ウナギ大海原の旅、衛星タグで初めて追跡

北大西洋の産卵場めざしたウナギ28号、45日間2400キロの記録

2015.10.30
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ガラスの皿の中で泳ぐアメリカウナギの稚魚。最新の研究によると、アメリカウナギは産卵のため大海を2000キロ以上移動するという。(PHOTOGRAPH BY HEATHER PERRY, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 アメリカウナギ(学名:Anguilla rostrata)は、成長すると生涯のほとんどを内陸の川や河口域で過ごすことはよく知られている。成魚が捕れるのは、決まってこうした水域だからだ。一方、小さな透明の稚魚は外海でしか見つからず、成魚は産卵する時に外海へ出ていくことも分かっている。しかし、成魚が川から生まれ故郷の産卵場まで大海原を移動する様子はこれまで確認されていなかった。(参考記事:「初追跡、ホホジロザメの広域回遊」

 今回、カナダの研究チームが、衛星タグを取り付けたメスのウナギ成魚がカナダ東海岸ノバスコシア州から北大西洋のサルガッソー海の北端に至る2400キロを回遊する様子の追跡に成功、その結果が10月27日付「Nature Communications」誌に発表された。

「とてもワクワクします」と、カナダ・ケベックシティにあるラバル大学の生物学者で、論文を共同執筆したジュリアン・ドッドソン氏は話す。「ようやく、かすかな光が見えてきたところですから」

 アメリカウナギは、過去数十年間で急速に数が減少し、今では国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種に指定されている。今のうちに、できるだけ繁殖に関する研究を進めておかなければならないと、ドッドソン氏は言う。(参考記事:「ウナギが食べられなくなる日」

衛星タグで追跡

 ウナギの成魚は、五大湖などの淡水域や、海と川が交わる汽水域に生息している。夜行性で、メキシコ湾からカナダ東部のセントローレンス川にかけて分布し、川床の水草の根や岩の陰に潜んでいる。そして20年かそれ以上経つと産卵のため海へ戻る。最後の仕事となる産卵を終えると、間もなく死亡する。

 少なくとも科学者はそう考えているのだが、アメリカウナギは追跡するのが難しい。衛星タグを体に取り付けても、泥や岩に体をこすりつけると簡単に滑り落ちてしまうし、産卵場へたどり着く前に故障して外れることもある。

 また、体長が1.2メートルに達することもあるアメリカウナギだが、それでも大海では多くの天敵に狙われる。過去の調査で使われた衛星タグの水温や水深の記録を見ると、しばしばセントローレンス湾でサメの餌食になっていたことが分かった。このためドッドソン氏の研究チームは、タグをつけたウナギを、サメの漁場から離れた場所へ放流することにした。「高価な衛星タグが、これ以上サメに食べられて欲しくないですからね」(参考記事:「ジンベエザメの回遊の謎を解明」

1日49キロ、水深700メートルへも

 長年の努力の末、今回研究チームはついに、ノバスコシア州沿岸からサルガッソー海の北端へ到達したメスのウナギ「28号」のデータを取得することに成功した。

 タグによれば、28号は1日49キロの距離を泳いでいたと判明した。また、水深記録を見ると、日が出ている時には海の奥深くへ潜っていたことも分かった。天敵を回避するためか、時には700メートル以上潜ることもあった。産卵場へ移動中のウナギをこれまで誰も目撃していなかったのは、こうして深く潜っていたためとも考えられる。

 45日間海を泳いだ後、28号のタグは外れ、GPSの位置情報、水深、水温、塩分濃度、その他のデータを人工衛星へ送信した。ドッドソン氏によれば、タグは長ければ5カ月間は外れないように装着されていたという。このため、28号のタグが外れたのは予定よりも早く、捕食者に襲われた可能性も考えられる。

 産卵場の中心へたどり着く前にタグが外れたものの、研究がここまで成功したことを、アメリカウナギの専門家スティーブン・シェパード氏は高く評価する。これまでも同じような試みはあったが、いずれもタグがもっと早い時期に消失したり、死亡率が高かったりして成果は上がっていなかった。

「この研究のおかげで、ウナギの海洋移動に関する知見が深まるでしょう」。シェパード氏は、米国魚類野生生物局の生物学者で、アメリカウナギの最新報告書を共同執筆している。

 28号はその後どうなったのか。ドッドソン氏は楽観的に考えている。「その後何があったかはわかりません。でも無事に泳ぎ切って産卵場までたどり着いてくれたんじゃないでしょうか」(参考記事:「バイオロギングでマグロとホホジロザメに共通する進化の秘密を発見!」

文=Jason Bittel/訳=ルーバー荒井ハンナ

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