猫の繁殖と販売を行う「Junglespots」のリン・フィゲロア氏の自宅にて。ボブキャットの子猫は、人間や他の動物に慣らしてから売りに出される。写真の子猫は生後6週間。(Photograph by Vincent J. Musi, National Geographic Creative)
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「何かしらかわいいものを見たとき、つぶれるほどギュッとしたくなるのはなぜでしょう。動物が進化していくうえで、これは危険な性質ではないでしょうか」

 今回の記事では、ナショジオのスタッフであるエミリー・タイから寄せられたこの「かわいい問題」について掘り下げてみたい。

 まずひとつ言えることは、こうした感情に見舞われているのは、エミリーひとりではないということだ。

 米エール大学の心理学者、オリアナ・アラゴン氏が学術誌「Psychological Science」に2015年に発表した研究によると、かわいらしい赤ちゃんの画像を見て非常にポジティブな反応を示した人たちは、同時に「赤ちゃんの頬をつねりたい」といった「攻撃的な表現」を口にする傾向にあったという。

 また別の実験においては、成体の動物の画像を見せられた人たちよりも、動物の赤ちゃんの画像を見せられた人たちの方が、手に持った気泡緩衝シートをプチプチとより多くつぶしたそうだ。

 この結果から、かわいい画像を見たときに何かしら適当な物体が手元にあれば、人はそれをつぶすのだということがわかる。アラゴン氏はしかし、そこには相手を本気で傷付けようとする意志はないと語る。(参考記事:「【動画】かわいすぎる!雪遊びする子パンダ」

相反する感情の理由

 それでは、かわいらしい動物にギュッと抱きついたり、かじりついたりしたくなる衝動はどこから来るのだろうか。

 人は時として、強い感情を覚えた直後に「自分の気持ちとは正反対だと感じる反応」を示すことがあるとアラゴン氏は言う。(参考記事:「【動画】くしゃみをする子ゾウがかわいい」

「人はうれしいときに涙を流したり、緊張しているときに声を上げて笑ったり、あるいは普通ならそっと抱きしめたり、保護したりする対象であっても、それがたまらなくかわいいと感じると、ギュッとつぶしたくなることがあるのです」

 そうした反応は、最初に襲ってきた強烈な感情を「かき混ぜ」、なだめる効果を発揮して、結果的に感情の均衡を保つのに役立っているとも考えられる。

 たとえば前述の2015年の研究においては、こうした正反対の反応を同時に示した被験者は、感情の均衡をより短時間で回復する傾向にあった。

 何かしらかわいいものを世話する立場にある人たちにとってはまた、この仕組みは重要な意味を持っている。(参考記事:「超絶かわいいナキウサギを撮影、20年ぶりの発見」

「正反対の反応を示すことが、強い感情に打ち勝って心の制御を取り戻す作用を持っているのであれば、それは人が動物や赤ん坊の世話を適切に行ううえでたいそう役に立つことでしょう」とアラゴン氏は言う。

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(PHOTOGRAPH BY ROY TOFT, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

かわいさ余って

 また2012年には科学雑誌「PLOS ONE」に、かわいい画像を見た後、人はより細部まで注意を払うようになるという論文が発表されている。研究チームのリーダーである広島大学認知心理生理学研究室の入戸野宏氏によると、かわいらしさはポジティブな感情を伴う強い「接近動機」を生み、これはよい成果を望む気持ちによって引き起こされる作用だという(入戸野氏のおかげで、これからは仕事中に堂々と「かわいい動物休憩」を要求できる可能性が出てきた)。

 かわいいものに対して人は「近づいてそばに置いておきたい」という態度をとり、そうした感情は簡単にポジティブにもネガティブにもなるのだそうだ。

 また、かわいさに対するネガティブな衝動は攻撃性とは別ものであり、その証拠に当の本人は、対象となる動物や赤ん坊を傷つけたくないと思っていると入戸野氏は言う。(参考記事:「ツイッターで「キュートな生き物争い」が勃発」

 ネガティブな衝動はむしろ、反感あるいは「対象から距離を取りたい」という感情に近い。

「そういった態度はたとえば、子供たちの間で見られます。好きな女の子がいる男の子は、相手にまるで興味がないフリをしたり、わざと無視したりしますよね」

 そんな場面を想像するだけで、かわいくてたまらない気持ちになってきた。気泡緩衝シートはどこにある?

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