色覚のない敵に「派手さで警告」は通用するか?

派手な体で「食べたら危険!」と警告する動物。色を見分けない敵にも効くか

2015.11.11
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ヤドクガエルは体の色で毒性があることを示している。米カンザス州サンセット動物園で撮影。(Photograph by Joel Sartore, National Geographic Creative)
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 いくらきれいな服で着飾ったとしても、相手に見てもらえなければ意味がない。「色を見分けられない生物は、鮮やかな警戒色を認識できなくても、相手が毒を持っていることがわかるのでしょうか」。今回の記事では、フェイスブックに寄せられたこんな質問について考えてみたい。

 人間はすぐれた色覚を持っているし、ハエトリグモなどのように人間より多くの色を見分けられる生物もいる。一方で、一部のサメやライオンのように、色を見分ける能力を持たない捕食者も存在する。(参考記事:「クモが赤やオレンジ色を見分ける仕組みを解明」

 オオカバマダラ(マダラチョウの一種)ヤドクガエルの仲間、サンゴヘビの仲間などは、鮮やかな体色で毒性があることを相手にアピールし、捕食者はその色を覚えて彼らを避けるようになる。


【動画】メキシコを越冬地とするオオカバマダラ。個体数が大幅に減少している原因と問題を探る。

 哺乳類のなかにも、スカンクやラーテルのように毒こそ持たないものの、白と黒のはっきりとした模様をもつものがいる。これらの色は「襲ってきたら、強烈な臭いの液体を放つぞ」と捕食者に伝える警戒色だ。(参考記事:「スカンクのしま模様は悪臭の警告?」

 米カリフォルニア州立大学ノースリッジ校の生物学者ロバート・エスピノーザ氏は「警戒色の色合いはさまざまですが、重要なのは黒やこげ茶といった暗い色と、黄色やオレンジ、赤、白といった明るい色のコントラストです」と語る。

 つまり色を見分けられない捕食者にとって、特定の色を認識できるかどうかは必ずしも重要ではない。暗い色と明るい色との強烈なコントラストによって、捕食者は本能的に「警告!食べるな危険」というメッセージを感じ取るのだ。

色覚のないカマキリで実験した

 色覚がほとんど、あるいはまったくないとされるカマキリを対象に、この事実を検証した研究がある。米アリゾナ大学の昆虫学者ケイティ・プルディック氏によると、「カマキリは動体視力と動きに対する反応が非常に優れている」という。

カマキリは色を見分けることができない。写真はミツバチを食べるオオカマキリ。(Photograph by Daniel Borzynski, Alamy)
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 プルディック氏は2007年に学術誌『Behavioral Ecology』に発表した研究で、苦い味のするカメムシの仲間を何匹か用意して、グレーに塗ってオオカマキリの反応を見るという実験を行った。

 するとオオカマキリは、コントラストの高い個体をすぐに嫌がるようになり、コントラストの低い個体よりも長い時間避け続けたのだ。この実験から、捕食者がたとえ色を見分けられなくともコントラスト、つまり「獲物から反射する光の量」によって判別できることがわかる。

目立って、隠れて

 オーストラリアに生息するカメムシの仲間コットン・ハーレクイン・バグ(学名:Tectocoris diophthalmus)は色使いの名手といえる。警告色と保護色を兼ねた体色で、さまざまな捕食者を寄せ付けないようにしているのだ。

 コットン・ハーレクイン・バグには、全体がオレンジ色の個体と、玉虫色に変化するターコイズの模様が入った個体が存在する。鳥はどちらの色も警告色として認識し、食べない方がいいと判断するのだが、カマキリは違った。

 2014年に発表された論文によると、カマキリはキラキラ光る玉虫色の個体のみを狙い、全体がオレンジ色の個体にはまったく目もくれなかったという。

 この論文はさらに、カマキリがこのカメムシの進化に影響を及ぼす可能性があると指摘している。玉虫色の個体ばかりが食べられれば、オレンジの個体が多く生き残っていくからだ。(参考記事:「チョウの翅の色、数世代で急速に進化」

文=Liz Langley/訳=北村京子

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