イボイノシシの体を掃除するカメを発見、南ア

爬虫類では異例の行動、生物学者が休暇中に偶然目撃

2015.10.14
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水たまりで、イボイノシシの顔についている虫を探すアフリカヨコクビガメの一種。2015年2月、南アフリカで撮影。(PHOTOGRAPH BY MICHELLE LEIGHTY JONES)
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 高級エステサロンのよう、とは言い難いが、サバンナの泥水だまりでイボイノシシのグルーミングをするカメの姿をカメラが捉えた。

 南アフリカのヒュニュウェ=イムフォロジ公園で、2匹のアフリカヨコクビガメの一種(Pelomedusa galeata)が、イボイノシシ(Phacochoerus africanus)の体についた寄生虫を取って食べているところが初めて撮影された。爬虫類や両生類の学会誌『Herpetological Review』9月号に掲載された報告では、陸上であれ水中であれ、カメがほかの動物の掃除をするという記録はほとんどないという。

 米クリーブランド自然史博物館の鳥類学者アンディーと、同博物館の野生生物資源管理者であるミシェル・レイティーのジョーンズ夫妻は、2月に休暇で南アフリカを訪れていたときに、偶然カメとイノシシの奇妙な交流を目撃した。(参考記事:「野生ゴリラがツアー客を毛づくろい」

 ジョーンズ夫妻が水たまりに入っていくイボイノシシを見ていると、2匹のカメが泳いで近付いていったという。「カメたちがイノシシのまわりで円を描くように泳ぎ、皮膚にかみつき始めたのです。思わず目を見張りました」

 体を低くして泥水に深く沈んだイノシシは、10分間もその姿勢を保っていた。顔に吸着しているダニをカメに吸い取られても身動きもせず、好きにさせていたのだ。それどころか途中からさらに深く水に沈み、背中にとまっている吸血バエも取ってもらっていた。

「珍しい光景だとは思いましたが、こうした行動の記録がほとんどなかったとは知りませんでした」と夫妻は言う。(参考記事:「動物が別の動物に乗るのはなぜ?」

かゆいところはございませんか?

 今回の報告には関与していないが、南アフリカにあるポートエリザベス博物館の名誉学芸員で爬虫類の専門家であるビル・ブランチ氏も、このような行動はめったに見られないと言う。

イボイノシシの背中にとまっているハエを食べるカメ。(PHOTOGRAPH BY MICHELLE LEIGHTY JONES)
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 ブランチ氏によると、これまで淡水にすむカメが大型動物の体に付着したダニや寄生虫を食べている事例はほとんどなく、アフリカスイギュウとサイにくっついていたのが報告されているのみだそうだ。「それにカメ以外に、大型脊椎動物の体についたダニを定期的に掃除する爬虫類は思い当たりません」

 カメがグルーミングをする報告がほとんどないのは、イボイノシシを含むアフリカの大型哺乳類は、陸上でウシツツキなどの鳥に定期的に寄生虫を掃除してもらっているせいかもしれない。ウシツツキ、掃除魚、掃除エビなど掃除行動で知られる動物たちは、相利的なパートナー関係を進化させてきた。掃除をする方は餌にありつくことができるし、される方はわずらわしい寄生虫を除去してもらえるというわけだ。(参考記事:「アフリカスイギュウについたダニをつつくウシツツキ」


グルーミング 毛づくろいをして、髪をとかして、耳の後ろもきれいに。身だしなみを整えるのは人間だけではない。動物たちはタオルの代わりに舌を使う。 (音声は英語です)

 しかしブランチ氏は、今回のケースはカメがたまたま餌を見つけたにすぎず、カメとイノシシの間に共生関係が確立している証拠にはならないのではないかと考えている。(参考記事:動画「イボイノシシの試練」

 アンディー・ジョーンズ氏は、季節も関与しているかもしれないと言う。写真が撮影された2月は乾季で、水たまりが小さくなり、カメの食料が減っていた可能性がある。「腹をすかせたカメたちは、どんなところにとまっているハエでも食べるでしょう。頭のいい哺乳類はこのことを覚えていて、ハエやダニに悩まされているときに、カメのいる場所にやって来るのかもしれません」

 いずれにしろ、イボイノシシにとってカメと一緒に泥風呂に入るのは癒しのひとときかもしれない。

文=James Owen/訳=三枝小夜子

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