ジョシュアツリーが気候変動で絶滅のおそれ

夜の最低気温が40年で約4.5℃上昇、外来植物や大気汚染の影響も

2015.11.02
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米国カリフォルニア州のモハーベ砂漠にあるジョシュアツリー国立公園では、がっしりとして、曲がりくねったジョシュアツリーが、気候変動によって危機に瀕している。調査によれば、この国立公園にある分布域のおよそ30パーセントで、若木がほとんど、もしくはまったく育っていないことが判明した。(Photograph by Kevin Schafer, Minden Pictures/Corbis)
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 目を閉じて、気候変動で危機に瀕している、苛酷な環境で生きる生物のことを想像してみよう。もしホッキョクグマが頭に浮かんだとしたら、今度は「ジョシュアツリー」のことを考えてみてほしい。そう提案するのは、米国カリフォルニア大学リバーサイド校保全生物学センターの生態学者、キャメロン・バロウズ氏だ。

 ジョシュアツリー(Yucca brevifolia)は、米国南西部のモハーベ砂漠を象徴するユッカ属の木で、曲がりくねった姿をしている。樹高は13メートルほどになり、平均寿命は150年である。(参考記事:「気候変動 瀬戸際の地球 消える北米の森」

「北極で暮らす動物は、乾燥地の植物よりずっと注目されていますが、ジョシュアツリーのような砂漠の植物も、気候変動によって危機に瀕しているんです」。バロウズ氏はそう語る。

 このほど、ある環境保護団体が米国魚類野生生物局に、「絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律(以下、絶滅危惧種保護法)」の絶滅危惧種に当たるとして、ジョシュアツリーの登録を申請した。これまでのところ、気候変動による脅威を理由として同局がリストに登録した生物種は、ホッキョクグマ1種のみだ。(参考記事:「ホッキョクグマ、温暖化を生き抜く4つの適応策」

 科学者たちは、他にも危機に瀕している種は数限りないと主張する。ある研究によると、気候変動のあるシナリオに基づくと、2050年までに地球の動植物の15~37パーセントが大幅に個体数を減らし、絶滅がほぼ確実になるという。

 北極圏だけでなく砂漠も、地球温暖化によって失う動植物が極めて多い地域ではないかと懸念されている。この地の生物はみな、そもそも生命の危機と隣り合わせで生きているからだ。

 動植物の生態系は複雑に絡み合っているので、危機に瀕しているのはジョシュアツリーだけではありません、と言うのは、アリゾナ州トゥーソンに拠点を置く生物多様性センター所長、キーラン・サックリング氏だ。「北極圏と米国南西部にある砂漠とは、他のどの地域よりも急速に、気候変動によるダメージを受けています。どちらも北米でいちばん極端な生態系だからです」

若木の減少

 約1万1000年前に最終氷期が終わるまで、ジョシュアツリーは米国南西部からメキシコ北部までの一帯に生えていた。地球の気温が上昇し、乾燥するにつれ、分布域は、米国カリフォルニア州のジョシュアツリー国立公園の範囲にまで縮小した。アリゾナ州、ネバダ州、ユタ州にもまたがる、モハーベ砂漠とソノラ砂漠に重なる地域だ。

 バロウズ氏が最近、20年計画のジョシュアツリー国立公園生物学調査の初年度を終えたところ、ジョシュアツリーの分布域のおよそ30パーセントで、若木の数が減少、もしくはまったく生育していないことが明らかになった。

 3℃上昇した場合の気候変動モデルを用いると、ジョシュアツリーの分布域は、今世紀末までに90パーセントも減ってしまいます、とバロウズ氏は危惧する。その場合、分布地は、3240平方キロにおよぶこの国立公園に点在する、「退避地」と呼ばれる孤立した場所のみになる。

 大半の砂漠の生物と同様に、ジョシュアツリーは砂漠で生き延びるために適応を繰り返してきた。吸い上げたくても地下水がないため、この多肉植物(正確には樹木ではない)は、湿潤地域で育つ植物のような主根をもたない。ところが、砂漠は雨が降ると豪雨になる。そのためジョシュアツリーは、人間の小指ほどの太さの根を浅く網の目状に5~6メートルほど伸ばし、ポンプのように雨水を吸い上げる。「大きいものになると、1年おきの集中豪雨で十分です」と、バロウズ氏。

 だが、若木はまだ根を十分に張りめぐらせていないので、定期的に雨が降らないと生き延びられない。干ばつの頻度が増え、期間が長くなると、古木と世代交代する若木が育たなくなる。「私たちが調査した地域のなかには、ジョシュアツリーの若木が1本もないところもありました」と、バロウズ氏は語る。

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