE
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 グリーンランドの気候変動を示す悩ましいサインが、蚊だ。摂氏18度近くまで気温が上がる中、チームは絶えず蚊に刺された。モーズリー氏は左腕だけで223カ所刺されたことも。

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