海面上昇は予想を上回るペース、NASA

地球温暖化により、氷河の底からも氷が解け出している

2015.09.01
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NASAの人工衛星は、1992年から2014年までの地球の海面水位の変化を測定してきた。地球儀上の青い色の海域では海面水位は低下していて、オレンジ色と赤の海域では上昇している。1992年以降、地球の海面水位は平均で約8cm上昇している。(Video courtesy NASA’s Scientific Visualization Studio)

 地球の海面水位は毎年着々と上昇している。氷河や氷床の融解、それに海水が熱膨張することにより、海面水位は100年前に比べて平均約20cm上昇した。しかしこの変化はまだ始まったばかりだ。海面はどこまで上昇するのだろうか?

 8月26日、NASAの科学者は1992年以降に世界の海面水位が平均8cm上昇したと発表、従来の予想が甘かったことを指摘した。今後、温室効果ガスの排出量が増加せず、気温上昇が2℃以内に抑えられたとしても、世界各地の沿岸部の地形が一変するほど海面が上昇するおそれがあるという。

 米国NASAジェット推進研究所の氷河学者エリック・リグノ氏は、「地球温暖化により、海面水位は今後数百年のうちに数m上昇する可能性があります」と語る。「私たちは6m以上と予測していますが、実際のところはわかりません。100年で50cm上昇するかもしれませんし、数mかもしれません」(参考記事:「「今世紀末に海面3m上昇」と研究報告」

陸氷はどれほど解けるのか

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が3年前に出した予測では、温室効果ガスの排出量次第で、海面水位は2100年までに28~98cm上昇するとされていた。このIPCCの予測は、陸氷の融解を考慮せずに出されたものだ。

 海面上昇を見積もる上で最大の不確定要素となっているのは、陸氷が融解する量と速度だと、NASAの科学者たちは指摘する。米コロラド大学の航空宇宙工学者スティーブ・ネレム氏は、「IPCCが予想を発表した2012年に描いていたものとは異なる状況が見えてきています」と言う。「海面水位の上昇は50年前より速いペースで進んでおり、今後さらに速くなりそうです。しかし極地の氷床が解けるスピードが地球温暖化によってどれほど速まるかわからないため、将来の海面水位の予測が難しいのです」

 世界の10大都市のうち8都市は沿岸部にある。来世紀以降、東京、ニューヨーク、上海、ムンバイなどの巨大都市は海面上昇に脅かされることになるだろう。(参考記事:「加速する海面上昇」

 科学者たちは海面上昇について調べるため、高度1万2000mの上空からコイン1枚分の厚みを検出できる空中レーダーシステムなど、さまざまな観測装置を配備してきた。

 NASAは今回、人工衛星による22年分の観測データをもとに作成したCG動画を発表した。この20年間の海面上昇は平均約8cmだが、複雑な海流をはじめとする自然のゆらぎにより、米国西海岸沖など一部の海域では海面水位が低下している。科学者たちは、この傾向はおそらく次の10年で逆転し、太平洋沿岸部の海面水位は他の海域より速いペースで上昇するだろうと予想している。

氷床の融解は過小評価されている

 海面上昇のペースは世界の陸氷の状況に左右されるが、氷河や氷床の消長を決定づけるメカニズムは厚さ数千mの氷の下に埋もれている。はるかに深い場所で温かい水がどれほどのスピードで氷を解かしているか、研究者にもわからないのだ。8月中旬には、グリーンランド西部のヤコブスハブン氷河が割れて短期間のうちに約13平方kmもの氷の塊が失われたことが、人工衛星が撮影した画像から明らかになった。もしヤコブスハブン氷河の大量の氷が全て融解すると、30cm以上地球の海面水位が上がると言われている。(参考記事:「グリーンランド氷床の下に巨大峡谷」

 リグノ氏は、「これほどの規模で氷河が融解したことはなく、あっけにとられました」と言う。この出来事は、氷河は必ずしも徐々に解けるわけではないことを示している。「IPCCの予測では、こういった氷床の融解が過小評価されています。現在のように氷床が急速に後退している時期には、解けて海に流れ込む氷が海面上昇の大きな要因となっていると考えられるのに、その点を考慮していないのです」(参考記事:「氷河融解:定点観測写真で見る温暖化の証拠」

 氷床の融解については、ジェット推進研究所の海洋学者ジョシュ・ウィリス氏がNASAの新しいミッションを紹介した。それは、気候科学で最大の不確定要素となっているグリーンランドの氷床の融解速度を研究する5年間のプロジェクトだ。


NASAの科学者が作成したグリーンランド氷床の3Dモデル。(音声は英語です)(Video courtesy NASA's Scientific Visualization Studio)

 プロジェクトを率いるウィリス氏は、この研究は、グリーンランドの氷河の底に温度の高い海水が打ち寄せてきた場合にどうなるかを解明するのに役立つだろうと語る。ミッションの名前は「Oceans Melting Greenland(グリーンランドを解かす海)」、略してOMGだ。ネットスラングの「OMG(なんてこった)」と引っかけた?「携帯電話の古いメッセージを消去しているときに、ふと思いついたんです」とウィリス氏。

最大の不確定要素グリーンランドを調査

 OMGの第1段階は今年の夏に始まった。改造した漁船のソナーを使い、グリーンランド西部のフィヨルドに沿って、古代の氷河が浸食した海底谷の地図を作成するのだ。科学者たちは、こうした谷が氷河の底に温かい水を送り込んでいると考えている。

 来年は、NASAが所有する特別仕様のジェット機2機を使い、5年にわたるミッションを開始する。このミッションでは、レーダーを使ってグリーンランドの海岸の90%以上をカバーする地図を作成する。グリーンランドの氷河が毎年後退する様子を、これまでにない精度で記録する地図になるはずだ。また、ジェット機から250台の使い捨て観測装置を投下し、氷床の先端部の温度と塩分濃度を900mの深さまで測定する予定である。(参考記事:「温暖化で変わるグリーンランド」

文=Tim Folger/訳=三枝小夜子

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