【解説】COP21「パリ協定」勝ち組になったのは?

歴史的な合意を勝敗と意外性の観点から解説

2015.12.16
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ドイツ、ベルリンの北約50キロに位置するエバースヴァルデ・フィノウ飛行場。無数の太陽光電池パネルが滑走路を取り囲む。ドイツは北緯50度前後に位置するが、他のどの国よりも多くの太陽光発電量を確保できる設備を設置してきた。新たな気候変動対策の合意により、多くの国々で太陽光発電の使用が加速するだろう。(Photograph by Luca Locatelli, National Geographic Creative)
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 世界各国のリーダーが気候変動に立ち向かおうと話し始めて20年以上。ついに、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に参加した195カ国の代表が温室効果ガスの削減と、石炭、石油、天然ガスからの本格的なエネルギーシフトに向けた画期的な協定に合意した。

「人生の中で世界を変える機会に立ち会えることは、そうそうありません」。フランソワ・オランド仏大統領は12日、最終合意案の提示に先駆けて、各国の代表に向かってそう呼びかけた。(参考記事:2015年11月号「気候変動大特集 地球を冷ませ!」

 合意成立後、潘基文国連事務総長はこう述べている。「かつては考えられなかったことが、今や止められない動きとなっています」

 2週間に及んだ長い協議は、驚くほど野心的な協定の合意で幕を閉じた。全31ページの協定書は、海面上昇や異常気象に立ち向かうため、富裕国から貧困国へ巨額の資金が提供されることを約束し、世界各国に向けてクリーンエネルギーへの迅速な移行を呼びかけている。(参考記事:2015年11月号「ドイツが挑むエネルギー革命」

 今回の会議のポイントを、意外な展開、勝者と敗者、それが何を意味するのかに分けて見ていこう。

意外な展開

その1:1.5℃

 合意がなされたということ自体は別として、今回の協定において最も驚きだったのは、その目標が非常に野心的であることだ。各国はこれまで、温度上昇を2℃未満に抑えることを目指してきたが、新たな合意では、地球の気温上昇を「2℃よりもかなり低く」抑え、さらには「1.5℃未満に抑えるための努力をする」とされている。

新たな気候変動対策協定において、各国は開墾や森林伐採を早急に減らすことに同意した。こうした動きは、ブラジル、マトグロッソ州のアマゾン地域に広がるこうした熱帯雨林においてはとくに重要だ。アマゾンの森林は、化石燃料の燃焼に次いで、世界で2番目に大きな温室効果ガス排出の原因となっている。(Photograph by George Steinmetz, National Geographic Creative)
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 これまでずっと、合意に向けた努力は失敗続きだったため、こうした結末を予期した人はほとんどいなかった。いったい何があったのだろうか。その答えは「科学的な現実」だ。最近の研究では、マーシャル諸島やキリバス諸島といった太平洋に浮かぶ海抜の低い島々においては、たとえ温度上昇を2℃以下に抑えたとしても、海面上昇によって国全体が水に沈んでしまうだろうと予想されている。(参考記事:2015年12月号「沈みゆくキリバスに生きる」

 1.5℃という目標に法的拘束力はないものの、「これは合意内容の実現を焚きつける火のようなもので、我々のあらゆる行動を加速させる効果をもつでしょう」。持続可能な生活への移行促進を目指す国際的な非営利団体「E3G」のリズ・ガラハー氏はそう語る。

その2:島しょ国の力

 もうひとつ驚きだったのは、発展途上の小国や太平洋に浮かぶ島しょ国の影響力が拡大したことだ。彼らが団結し、道徳的な憤りを訴え続けたことが、数年前には想像もつかなかった結び付きを生んだ。米国やEUの数カ国を含む先進諸国が、より積極的な行動を呼びかけるために結集したのだ。彼らは「ハイ・アンビション・コアリション(野心連合)」を自称し、その代表者らは最終会合に臨む際、襟にココナツの葉を飾って会場入りした。

 最終的な合意案についての話し合いの直前、マーシャル諸島共和国のトニー・デブルム外相はツイッターに、ゆりかごの赤ん坊をのぞき込む自身の写真を投稿した。そこに添えられていたのは、こんなメッセージだ。「私の10番目の孫です。私は今日、この子のために闘っています」

その3:燃え上がる野心

 パリでの会合に先立ち、世界の二酸化炭素排出量の9割超の原因となっている187カ国が、将来的な排出量削減の目標案を提出していた。集まった計画の内容では、気温上昇を1.5℃どころか、2℃に抑えるという目標にさえ到底及ばなかった。事実、ドイツのチームと米マサチューセッツ工科大学との提携チームがそれぞれ分析を行ったところ、もし提出された目標案に従った場合、気温は2.7〜3.5℃上昇するという結果が出ている。(参考記事:「化石燃料は不可?」

 にも関わらず、各国代表は今回、大方の予想よりもきわめて早く、長期的な計画の実施に取りかかるべきだと合意した。2018年以降、各国は再び会合を開いてそれぞれの進捗状況を評価することになる。そして2020年までには、多くの国からさらに野心的な削減計画が出てくることが期待される。今回の合意と技術の進歩に後押しされ、市場が風力、太陽光、波力といった再生可能エネルギーを優先する形に完全に生まれ変われば、各国がエネルギーシフトをより早く、安価に実現できるようになるかもしれない。

次ページ:COP21の勝者と敗者は?

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